2008/6/16

電話の受話器ごしに、久しぶりの母の声。
「秋葉原のあの事件、かわいそうだと思って」
被害者のことかと思えば、なんと加害者の方だと言う。
思わぬ展開にびっくりする。
どっかのワイドショーでそんなことでも言ったんだろうか。
被害者の方がよっぽど気の毒だと思う、と応えたら、
そういうことじゃない、
あんたは親の気持ちが分かってない、と来たもんだ。
学業で挫折し、捗々しくない現況と聞いたら、
他人事に思えないじゃない、と母は言う。
わたしが加害者の親になる可能性だってあるのよ。
それってあれか、
僕も何かやりかねないということか。
なんと言葉を返してよいのやら。
黙りこんだ僕の耳に、半笑いの母の声が聞こえた。
「でもあんたは、子供の頃から
友達に囲まれてなんだかんだで楽しそうだったわよね」
すこしムッとする。
見かけはともかく、そんなにお気楽じゃなかったのにさ。
安心するのはまだ早いよ、と言いかけて、止めた。
この手の冗談は趣味が悪すぎる。
母ときたらいつもこうだ。
電話を切ってから、ぶつぶつ呟く。
彼女は自分の悪気のない言葉が
僕をざくざく傷つけてきたことを全く知らない。
そして今後もそれを知ることはないだろう。
でも、
こんな電話をかけさせて、
へんな心配させて悪かったな、とちょっと思っている。
僕の人生けっこう悪くないのに、
どうして分かってくれないのかな、とも思っている。
彼女にとって、僕は「かわいそうな子」であり続ける。
いつか分かってあげられるかな。
いつか分かってくれるかな。
いつか、距離が縮まりますように。
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