今夏の智弁和歌山は非常に素晴らしいチームだった。卒業する3年生にはいい人材が揃っていた。坂口選手、勝谷選手、芝田選手、田甫選手、高橋選手、浦田選手、林選手と一学年10名枠では最高の人選だったと思われる。しかし2年生打者が伸びなかった。この3年生が野球部在籍中に、2年生から2人くらいスタメンに顔を出す選手が欲しかった。外濱選手、左向選手、喜多選手あたりにいつも期待していたがダメだった。唯一北畠選手が守備で活躍してくれたが、バッティングではまだまだという印象が強く残ってしまった。
智弁和歌山の選手は、ある意味毎年男前である。和歌山という風土が育てるのか、純朴で人間的にいい人材が毎年揃う。朗らかで気のいい選手が多いと思う。その点ではチームワークは最高であり、クセのある選手も少ない様に思える。反面、それが個性の強さを発揮できない。言っては悪いが、私の偏見でもって書かせてもらうと、西より東にアクの強い人間が多いように思う。ユニフォームの印象から受けるイメージもあるのだが、帝京高校、昔のライトブルーの横浜、横浜商、関東発祥の東海系縦縞は、どう考えても箕島高校、PL学園、池田高校、高知商などの西の学校のユニフォームと比べると、いかにも悪役である。マンガにすれば間違いなく関東のキャラは悪役だ。
しかし勝負する上では、そんな事ばかり言ってられない。少しくらい厚かましい人間でないとチームを引っ張れない。
そこで横浜高校の1年生大石選手。松本選手の存在が目を引いた。まず松本選手といえば、あの走攻守3拍子そろった1年先輩の高濱選手(阪神タイガースに入団)を遊撃のポジションから追いやった人材だ。そして、その松本選手を遊撃から2塁のポジションに追いやったのが、この大石選手だ。横浜高校は毎年ハイセンス、ハイレベルな守備を鍛え上げてくる。ただ無理矢理、これ見よがしのバックトス併殺プレーを安易な考えで見せてくれなくてもいいのだが(一歩早く動いて正面で捕ってね)。
この松本、大石という2人の選手に共通するのが、体から溢れ出る闘争心である。智弁和歌山の選手とは目が違う。俺がやるという様な勝気な目をしてる。人より前に出るという挑む目をしている。だからこの2人には消極的なミスはない。ガンガン積極行動に出てダメなら監督も納得する。だから守備でも攻撃的なプレーができるのだ。横浜の守備は攻撃する側を攻め立てて来る。だからピンチでも守勢一辺倒でなく、攻撃的に切り抜ける。智弁和歌山にも見ていて憎らしいくらいの、目の強い勝気な選手が欲しい。
ただ一方で、横浜の大石選手、松本選手は必要以上に派手なガッツポーズを繰り返す。特に大石選手は3塁打+外野エラーで、本塁まで一気に帰ってきたが、見ていて嫌悪感を抱いた。ホームにヘッドスライディングし、うつ伏せになったまま何度もグランドを拳で叩き付けた。自分の狙いにはまった爽快感を抑え切れなかったのだろうが、度を越すのは良くない。だから横浜は大嫌いなチームだ。でもそういうリードオフマン的な選手の存在は非常に心強い。
横浜ついでに一人気になる選手がいる。筒香選手だ。今大会は不振から脱して大活躍だった。彼は和歌山から単身横浜に乗り込み、1年生からレギュラーを手にしてきた。あの小倉部長をして歴代ナンバー1と言わしめる素材だ。よく頑張ってると思う。同郷人としての誇りでもある。
筒香選手を見ていて思うのは、長距離砲独特の球を運ぶという打ち方とは全く違うスイングをするという事だ。上から思いっきり球を叩き潰すという打ち方が印象に残る。打ち方のタイプでいうとゴジラ松井型ではなくイチロー型なのだ。打球を叩いた後、普通長距離砲は軸足に体重を残し、大きく胸を張って大きなフォロースルーでバットを振り抜く。しかし筒香選手は、体重が踏み出した足にかなり移動し、胸を張るどころか上体が前に突っ込んだフォロースルーになる。打ち終えた姿勢が前にお辞儀してる様に、前かがみなってる。だから手打ちでコネてる打ち方に見える。筒香選手を長距離砲に育てるなら、これは大手術が必要だろう。
智弁和歌山も新しい船出だが、2年生の成長に遅れを感じてしまう。毎年毎年長打力のチームを作るのは大変であり、野球の技術を選手に学ばせるという点では、それに偏重した指導も歪を生じる。これまで足りなかった物もチームに注入してほしい。


3