2010/12/13

霜月百句2010年  

kumikoさんとの両吟より

時雨月旅人の足引き摺らん
晩餐にはつか声あり冬銀河
落人を抱かむとして冬の虹
天上の隙間より降る雪の声
水鳥の飛び立つけはひ朝まだき
シベリアの凍土裂けたり鳥の絵図
指差すは鷹の航路や師団長
地球儀を回し続ける枯野人
倒錯の映像のなか寒鴉
冬ざれのエイゼンシュタイン荒野あり
猟銃の見据える先に王の額
冬木立映す鏡に未生の児
海鼠にも故郷あるべしジュラの海
香炉峰雪は如何といふをんな
旅立ちのランボーの肩に霙落つ
じゃんけんのチョキは悲しき夕時雨
森の奥梟しばし熟考す
入り江には紅い雫の冬苺
凍蝿や記憶に難破船のこと
生まれ出る前の宇宙や長火鉢
枯蓮や立方体の死もあるか
逃走の思想のごとく月冴ゆる
屈葬のかたちで聞きし霜の声
稜線に隼の羽散りたると
黒マント被り六花を食ふてゐる
肋骨は霰混じりの野に棄てむ
枯野にはアベル打ちたる礫あり
彷徨の果て狼になる種族
パブテスマ拒否して眩し寒昴
鷹統べりシナイ山をもなづきをも
シリウスは洪水の日の落としもの
衣笠に時雨の止みてさみしかり
冬薔薇を燃やす刹那の冥さかな
山茶花の咲きて惑星しづかなり
面妖な怪物であれズワイ蟹
山茶花の落ちて陽光反らしたり
隙間より覗いた罰の鎌鼬
冬鴎喉に異物を引き摺りて
そのドアを開けてはならぬ寒牡丹
冬の蚊や内緒話を盗み聞く
戯れに歓喜の歌でも聞かせよか
冬雲雀メゾソプラノの高さまで
いすくはし囀りすぎて疎ましく
くちづけはバブルリングの冬籠
梟の眼力により蘇がへる
むささびの翼に包まれ眠るかな
人肌を恋ひて火桶を抱く寝所
龍の玉二つ摘みをり睛として
疾駆せよトロッコ列車と鬼百合と
鷹飛びて水平線の際を消す
凍鶴と王妃の鏡見つけたり
光彩に射し込むひかり冬の蝶
塵芥漂やう澤の都鳥
蔦枯れて焦がれしままに絡みつく
羚羊の黄泉比良坂越える夜
この手より一角獣座の生れ出る
小熊座に水天宮のある噂
冬めきて赤色矮星孤独なり
手袋のじやんけんのチョキ実はグー
猟銃を指でこしらへ空を撃つ
指先に毛糸のほつれほどの傷
蟷螂の枯れて緞帳上がりけり
笹鳴や処女懐胎を告げにゆく
寒蘭を挿して愛撫の終はりとす
虎落笛前世のことを語りだす
イエスもか南天の実をユダに投ぐ
天狼に伴なふ星のゐるごとく
冬の雷虚実の膜を破るとは
幕降りて女優の見たり冬北斗
半鐘をお七打ちたり微笑みて
冬霞一歩踏み出す軍靴かな
飛び跳ねて氷魚たちまち死ににけり
あと一歩来いとばかりの狐罠
絨毯に珈琲こぼす刹那かな
鷹狩りや夢の続きのやうであり
煮凝をくづす仕草で爪剥がし
飛火野を燎原とせし帰り花
群青の那由多の海に紅葉散る
メガニテよ何処が故郷ぞ鐘氷る
湯気の彼方叶はぬものと蕪蒸
霰かな群肝のなか生れしは
凍死せり分離帯なきカーブ道
森の人オラウータンも夜寒かな
冬鷺よギアナ高地を直下せよ
冬虻が卦は凶なりと告げにくる
冬扇やマルキシズムの成れの果て
諍ひは目隠しをして竹馬で
寒潮に馬のたましひ溢れたり
星影を掬ひてゐたり網代人
柚子湯かな神仙境のほとりにて
神域はマゼラン雲で掻き乱れ
小春凪舟に小さな神のゐて
ジャケットに暗黒星雲忍ばして
プレアデス星団に向け矢を投ぐる
一輪車の堕ちてゆきたる雪崩かな
雪渓に轍あるらし猿のゐて
寒卵を割れば血管ほの見えて
鯛焼きを食べたいなどと呟きし
除雪夫や水晶玉を採らないで
寒波ありなづきに鳥の一羽二羽
鷹匠の元へ帰ると言はぬまま

