国立感染症研究所感染症情報センターがバイオテロ監視網構築を開始したという(
共同通信記事より)。もっとも、バイオテロと一般の感染症(インフルエンザなど)との監視網(サーベイランス体制)に根本的が違いがあるわけではないから、既存の網を強化するということになるだろう。
この1年間、
杉並区とPHP総合研究所による自治体のバイオテロ対策シミュレーションに参画してきたなかで、実はこの点は大きな課題として持ち上がっていた部分だった。
この部分とは、つまり、バイオテロ(プロジェクトでは天然痘)発生をどう察知するかという点。天然痘は、既に自然界には存在しない。日本では昭和51年(1976年)、世界では昭和55年(1980年)に絶滅宣言が出されている。それゆえ、今、日本で天然痘患者を診察した経験を有する医師はわずか1名。
これが意味することは、天然痘患者が病院に行ったとしても、天然痘の診断を受けること自体が難しいということだ。診断の遅れは、つまるところ爆発的な二次感染、感染拡大につながる。
インフルエンザをはじめとする一般の感染症監視網(サーベイランス体制)はこれまでにもあるから、今回の件は新・構築というより、引っ掛けられる感染症の範囲を拡大する、サーベイランス体制「強化」ということになるだろう。
1年間のバイオテロ・プロジェクトにて感染研の先生方や、保健所の方々と意見交換するなかで、「高熱・発疹」といった天然痘の初期症状を診て「天然痘」を疑う医師はほとんどいないだろうという見解だった。たまたま私が1年前に「はしか」に罹った話をすると、「(見た目の)症状はほとんど一緒だから、『はしか』の診断が下る可能性は大いにある」との話。
プロジェクトでは、天然痘であることが比較的早期に疑われるようにして、自治体の具体的対処をシミュレートしていったのだが、実際には、その前の段階(天然痘であることを疑い、診断を下すこと)で対応が対応が止まってしまう可能性が大いにある。
プロジェクトには感染研の先生方にも関わっていただいたから、今回の感染研・情報センターによる体制強化にも若干の寄与があったらうれしい。ただ、天然痘なりバイオテロを疑う端緒は、結局、現場の医師や保健所関係者以外ない。目立つニュースではないかもしれないが、来年度、全国の区市町村が作成することになる、国民保護計画では、保健所との連携を含めて、真剣に考慮されなければならない点だ。
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