2008/5/19

閉じたまぶたの上にほんのりと明かりを感じて目を開けた。
ステージの上には譜面台だけが並んでいる。
コンサートは終わったらしい。
僕は中学生。
母親と兄と3人で、室内楽の音楽会へ行った。
音楽会は母親が付き合いでチケットを買っていたもので、
兄も僕も今まで何度か来たことがあった。
ホールの入り口で友人が数人たむろしていた。
声をかけると、とんちんかんな返事。
振り返ると、母と兄が帰ろうとしている。
僕はトイレに行ってから後を追うことにした。
洗面台で手を洗い、前髪を直そうと鏡を見る。
鏡には何も映っていない。
胸がざわついた。
訳が分からなくて、なんども何度も鏡を覗き込む。
ふいに脳裏に、記憶にある
自分の目がはっきりと、細かく走る血管までくっきりと浮かんだ。
そうだ、僕、死んでたんだ。
僕の姿は誰にも見えない。
雨の中、家に帰ると、家族が再び出かける準備をしていた。
今日の夕飯は外でとるつもりらしい。
ぐっしょり濡れた靴を、靴箱の陰にそっと隠し、
僕はひとり自分の部屋で濡れた服を着替える。
窓の外を見ると、
緑の芝生の上に薄く、白いものが積もっていく。
雪だろうか。
なんかいやに寒い。
母親たちに、
一緒に行かないと言おうとして、そんな必要はないと気付いた。
僕は数に入っていない。
濡れた服を床に放置してよいものか考えていたら、
突然、父親が部屋に入ってきた。
「来てたのか、これでも読むか」
おやじはきっかり僕の目を見て、
紙に包んだフロッピーディスクのようなもの数枚と菓子をくれた。
ありがとう、と返事する。
おやじには僕が見えているのかもしれない。
でも菓子は木の盆に載っていたから、
お供えのつもりなのかもしれなかった。
雨が降っている。
玄関から音が聞こえた。
皆が出かけるらしい。
僕も行かなくちゃ。
でも、どこへ。
、、、という夢を見た。
目覚めたとたん、ボロボロと涙がこぼれきて、焦った。
とりあえず、窓を開けてベランダに出た。
袖でぬぐっても涙があふれ、鼻水は垂れ放題。
くそ、こんなに泣くのは久しぶりだ。
昨日の雨で濁った川の上を小鳥がつい、と飛んだ。
今年もオナガが来たよ。
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