2010/12/13

11/21 麟塾鍛錬句会義仲寺  

第一句会50分
白鳥、大熊座、マフラー、蜜柑、枯葦、冬浅し、木枯し、マスク、湯気立つ、都鳥、冬霧、寒菊、雪、侘助、むささび、枯芙蓉(此処まで)以下時間切れ席題・時雨、ショール、悴む、狐

寒菊や武者の刃を受けてみよ
冬霧に黄泉の國への橋架かる 2
蜜柑食はば一房の中に海のあり 2
都鳥去年の羽を忘れたか
曇天や紅き葉の落つ雪の上
湯気立ちぬ最終列車の後部より 1
むささびの旋回すれば無間なり 1
マスク取らねば笑ひそこねた口のあり 1
枯芙蓉越の国にも日の暮れし 1
木枯しに晒し比叡の僧の息 2
マフラーを二重に巻きて首締めて
白鳥に起こされて知る悪夢かな
老猿の眼裏のなか大熊座 1
枯葦に秘密の寝所持ちてをり 2
冬浅し右足わづか引き摺りぬ
侘び助の白を染めゆく我が血かな 2


第二句会
袋回し席題15・肌、やたら、生、幸ひ、針、歯、肩、夢、音、駅、縄
ペン、紙、真中、かがやく

歯痛より凍土のことが気になりし 1
凍蝿を肩に飼つてゐたなんて 1
冬薔薇夢告と思ひ舟に乗る 1
時雨月駅舎の中の忘れもの
幸ひに梟留守にたづねけり 2
冬銀河音をなくした星のあり 1
鷹飛びて片翼のみが輝けり 1
肌晒し枯野を歩く使徒のゐて 1
ペンの上に霙の落ちてしづかなり 2
狼の眼に針を刺そうかな 1
荒縄で思想を縛れ隼よ 2
寒鴉やたらと笑ふひととゐて
冬鴎真中より海裂けよとぞ
六花舞ひ生死のあはひとまだ言ふか 2
枯蓮や紙に文字なし途切れさう 1


第三句会
30分作り放題 席題・法事、逗留、多面体、抱く、消しゴム

鷹匠の家に逗留せしピエロ
実南天かへすがへすも多面体 1
散紅葉泣きて抱きし修羅も吾も
湯気抱きて膨らみてゆく蕪蒸
寒蘭の脇に消しゴム落ちてあり 2
多面体で作る竹馬にて転ぶ 1
除雪夫の逗留長し帰りなん
枯蟷螂小さき空を抱きをり 2
冬虻が消しゴムを持ち消しにくる
寒卵割れて法事の終はりとす 1
雪渓に鹿たたづみて法事かな 2
(推敲・雪嶺に鹿たたづみて法事かな)
凍死せり指に消しゴム持ちてあり 2
ジャケットに多面体なる魚のゐて
柚子湯へと多面体なる身をひたし 1
寒波来る逗留先の岬より
冬霞逗留のこと火事のこと 1
抱卵の魚になりたし氷魚かな
筆入れに消しゴム一個夜寒かな
鯛焼きを法事の最中食べてをり 1
冬北斗法事の客の一人かな 1


第四句会
10分作り放題 席題・遺、鏡

鏡には猟銃を持つ男ゐて
暖を取る劣勢遺伝の長火鉢
鏡割れ時雨に人の出て来ぬか
鏡映せり洪水の日の冬鴎
遺伝する家系に霰混じりたる 2
遺伝子も組替えはせぬ冬薔薇

2010/11/29

10月風花句会(ネット10/6)  

