念のために申し上げておきますが私は言語学で食べていたり後進を指導している専門家ではありません。ましてソシュールやウィトゲンシュタインの専門家でもありません。年はくってますが言語学科の院生です。言語学に関する記事やコメントは慎重に書いてはいますが勉強不足な点などありましたら、ご指摘いただければ幸いです。なお、下記の説明の中では専門的な音声記号や音韻記号は使用しませんでした。
発端
はちょちょんまげさんのブログの記事で(訂正された後ですが最初から説明します)
>子音がアタマに来るという、日本人の俺にはなんとも発音のしにくい名前の
と書かれたのに対して私が
日本語でも母音「あいうえお」以外の音は全部子音が頭に来ます。ですのでここは「撥音(はつおん)」、つまり日本語の「ん」の音に置き換えられたほうがよいのではないでしょうか
とコメントしたことでした。上記のコメントに対してちょちょんまげさんは私の提言どおりの訂正をされた上で下記のような質問をコメント欄で為されました。
質問なんですけど、例えば、「d」(子音だよね)と「da」って、同じ子音ということに?(無知ですんません)
コメント欄ではお答えしきれないのでこのエントリを上げました。
まず、言語音は通常(例外もあります)肺から出た空気が声門を通って口、または鼻から抜け出す際に出す音ですがこのとき空気が舌や唇などによって邪魔されずに出る音を母音、舌や唇やのどちんこなどによってなんらかの邪魔が入る音を子音と呼んでいます。
で、言語学というのはそもそもヨーロッパで発達したので、音の分析の仕方なんかもヨーロッパの言語を分析するのに都合よくできています。たとえば英語話者は通常dogという語を、d,o,gという3つの音のつながりだと認識していますが日本語話者は通常これをdo,ッ,guという3つの音のつながりだと認識しています。
つまり、dogの「ド」というとき、日本語話者は通常doまでコミで一つの音と認識するのですが、英語話者は、dで一つ、oで一つと認識します。日本語で、母音「あいうえお」以外で、一つの音として認識されているものは、通常「子音プラス母音の組み合わせ」だということになります。たとえば「か」はk+a、そしてご質問のdaは、dという子音とaという母音の組み合わせということです。
なんとなく、daで一つと認識している我々にとっては気に入らない点もなきにしもあらずなんですが(主に非西洋語圏の専門家からの指摘もありますが)とりあえずこのやり方は便利なので、現在の言語学でも基本的には世界中で採用されています。
そして日本語の「ん」の音は、日本語としては例外的に子音だけで一つの音と認識されているものです。ただし、我々が「ん」だと思って発音し聞き取っている音も実は色々な音があるのだということは、確かちょちょんまげさんもお読みになっていたと思いますが、どっかの漫画家のダーリンの話にも出てきたかと思います。
この日本語においては例外的な「ん」を撥音(はつおん)、ちっちゃい「っ」で表記される音を促音(そくおん)と呼ぶのは伝統的な国語学(現在は日本語学と呼ばれている)の呼び方で恐らく中学か高校あたりの国語の教科書に出てくるのではないかと思います。
ですので「ん」も子音の一つであって、撥音だから子音でないというわけではありません。もしまだご不明の点がありましたらどうぞお尋ねください。
過去の経験上トラックバックは通らないと思いますので
リンクだけ貼っておきます。