「オペラの台本についてちょっとだけ──9」
オペラ『あまんじゃくとうりこ姫』(若林一郎台本 林光作曲 全音楽譜)はオペラ台本としてとても優れているといえますね(エラそうだなこりゃ)。このお話の台本はたいへん簡潔でしかしその構造は実に頑強な「骨格」のみでできていると思うのです。
オペラの始まりの台詞は
じっさ なんとまあ はたおりゃあ好きだのお うりこ姫こはよ
ばっさ ほんになあ 朝もはよから 日がないちんち
じっさ 楽しげにうとうてからに
ばっさ しっくらおっとるきれいなぬのこ
じっさ まんずさずかりもんだでや
じっさ ばっさ おらたちのうりこ姫こはよ
と、こんな感じで、うりこ姫がどうゆういきさつでじっさとばっさに拾われたか、うりこ姫をどんなに可愛がっているか、これから町へ買い物にでかけねばならないがあまんじゃくといういたずらものにだまされないようにしろとか、が語られていく。
しかも出だしの部分はやはりいろんなことを説明しなければならないということもあって、『フィガロ』で書いた「レチタティーヴォ」ふうな音楽でお話しをとっとと進め、そのお話の最高点で拍節のあるデュエットで盛り上げてまたレチタティーヴォで場を収束させていく。さすが林光! なんちゃって。