秋の昼  砧  雀蛤となる  檀の実  菊枕
秋の昼背中の痒きところあり
砧打つ人殺めたき音のして
蛤の殻を破りて雀生る 1
檀の実突けば鳥の赤きこと
老残や焦がれて抱きし菊枕

2010/11/29

10/16 錦土曜句会  

難、庭、湯、座、ガラス(硝子)
鶴来る湯船に膝を折りしとき 3
華氏千度硝子の溶けて実南天 1
遭難す蝗の群もレミングも 3
坪庭に遊星の来て夕紅葉 1
牡鹿座りてゐたる石段しづか

2010/11/29

10/9麟塾 おぐら句会  

鏡、走る、席、だから、濁、二十五
秋風や鏡の貌を通り抜け 4
二十五年五黄の虎と無花果と
頬白の鳴きてしやまん夢だから
流星のために一席空けてをく 4
秋麗やまづ混濁の創世記 2
猪道で罠に咬まれつ走るかな

第二句会 のんびり、乾く、覚、枕
のんびりと旗振る闘士に柘榴投ぐ
のんびりと終着駅で食む林檎
梨の汗乾きて空の青さかな
宿敵を覚えてをりぬ実山椒 2
乾隆帝弁髪伸びて蔦かずら 1
銀杏に睡眠覚醒闇の寝屋
枕頭にカリンを置きて今生や 1

みそら句会 持寄り4句
破蓮や水葬にせむ我が骸 1
ひと言を投げ黙長しぬくめ酒
尖塔に誰閉じ込めて鬼胡桃 1
パラシュート開いて欲しい烏瓜 1

2010/11/29

10/3 麟塾鍛錬句会義仲寺  

傘、歩、接、保、動、関、夢
唐辛子関りなくば赤味失せ
蓑虫に変身するてふ夢破る 3
秋時雨小惑星の接近す
檸檬持ち三歩先行く男かな
葡萄酒を飲む象もゐて動物園
晩菊のまばらに咲きて保育園
猿酒に酔ひ顔隠し破れ傘

第二句会 ひとり占め、砂ぼこり、愛し抜く
毒茸ひとり占めして真夜の火事
稲妻を両手拡げてひとり占め
流星を眼裏に見て砂ぼこり 1
砂ぼこり被りほほえむ菊人形
胡桃割り出てきたものを愛し抜く 3
啄木鳥の突つく傷ぐち愛し抜く 3

第三句会 髑髏(骸骨)、絵筆、一面
秋遍路絵筆のための色浅し 1
鹿鳴かば絵筆を折りしダ・ヴィンチも
蟋蟀の翅揺らぎしを画く絵筆
霧深し絵筆の先の群青に
火を恋ひて骸骨むくりと起きたまふ 2
烏瓜骸骨になるを待つてゐる
秋薔薇ひとひら浮かべどくろ盃
鈴虫を髑髏の欠片に住まはして
一面に鯖雲おほふ過去ありき 1
花野へと一面被ふ野心あり
高潮の底ひに転ぶ髑髏かな

第四句会 ざらつく、あまさず
蟷螂やあまさず空を斬りたまふ 3
居待月ざらつく窪に堕ちにけり

第五句会 大、勢
蜻蛉に大き意志あり世界燃ゆ
鵙の声勢ひかすかに夜汽車行く 2

2010/11/28

10月50句22年  

【A連】
秋霖や古道の先を異郷とす
恒河沙に轍残せり花薄
引き潮に流されて行け鶏頭花
葦なかの防空壕に風吹けり
秋気澄む少彦名も渤海も
斐伊川の荒ぶる神に木の実降る
蟋蟀の飛び立つ空を掬ひたり
中指で堰を削りて落し水
遺伝子の組み替えをして秋の霜
阿修羅かな右手に柚子の種持てり
鍵穴に鍵は入らず冬隣
躁も鬱も削ぎ落としたり脱穀機
一房の葡萄のための光かな
秋麗や清姫の鐘溶けるまで
流星群光を照らす父の國
隠国(こもりく)の古道は険し虚栗
菊人形八艘飛びの眼(まなこ)あり
転生す比丘尼の蒔きし落穂より
補陀落渡海茅葺き屋根の舟で行け
霜降れりトロツキーにも波止場にも
啄木鳥も嵐の夜に訪ねけり
草雲雀ビルマの人を探しをり
関東管領稲舟に乗る酔ひしまま
天網島の夜霧に赤き紐
霜月を待つ心地して筆の先

