女子トイレを出て、私は廊下を教室とは逆に歩いた。
全校生徒はまだ教室で朝の会の続きをしている。
どこに向かう訳でもない。
教室には戻りたくなかった。
名前を呼ぶ声に足が止まる。
先生だ。
「教室にもどれ」
先生は言った。
返す言葉も無かった。
─どうして
戻らなきゃいけないの?
─どうして
そんな事が言えるの?
─先生、見てたでしょ?─
………。
ありえないと思った。
「ムリです。」
「じゃあ何処行くんだ?」
「………。」
先生はとりあえずじゃあここにいなさいと言って、私を視聴覚室に入れてドアを閉めた。
静まり返った机と椅子だけの薄暗い教室。私は椅子に座り机に顔を伏せた。
1時間目のはじまりのチャイムが誰もいない教室に響く。
─ずっとこうしてていいのかな…─
数分後ドアの開く音がして私は顔を上げた。
「どぉーしたぁー?」と言って体育の女の先生が入って来た。
たいした話もした事無い先生だ。
おまけにこの先生は私のキャラを勘違いしている。
最悪だと思った。
「○○と付き合ってるんだってー?喧嘩したの?もぉしょうがないなぁ。」とか
「元気出せよ!」とか
空気を読まないテンションと話をして教室を出て行った。
少しもテンション上がらなかった。
それどころかイライラが止まらなくなった。
休み時間のチャイムが鳴ると、担任の先生が「大丈夫か?」と言って入って来た。
『はぃ。』
先生は少し笑顔で近くの椅子に座った。
「どうしたの?」
『……。』
「……。」
『……。』
「どうして殴られたの?」
『わかりません。』
「付き合ってたんだよね?」
『はぃ…。』
「喧嘩?」
『喧嘩……じゃないです。
昨日別れたんです。』
「どうして?」
『………。』
「暴力されてたの?」
『や、…違います。』
「なんで急に殴られたの?」
『わかりません。………でも昨日の放課後、別れたいって言った時も、殴られました。』
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「そっかぁ……。でもね」
『……。』
「いいか?このままここに居させる事は出来ないんだよ?」
『はぃ。』
「とりあえず3時間目からでいいから教室に戻って欲しい。」
『……はぃ。』
先生は小さくうなずいた。
無理矢理でなく、本当に戻ろうと思った。
先生が私の気持ちを理解してくれた様に感じたから。

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