「うんざり」
映画「
ミュンヘン」の本編が3分の2ほど進んだ頃、そう強く感じた。
1972年のミュンヘン・オリンピック。
パレスチナゲリラにイスラエル選手団の11人が殺害された、いわゆる「ミュンヘン事件」。その首謀者と目されるパレスチナ人への報復として、イスラエル政府が極秘裏に組織した暗殺グループの物語で、実話がベースになっている。
以下、多少のネタバレがあります。
とにかく、一つ一つの暗殺の一部始終が連続して淡々と、しかもリアルに描かれていく。国家なり民族なり、特定の集団の意向を反映した殺人が「テロ」や「暗殺」だというなら、それはそうなのかもしれない。しかしこれは、単なる連続殺人にしか見えなかった。
主人公である暗殺グループのリーダーは、依拠しているはずの国家(この場合「民族」かもしれないが)よりも、物語の進展と共に「家族」という個人的なものを強く意識するようになっていく。同様に、本来なら国家レベルのはずの「暗殺」が、主人公個人の視点で描かれていく。テロや暗殺から国家や民族という大義名分をそぎ落としていけば、やはりそれは単なる人殺しに過ぎず、誰かの人生を奪うことに他ならないのだ。
ミュンヘン事件以降のパレスチナ側によるテロについてはほとんど描写されないものの、報復合戦に発展していく際限ない殺人の連鎖に、見続けるのが苦痛になるくらいの「もういい加減にしてくれ」という気分にさせられる。それは、恐らく主人公が陥っていく暗たんたる精神状態と同種のものだろうと思う。
この映画は、とかく大上段から語られがちな「暗殺やテロなど何も生み出しはしない」というステレオタイプなメッセージを個人のレベルにまで引き下げ、「うんざり」という不快感を催させることで、遠い世界の話と傍観しがちな歴史の暗部を強く印象に残す。
残念ながら、封切館ではもう公開終了だが、いずれDVDも出ることだろう。先日レビューを書いた「ホテルルワンダ」と違って感涙の場面は全くないが、現代史を考える上では見ておくべき映画だと思う。
なお、PG-12のレイティングが付いている。殺人描写だけでなく性描写もあるので、家族での鑑賞には注意されたい。
●教訓
某番組でこの映画を酷評した井筒監督は、スピルバーグが嫌いなんだな、単純に。
お粗末!

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