【B連】
ハイデガーを真夜に読みけり草紅葉
戦犯と呼ばるる悪夢虫時雨
仇討ちをしたる弓張月の池
天空を蜻蛉巡れり七たびも
稲妻や咎なくて死す伊呂波歌
水底は防人の國野分だつ
朝霧や生まれ変はりの猫見つむ
坑道の奥深くより鴫の立つ
蒙古斑持つはらからの菊枕
モンゴルの草原統べよ神渡
海溝に時計沈みて十三夜
鹿笛に擦り足の人逃げてをり
胡桃一果手に握りしめ人恋へり
後ろから百舌鳥が見つめてゐはせぬか
すさまじは獣道より人の道
谷底へ涅槃ありけり柘榴堕つ
敗荷や胎内巡りの果てにある
修験者の影膨れたる焚火かな
黄落や指長き人愛しをり
毒茸横隔膜を破るまで
鶴来る無人駅舎の使者として
崩れ簗約束の日を二日過ぎ
野分来て海馬をすこし揺らしたり
神仏も鹿曼陀羅の彼方へと
バンジージャンプ雁のかたちを保ちたる

2010/11/28

9/11 錦土曜句会  

燻、階段、稀、恩、塩

忘恩の輩と我を呼ぶな月 2
燻されて法師蝉ふと咽ぶかな 1
鶏頭花稀にあらわる青死斑
階段を降りて蜻蛉の國へ行く 2
塩焼きて焦がれてをりし蟷螂も 1

2010/11/28

9月50句22年  

kumikoさんとの両吟

葦舟に乗りて幼帝旅立てり
八雲立つ男の刃すさまじき
銀杏の実廃墟にぽつりと落ちにけり
秋霖や木星イオに降つてゐる
秋天やアルマゲドンの色に似て
山葡萄ケルトの城に絡みつく
磔刑を快楽として吊し柿
潜らねばこのままで良い百舌鳥の声
菊月やほら祟徳院真後ろに
猿なのか赤服着て火の祭
新走りダッタンの茶で割らうとは
鴫立つやどしやぶりの意志破るまで
流星は凶事のしるし今朝の火事
落鮎や抗ふことは悦楽と
まんじゅしゃげ國のかたちに咲きにけり
ひと言を投げ黙長しぬくめ酒
居待月二匹の猿が見上げをり
実南天小惑星の星となり
敗荷や水葬にせむ我が骸
葦原に白き顔持つ人の影
パラシュート開いて欲しい烏瓜
サフランや獣の匂ひ漂はせ
馬鈴薯の茎の伸びゆく岬まで
食べ掛けの林檎置かれしカウンター
鹿鳴くやキャバーンクラブにシャウトして
火祭にナホトカ訛りを傍受せり
秋霜や地磁気荒れたる窪みあり
秋郊や印画紙のなかオメガ燃え
藁塚にダイビングする偽ヨハネ
無花果の紋章ありや祈祷書に
身をひさぎ祈り深しと蔦紅葉
葡萄園黒き肌持つマリアゐて
鉄の処女なかに柘榴が刺されをり
尖塔に誰を閉じ込め鬼胡桃
ダム崩れゆくり落ちゆく梅もどき
秋繭やミラボー橋に糸残し
霧深し國に極楽地獄あり
花野には革命趣意書のビラ二枚
ニーチェに弓張月の思ひあり
野葡萄を飲み込み誰を裏切ろか
秋彼岸ジョンと言う名の歌手がゐし
ガリラヤの湖(うみ)に生まれし初嵐
秋の蝉翅に刻みし地下道図
赤蜻蛉追って分け入る黄泉の國
秋遍路鎌持つ者に睨まれて
秋麗やはらはら時計の音の澄む
おごそかに耳を切りては百舌鳥(漢字v貝に鳥)の贄
唐辛子焼きて涙を流してる
雛芥子(コクリコ)の誘ひの言葉覚めやらず
秋扇やモデルの髪の伸びる先
稲妻のすみかブリュタニューの森
かげろふや少女漕ぎたる一輪車

