2016/9/22

監査手法の進化  財務諸表監査

 財務諸表監査は時代とともに、その手法が変化し、発展してきました。
 現代の財務諸表監査では、データ分析を使用した監査手法が取り入れられるようになってきています。
 例えば、トーマツではAudit Analyticsというデロイトの手法を導入していると公表しています。
 データ分析により、母集団全体の傾向を把握することができるので、重要な虚偽表示リスクのより的確な把握により、効果的かつ効率的な監査を実現できるほか、試査の限界を補うこともできると考えられます。

 このようなデータ分析が出てきた背景には、もちろんITの進化があげられますが、一方で、(1)年々巧妙化する会計不正や(2)経済発展に伴う取引の高度化・複雑化・膨大化、に対して、従来の監査手法では限界がきているという背景もあると考えられます。

 このことを、平成27年10月23日(金)に日本公認会計士協会で開催された「秋季全国研修会」における公認会計士・監査審査会の資料「監査事務所検査結果事例集〜検査官の視点〜」より見ていきたいと思います。

 この資料のP13では、「従来型の監査」「過渡期」「リスクアプローチ型の監査」が紹介され、さらに「上記、リスク・アプローチ型監査の先に、監査の基準が求める形がある」として、現代の財務諸表監査のあるべき姿を訴えています。
 
 この中の「従来型の監査」では以下の指摘がなされています。

・リスク・アプローチの不理解
・BS項目に偏重した監査(残高確認含む)
・PL項目:カットオフ手続偏重
・証拠力の評価なし
・会社資料:正確性及び網羅性の検証なし


 このうち、「BS項目に偏重した監査(残高確認含む)」と「PL項目:カットオフ手続偏重」は題名どおり、従来、監査現場で行われてきた手法でした。従って、これらの手法に問題があったというわけではありません。
 
 「BS項目に偏重した監査」は、特に期末監査では、このような傾向になることが多くなります。
 これは、複式簿記による会計構造にその理由があります。

 いうまでもなく、純利益は収益と費用の差額により算出されます。これは損益計算書により計算されます。
 この純利益は、貸借対照表では純資産の増加として表れます。具体的には利益剰余金の増加となります。
 一方、純資産ですが、これは資産と負債の差額をいいます。純資産が増加するということは、一方で、資産の増加、負債の減少が生じているはずです。

 ここで、架空利益を計上したとすると、会計構造上、それは資産の増加や負債の減少として表れるはずです(評価・換算差額の計上の場合は無視します。)
 具体的には、架空利益の計上は架空資産の計上と簿外負債の計上として表れてきます。そのため、資産については実在性や評価の妥当性、負債については網羅性が重要となってきます。
 
 そこで、期末監査では、実査、立会、残高確認といった監査手続が行われます。
 実査、立会では資産の実在性や評価の妥当性といった監査要点の立証を行います(もちろん、それだけではありませんが。)
 残高確認では、資産については実在性、負債については網羅性の立証を行います(こちらも、それだけではありません。) 負債については、網羅性をより効果的に立証するためにブランク確認状を使用するケースもあります。
 
 実査、立会、残高確認以外にも、債権の評価として貸倒引当金の計上の妥当性の検証や、固定資産の減損会計の適用の要否の検討なども行います。

 このように、複式簿記による会計構造を背景として、架空利益の計上は架空資産の計上、簿外負債の計上として表れることから、期末監査では、資産の実在性、評価の妥当性の立証、負債の網羅性の立証といった、公認会計士・監査審査会がいう「BS項目に偏重した監査」が行われてきたわけです。

 しかし、これは複式簿記による会計構造上、この監査手法はある意味、やむを得ないものであり、また妥当であったといえます。
 従って、この監査手法に問題があったというわけではありませんし、今後も行われる監査手法です。
 「BS項目に偏重した監査」という表現は、ここに重点を置き過ぎると、現代では財務諸表の重要な虚偽表示を看過するリスクがありますよ、というものであると解されます。

つづく
 

 
 
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2016/4/6

平成27年度修了考査合格発表  修了考査

 遅くなりましたが、4月4日は平成27年度修了考査の合格発表日でした。
 合格者数は1,301名、対受験者数合格率は71.8%ということです。

 合格された方はおめでとうございます。

平成27年度修了考査の合格発表について

 
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2016/1/23

新日本監査法人の協会処分報道  監査法人

日本公認会計士協会が、1月22日付で「新聞報道の内容について」というプレスリリースを出しています。

「1月21日付け読売新聞朝刊に、日本公認会計士協会が「新日本監査法人と担当した会計士7人に対し、協会会則に基づく懲戒処分を行う方針を固めた」旨の記事が掲載されました。
同記事については協会が取材を受けたものではありません。」と記載されています。

 推測ですが、何でマスコミにこのような記事が載ったのかというと、これは新日本内部から漏れたからだと思います。このような協会処分がある場合、事前に対象者に対して処分予定内容が通知されます。事前に処分内容を通知し、異議があったら言ってください、というわけです。
 これが人づてに法人内で噂になり、そして、マスコミと懇意の職員が取材を受けたのか、自分で流したのかはわかりませんが、協会の処分が出そうだ、ということを話したのだと思います。
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2015/12/16

修了考査〜住所テスト  修了考査

 本日は12月16日(水)ですから、修了考査まで、今日を除くと、あと17日(木)と18日(金)の2日ですね。

 さて、監査実務ですが、確認を行うときの住所テストについて書いておきます。
 まずは、監査基準委員会報告書505からの引用です(ゴシックは筆者)。


「6.監査人は、確認手続を利用する場合、確認手続に関連して以下のような事項について管理しなければならない。
(中略)
(3) 確認依頼の立案(確認依頼の宛先が適切であり、監査人に直接返送する旨や回答に当たっての留意事項を含む。)(A3項からA6項参照) 」

「A6.確認状が適切な宛先に送付されることを確かめるため、確認状の送付前に、宛先の一部又は全部の妥当性をテストすることがある。 」


 この住所テストは、会計・監査ジャーナル2011年4月号の座談会でも説明されていました。住所テストは、私が知っている限り、まだ問われたことがないのではないかと思います。

 そこで、会計・監査ジャーナルの座談会を要約する形で、その趣旨を書きますと、要するに、誤った住所に送ると正確な回答が得られない可能性があり、監査人にとって必要な適合性と証明力のある監査証拠を得られない可能性があるからです。

 さらに、座談会では、確認先の選定が終了した後にクライアントが一覧表を用意してくれるとき、このような一覧表の記載を鵜呑みにするのではなく、職業的懐疑心を持って利用することの必要性にも言及しています。
 
 そして、その住所テストの手段ですが、売掛金の確認状であれば「普段、会社が請求書を送っている住所と同一であることを確かめる、得意先マスターと照合する」、金融機関への確認状であればインターネット等を通して監査人自らが住所を確かめてみる」といった手続が例示として紹介されています(会計・監査ジャーナル2011年4月号 P17)。

 もし、試験で住所テストを行うための監査手続を問われたら、上記のような手続を解答すればよいでしょう。
 
 また、この座談会はクラリティが草案だったときの2011年のものですが、現時点であれば、マイナンバーの法人番号公表サイトを使用するというのもひとつの手段だと思います。
 これを活用すれば、ホームページを設けていない株式会社等についても検索できますし、国税庁のサイトですから住所情報は正確です。

 以上、参考になれば幸いです。
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