「最初の5万トンも、95万トンも拉致問題に進展がなければ、我が国としては当然、出すわけにはいかない」という予算委員会での首相発言について。北朝鮮への重油相当支援、最初の5万トンと95万トンの話を同じ条件で語ってしまった点に、危うさを感じています。
5万トンの話を「拉致問題の進展」に条件づけたのは、それでいいと思います。世論からしても、また、「拉致問題解決への実績と期待」を一つの武器として成立した現行政権の国内政治要因からも、許容範囲内でしょう。
仮に5万トン重油相当の支援が実施されて、日本が重油そのものを提供しなかったとしても、6か国協議の協調関係維持やその中での日本の発言力に大きな問題は生じないと思います。5か国全部で20億円くらいの支援内容ですから、言われているような調査人員・技術の支援などで日本の分担分に近づけることは可能かもしれません。
ですが、その後、95万トン相当の支援が本当に実施された場合、そして拉致問題を理由として日本がその分担に応じなかった場合、日本は深刻な外交ダメージを負うことになります。6か国協議成否への責任、核拡散リスクへの責任は当然。6か国協議の底流では、各国が東アジアの勢力図作りを思い描いているわけで、そこへの発言力弱体化もあってはならないことです。
95万トンのほうについて質された際、「北朝鮮への支援は拉致問題の進展が前提であることに変わりない」程度の発言だったら、あまり問題視しません。今回の協議結果が本格実行に至った場合に、国益全体を踏まえた判断をする余地を残すとも受け取れるわけです。でも、5万トンと95万トンを並列に並べてしまいました…。
発言の背景・目算・意図を色々と考えてしまいます。北朝鮮への重油5万トン相当支援の条件である「初期段階の措置」が破談になることを見越しているのか…。拉致問題における「進展」の解釈という政治的レトリックで対応する方法を考えているのか…。本当に95万トンに加わらないつもりなのか…。
本当のことは分かりません。機微に触れる外交マターですから、全てが公開されていていいはずもありません。でも、どうも気になります。
ブッシュ政権は、中間選挙で民主党に負けた「内政(国内政治要因)」を大きな要素として、イラク政策という「外政(外交政策)」を改めつつあります。昭和の戦争期の日本もまた、それはしかりでした。いつの時代も、どの国も、国内政治と切り離された外交政策は成り立ちません。ですが、大局的に間違った外交に向かってしまったとき、外交政策が国内政治に多く依存してきた歴史を私達は思い出すべきです。
今回の発言・戦略が、政権の政治基盤という要素に依存していないこと、国民の生命財産を守るという国益、対外関係の中で日本が影響力・発言力を維持・強化するという国益に基づいた判断であることを願っています。いずれにしても、あと2か月弱、4月の中頃には、この発言の良し悪しが分かるはずです。
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