2010/11/28

8/26 風花句会  

晩夏光蟻と一緒に蠢きぬ
木漏れ日やシエスタに入る園丁も
蛇顔の石に苔あり飛蝗飛べ
蝉時雨導管塞ぎ枯るる幹
京大の蜘蛛3Dの巣を編みて 1

2010/11/28

8月百句22年  

kumikoさんとの両吟

無花果の腐り始めた書架のなか
秋遍路行き着く果ての地獄かな
爆心地案山子の髪は紫に
うつすらと門火の奥に吾子の顔
茸狩りに行きて伍長は帰らざる
法師蝉無音にもあるレクイエム
ピザパイを分け合うほどの星祭
彼方よりの霧雨にむしろ火は増せり
金星に稲妻走る創世記
銀漢に勇者立ちをり獅子ととも    10
分け入つて青き桔梗と嘘の数
鬼灯やレ・ミゼラブルと叫べども
桐一葉シェルブールの雨に添ふ
映写技師愛のしるしの花野かな
蜩やシシリー島に鳴くものを
海面に色を残して赤蜻蛉
ペルソナを取れば骸(こうべ)と月夜茸
荒鷲やリアルト橋を眼下に見
その前に弟切草と別れねば
蟷螂が龍に変はりて空被ふ      20
世紀末六角堂はすすきのみ
キャンバスにグレーに塗られ鰯雲
龍田姫コルトレーンを従へて
操らるマリオネットに反乱者
秋の蚊帳中にくぐもる気配あり   
天の川溺れてゐるは一角獣
虫籠に怪鳥の雛閉じ込める
啄木鳥に突つかれてをり秘戯めきて
蝙蝠の無間の言葉責めにあふ
鶏頭に避雷針など着けてみる     30
毒茸いよよ増しゆく赤と黒
唐辛子置いて帰りき朱雀門
露草や戻り橋には人さらい
虫売りに紛れて潜む異邦人
秋嵐マリンブルーの指輪失す
鶺鴒の声に再生誓ふべし
振りむけば乞巧奠はとうに過ぎ
死後のこと薄羽蜉蝣問ふてをり
天元を棋士は指しをり秋星へ
傷ついた小鳥二匹の巣箱かな    40
覗き見る野分の朝の御簾のなか
迎え火やきみの網膜まで届け
うすもみじさはつとゆれてつまわらふ
コオロギの声の川面を渡りゆく
目瞑れば暗き舗道におみなえし
銀杏の匂ひ取れない指の先
寒蝉の鳴いて墓場を空とする
自転車でくぐり抜けたる秋の虹
イカロスの羽は崩れじ星月夜
引き潮に飲み込まれたるさねかずら  50
迷宮をついに出られぬ酔芙蓉
夜顔の咲きて落武者睨みたり
嵐の夜眠りてゐるか難破船
硯洗あはく溶けゆくひとのあり
墜落の思想持たぬか鉦叩
三叉路で迷つてゐるか麝香草
秋天のアンドロメダの住人か
ペガサスは流星群を駆け抜けり
花園はメデューサの血で染めてあり
遠雷や怒りは髪を蛇に変え      60
トロイにも新宿にもあり木馬館
コオロギの声ですべらぎ揺らぎをり
月は欠け暗黒星雲現れし
立待ちに残波岬で咎めらる
言ひ訳を真綿で締める曼珠沙華
病室の隅で香れる花梨かな
無常なり色なき風のこたへたる
雨月には退屈といふ死もあるか
秋の波薄皮剥げて終はる恋
洪水のプログラムあり鮎跳ねる   70
複眼の中に回路を持つ飛蝗 
祇王寺の上より聞こへる秋の声
戒めに鳴子鳴らして告げる奴
哀しみは釣瓶落しの青銀河
忍ぶ恋寄り添ふ牝鹿に告げてをり  
草牡丹露とこたへて静もれり
冬瓜の透明な肌愛しをり
秋麗の空に扉は開かれて
露寒や逝きたる人が振り返る
迎へ鐘臓腑の中に入り込む     80
牽牛の緑の絹に包まれる
対岸の仕掛け花火に火照りたり   
人間(じんかん)を俯瞰してゐる鰯雲
削除されても削除されても秋の蝉
七夕も年に一度だから良い
鈴虫のごとく泣かして掃き捨てる
山椒の実横隔膜に振り掛けよ
稲妻よロシアの郵便馭者を抜け!
邯鄲に催眠術を仕掛けられ
馬鈴薯にフォーク刺しをり逢瀬のち 90
黒葡萄ふふみ慚愧の茂吉かな
菊日和武者人形の浮かぬ顔
送り火や縄文杉を指す故郷
鳳仙花飛んで高麗国へ行く
撫子の咲きて百済の仏とも
藪枯誠実といふ名の不誠実
桐の実や微かな騒ぎかたりあふ
黄泉のくに招き入れと茜草
秋の湖鳥羽ばたきてあと静か
みづうみに湖影を統べる雁のゐて 100完

