さて、お目当ての歌舞伎座。
一階17列6番。花道の出入り口のすぐ横というすばらしい席。
演目は
「将軍江戸を去る」
徳川慶喜 三津五郎
山岡鉄太郎 橋之助
明治140年。鉄舟(鉄太郎)没後120年。の記念にあたる年らしい。
しかも、江戸城明け渡しと慶喜が水戸へ去るのが4月、にちなんでの公演だろうが、いやあ、これはほよど明治維新に詳しい人でないとわからないだろう。
幕末の三舟・・・山岡鉄舟。高橋泥舟(鉄舟の兄)。そして、勝海舟。
なんて、いまや、勝海舟以外、ほとんど忘れ去られているし。
まして、尊皇と勤皇の違いだの、江戸を去る将軍の思いと、将軍を涙ながらに諌める鉄舟の思いなんて。。。なあ。
画面暗いし、台詞は説明っぽいし、新国劇みたい(なんて、言ったら叱られるか・・)
「勧進帳」
富樫 勘三郎
弁慶 仁左衛門
義経 玉三郎
え、勘三郎が富樫?と思ったが、あら、けっこう男前なのね。
意外や意外、凛々しい富樫だった。
富樫の、自分の役割説明ののち、花道の幕があき義経が歩んでくる。
ほうっ!とため息がでるほど綺麗。
富樫が、義経を怪しいと止めるところや、弁慶の気迫に押されて見逃す決意をした場面は、やっぱり勘三郎らしく、ややオーバーな気がしたけど、富樫と弁慶の緊迫したやりとりは、さすがにどっちも一歩もひかぬ大迫力。
仁左衛門の弁慶は、団十郎のおおらかさとはまた一味ちがって、きっちりした楷書。
「浮かれ心中」
これがメイン。
井上ひさしの「手鎖心中」を元にしたホンだそうだ。
(えー、なんとなく空気感は覚えているけど、こんな内容だったっけ。。。。今、再読中)
栄次郎 勘三郎
太助 三津五郎
おすず 時蔵
大工清六 橋之助
帚木 七之助
番頭吾平 亀蔵
伊勢屋の若旦那栄次郎は、なにもしないでも大店の身上が継げるご身分なのに、なぜか、人を笑わせる、人を面白がらせること、目立つことが好き。
戯作者になりたいという一念から、親に勘当してもらって、絵草紙屋の婿になる。
といっても、一年限りの勘当。おすずの親に金をわたしての名目だけの結婚。と言い渡されている。
しかし、おすずはそんなことは知らないし、栄次郎も予想外のおすずの美しさ(ほんとうに、時蔵の美しいこと!)にすっかり、その気になってしまう。
絵草紙を自費出版し、本人は「これで有名になる、名が上がる」と舞い上がるが、当然ながら素人の本だから売れるわけもなく、番頭の吾平がこづかいをわたして子どもたちに買わせる始末。
なんとかして名をあげたい、戯作者らしくふるまいたい栄次郎は、浮名をたてようと遊び仲間の太助と吉原へ。
太助は、そこで見かけた花魁帚木に一目ぼれ。
じゃあ、おいらが身請けをしよう。そうすりゃ、世間で評判になる、おいらの絵草紙も売れる。
と、どこまでも勘違いの栄次郎だ。
身請けされた帚木には、大工の清六というオトコがいた。
田沼意次の失脚、松平定信の改革で、出版、表現に対する取締りが厳しくなり、絵草紙もなかなか出版できなくなっている。
人気の山東京伝までが手鎖の刑を受けたと聞いて、栄次郎はピカーンとひらめいた。
発禁になりそうな絵草紙を出して、手鎖を受けよう!それでこそ戯作者!
ああ、勘違い・・・・
しかし、昨今の、売れればOK!芸より有名になること!名作より賞取り!・・世の中すべてワイドショー的風潮にぴったしはまる、はまりすぎて嗤えない・・・
番頭とおすずは役人に頼み込んで、わざわざ栄次郎を手鎖にしてもらう。
なんて、甘い人たち。
ちゃんちきちゃんちき、鳴り物入りで手鎖を受ける栄次郎。
そうこうするうち、一年の期限がきて、伊勢屋主人は栄次郎を店にもどそうとする。
最後の大茶番にと、栄次郎がたくらんだのは、帚木との心中。
もちろん、マネだけ・・・・のつもりが。。。。
栄次郎はつぶやく。
茶番は本気には勝てないんだな。。。。
虚は実を超えることはできないのか。
実を超える虚が書けたものこそは、真の戯作者なのか。
と、最後はゲージツ論にもふれ。
ネズミの背にのった栄次郎は、『いっつ・あ・すもーるわーるど』のお囃子にのって(あ、そうか。ネズミ帝国のお囃子だ!)、宙乗りつとめまする。
チュー、チュー♪
いやあ、やっぱり、こういうふざけた、おちゃらけた中に必死さがにじむ芸が、いちばん勘三郎らしいや。

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