2010/11/28

7/17麟塾 おぐら句会  

二十二、船、祇園祭、方、巻、手鏡
ペルシャへと祇園祭の山車に乗り 3 
手鏡の裏に神獣あと蛍 5 
二十二人使徒を葬むり夏薊
蒼空に蜷局巻きつつ死せり蛇 3
方陣の体形として胡蝶蘭
船長の午睡の最中情事なし

第二句会 底、触
遠雷や底深き野へ潜り込み 1
水底に烏賊の心臓置きにけり 2
感触の氷菓のごときひととゐる 1
ソーダ水口に触れても悲しけり
天球に触れて堕ちよと青葉木菟 3
浴衣にも底のありけり石畳 1

7/17 みそら句会 持寄り4句
門番は蛇の化身といふ噂 1
眼球を水鉄砲で撃たれけり
眼裏に長刀鉾の刺せる空 2
蠍かも知れぬ睫毛に触れるのは 5

2010/11/28

七月百句22年  

kumikoさんとの両吟

炎帝や日時計の針刺すごとく
紫陽花の色褪するまで咲きてをり
ベガに焦がれアルタイルの星惑ふ
横たはりやがて死ぬらむ揚羽蝶
青嵐心臓近くに棲みつきて
門番は蛇の化身といふ噂
クリオネとなりて氷河に隠れたり
どの地へと我を誘ふ鬼ヤンマ
夏野へとバイクアクセル全開に
寝苦しく青葉木菟なら死ねと言ふ
眼球を水鉄砲で撃たれけり
天仰ぎ水羊羮を飲むは愛
水遊び互いに濡れて真顔かな
風鈴に話してみたり凛の声
去年のこと山椒魚は語るまい
蠍かも知れぬ睫毛に触れるのは
コーランの最終章に螢飛ぶ
目には目を青葉の影に暗殺団
夏の夜やマリアに愛人いようとは
冷奴潰して食べる彼の癖
別れ際ゼリーを喉に詰まらせる
夏薊ミラボー橋で再会す
夏ぐれに絹擦れの声チマチョゴリ
温風に漢江の水たちどまる
軽やかに竜舌蘭の花開く
その音色李氏朝鮮の雪渓に
木下闇祇園の杜の仕業
梧桐や方舟に乗る牛四匹
一輪を贄と捧げむ麒麟草
ジグラットも酒船石も胡蝶花のこと
絨毯の密売人や孔雀草
眼裏に長刀鉾の空のあり
鬼蓮の捕はれてをり奥座敷
蝉抱きて蛍袋に籠もりたり
湖岸へと届けと叫ぶ牛蛙
河骨を喉に刺したる流派あり
昼顔はドヌーヴの鬱憎みをり
花茣蓙に寝て我が星座抱き締める
漆黒の砂利取船も炎暑かな
鬼罌粟の縦横斜め固められ
滝壺に亀甲紋の岩眠る
汗拭ふサンチョ・パンサに刺青あり
夏霞み赤色矮星胎内へ
薔薇二輪ひかりを受けて寄りてをり
デルフトの眺望に似て夏の湖
水芭蕉レンズの向かうに揺れにけり
雲の峰比良山系を母として
淡海にて虹を過客と見送りぬ
青葉闇武者の潜みし石の陰
青葉騒からつぽになる海馬かな
ずたずたにシプナス切られ竹の花
白日夢ゾウリムシにも故郷あり
夏茜ミクロの船で航海に
香水の中で泳ぐと合図せり
夏蜜柑創世記には記されず
羽蟻の羽ばたきにより戦さあり
炎昼や闇のコミュ−ンの頭領へ
長老は山椒魚の目をしてる
洞窟に殺意育む夏夜なり
封蝋にダビデ像あり大暑の日
忍ぶ恋なれど香水振りまきて
籐椅子に鏡を見つむよその人
汗拭ひ叫喚を背に薪を積む
歌人ゐし雨の近江に果つる夏
瞬きをすれば列車は夏炉に入る
赤潮を胎内回帰のはらからに
姫芭蕉砂上の楼に乱れをり
蜘蛛の巣に髪絡めをり船乗りも
夏書あり般若心経書きかけの
みたらいの水底にあり迷宮は
つまおもふ定家葛の花のごと
土曜波我が身を攫へ青銀河
夕凪に草履を浮かべ彼方見る
百日紅仕掛細工の成れの果て
アイスティー檸檬のひかりを閉じ込める
睨み付けここまで来いと水馬
モスクワの暑きスパイと麦酒飲む
夜店では謎の言葉の香具師もゐて
媚薬でも入れてをけうか肉桂水
豪雨でも神苑の水溢れ出ず
熱帯夜新たな教祖が二人出で
肉球に愛憎の香のある夏夜
炎天にユダの裏切り悟りをり
その懺悔責め付けらるる蚊帳の中
杉落葉栞にしたる頁開く
誘蛾灯に集まつて来る雑魚二匹
ホトトギス生々流転と鳴きてをり
青深泥雷神ひそむ沼であり
時計草約束ひとつ忘れ果て
噴水に暗号文字の誤配列
散水車こころの襞へ分け入りて
ロレンツォ豪華王の行く夏野あり
湖国には雷雨はなきと返信す
鮒鮓の味は黄色のあるところ
青葡萄戦中戦後を走り抜く
葛餅のしなだれて行く島のあり
今度こそ食べてみやうか心太
はんなりと上七軒の氷売
かそけきは扇の上の花のこと
青嵐や手を取り合ひて曽根崎へ

2010/11/28

6/12麟塾おぐら句会  

倍、二十一、栓、扉、愛、揺れる、自由4句
空蝉のほどけ二倍の虚のあり
水底にはんざきの眼の二十一
シャンパンの栓抜きてのち音しづか
紫陽花の伸びて扉をこじ開ける
サングラス反射してみよ愛のごと
吊るされて夏手袋の揺れる森
草いきれ白日夢とはもう言ふな
古井戸は虹の寝所でありにけり
食卓に氷菓とろりと残されて
横顔は白夜のためにとつて置く

第二句会 使、前、乗、傷、山
薔薇咲きて前頭葉を震はせる
夏越には使ひ古した我が身など
水盤に乗りて骸を浮かせけり
焼酎を浴び傷跡の剥げやすく
石楠花を山ほど抱え仇敵へ
土用波使徒行伝の濡れてをり
夏書には前史のことが秘されたり
氷水山より流る終末期

2010/11/28

6月百句  

kumikoさんとの両吟より

鵜飼火にピアノ光れりぬばたまの
かはせみのアリア演じる川辺にて
天上に牡丹の白を敷き詰めて
五月雨を撃ちてし止まむ棒持ちて
蛍火のかすかなほどの声を聞く
待ち合せ場所を忘れた花菖蒲
草いきれ白日夢とはもう言ふな
蚊帳のなか暗黒星雲膨れゆく
遠雷の障子の隙間より届く
古井戸は虹の寝所でありにけり
横顔は白夜のためにとつて置く
旱天に塩流れ出す我が裸体
柩開け夕凪らしきもののあり
食卓に氷菓とろりと残されて
甘酒を勝利の美酒として眠る
汗塗れ首締めらるる悦楽よ
フェリーニの燕無明の闇を飛ぶ
碧眼のシャム猫からむ花茨
滝壺へメールアドレス消去して
クマ蝉は過去に向かつて鳴き叫ぶ
蜘蛛の巣に包まれ眠る虫であり
山百合の咲き乱れたる沼ありや
空蝉と言へど頬擦りしつづける
向日葵の開けつ広げを溺愛す
ひと滴氷菓くづれて染みとなり
青簾サーカス小屋の天蓋に
狂鶯や緋牡丹お竜と生き写し
咎人は蚊柱の渦かき混ぜる
燭台に夕顔一花揺れてをり
顔面を海月が被う潮満ちて
露台にはキセル二本と煙草盆
舌に触るビー玉愛しラムネ瓶
青すすき一面の野が海に入る
胡蝶花の暗きに咲きて戦さあり
大陸の移動は哀し夾竹桃
木苺の汁滴らせ安息日
鮓食えば淡海の乱の欠片あり
みすずかる信濃を襲ふ熱砂かな
蝉時雨伝えきれない声もある
飛ぶことを芦刈山に越されけり
海底の仕掛花火は燃えてをり
箱庭に底深きにはたづみあり
このままに花を氷室に閉じ込めて
函を開く薔薇かも知れぬ砂ぼこり
ビール浴ぶ耶律楚材を友として
雛芥子の酢漬け三年物が良い
我が舌にトルコ桔梗の毒の味
浜木綿を両手一杯抱きしめて
熱帯夜嫌はれた訳聞きそびれ
守宮棲む鎌のかたちの半島に
海猫は街灯の下息ひそむ
髪洗ふ指先細い忘れ人
夕焼けの色で吉凶占へり
裏宇宙漆黒の野に雹の落つ
パラソルで隠し口づけ貪りし
何しても水鉄砲の飛ぶ範囲
籐椅子に眠り続けるペルシア猫
夏祭りガジュマルの樹でかくれんぼ
触れあへば無い物ねだり青田波
梅雨晴間ぎやあていぎやあてい我がなづき
川床に赤色矮星出現す
青鷺ののみどに入る星ひとつ
心宿は蠍座αアンタレス
風鈴のゆるりと揺れて凛と鳴る
揚羽蝶カインの墓の上を飛ぶ
傍らにつぶてのありや吊忍
ほうたるやあなたから生まれる筈でした
帆船の錨はいづこ夏の海
結界を越えれば異土の鉄線花
百日草障子開ければ知らぬ人
青林檎かじつた跡に八重歯あと
花柘榴断崖に咲け万華鏡
百合の花決意をひとつ持ちてをり
噴水の飛沫そびらを責め続く
近江屋の風吹き抜ける夏座敷
水羊羹歯触りむしろ頼りなく
なめくじら昨日の罪を背負い這ふ
ちゃぶ台をひっくり返すガマ蛙
バス停にじつと立ちをり眠草
光受け末摘花も赤み増す
紫陽花も太陽を恋ふ回帰線
これ以上見栄を張るなよジギタリス
夕顔を月の名前に京暦
キリストを責めたつごとき花茨
存在の地平崩れて青葡萄
茉莉花や反戦劇の終幕に
みずうみの中の病葉拾ひあぐ
籠の中自ず空持つ黄金虫
この星は天道虫の夢だつた
炎帝はすべて見通し身を焦がす
油蝉の騒ぎて静か昼下がり
葬送の人過ぎ去りて橋涼み
茹小豆ことりと落ちて戦後かな
干鮑中南海の胃袋へ
手花火に祈りと怒りを閉じ込めし
冷素麺箸にからまり熱を持つ
糸蜻蛉月の使者として生きる
息を吐く月下美人の夢の中
旅立ちに苺三個を引き換えて
薫風にピアノ教本揺れてゐる



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