12月7日(日曜日)
久しぶりに『2$』に行ったけど、みんなちっとも変わってないわね。
相変わらずケン坊はおもしろいことを言ってわたしとミカを笑わせる。
今日も《It's A Man's Man's Man's World》最高だった。
またフィリピンのバンドが出てた。
アクロ・ソニックっていうカッコいいバンド。
サイドギターでヴォーカル担当の子、すごくかわいいの。
わたしの顔を見てニコニコ笑うのよ。
クルージャンがいた頃を思い出しちゃった。
12月9日(火曜日)
アクロ・ソニックのヴォーカルの子と話をした。
とってもかわいいのね。
まだみんなカレッジボーイだって。
だから右手にカレッジリングをしてた。
沖縄から帰ってきて小倉に来たんだって。
20日まで小倉にいて、そのあと横浜に帰るって言ってた。
また寺内企画の所属かな。
初めて雪を見て、「寒いね」だって。
フィリピンでは雪は降らないよね。
クルージャンのことも知ってた。
12月11日(木曜日)
わたしにはOLなんて向いてないみたい。
今、会社がイヤでイヤでたまらない。
会社というより経理って仕事がイヤなんだと思う。
後始末をきちんとやって来年の春ごろに会社をやめようかな。
デザインの勉強がしたい。
東京か横浜で勉強したいけど母が許してくれないだろうな。
12月13日(土曜日)
沖縄行きの身分証明書(パスポート)がおりた。
これで一安心。
ホテルもコザホテルに決まった。
あとは行くだけ。 楽しみだな。
12月15日(月曜日)
ケン坊の歌を聴いてても帰る時間が気になってステージに集中できない。
今日も《Unchained Melody》を歌ってる途中で席を立っちゃった。
歌いながら見てるケン坊に、時間だからと腕時計を指差しバイバイと手を振った。
あ〜ぁ、自由になりたい。
自分の思うとおりの生活がしたい。
好きなときに好きなことをして、誰からも束縛されない、時間にも縛られない自由な生活。
わたしはまだ若いんだもの。
自由な生活がしたいわ。
12月16日(火曜日)
福岡県庁に身分証明書を取りにいって、帰りに税関で種痘を受けた。
あとはドルに両替するだけね。
嬉しいな。
12月18日(木曜日)
交通公社の大田さんに会って、沖縄に着いてからのことや税関でのことをいろいろと教えてもらった。
大田さんは20日から沖縄に行くんだって。
28日(日曜日)が休めるので、27日の夜行で鹿児島まで行くことにした。
12月19日(金曜日)
はたち最後の日。
わたしのはたちはどんな年だったかな。
いろんなことがあったけど、後悔してないよね。
明日からは21歳。
イヤだな。 なんだか急に大人になったみたい。
12月20日(土曜日)
今日からわたしも21歳。
もう完全な大人なんだから、自分の行動に責任を持たなくちゃ。
ボーイに早く会いたいな。
今、夜中の1時だから来週の今ごろは汽車の中だね。
12月22日(月曜日)
ボーイに会いたい。
3ヵ月前のように楽しい時間を過ごしたい。
12月23日(火曜日)
もうすぐボーイに会える。
今もわたしのこと好きかしら。
長い間手紙書かなかったから怒ってるんじゃないかな。
那覇港に着く時間を知らせておかなくちゃ。
12月26日(金曜日)
銀行でドルに両替した。
100ドル、3万6千円。
日本円を1万9千円。
合計5万5千円。
足りるかな。
12月27日(土曜日)
仕事が終わって、夜10時14分の汽車で出発。
明日の朝、鹿児島に着く。
いよいよ沖縄旅行の始まりだ。
汽車の中で隣に座ったおじさんと話してたら明日の日曜日は選挙の日だって。
何の選挙だろう。
はたち過ぎて初めての選挙かな。
ミカちゃんにとっても初めての選挙だよね。
わたしたち選挙なんて全然わからない。
ごめんなさい。
12月28日(日曜日)
鹿児島港を出航する。
沖縄までほとんど1日かかるんだよ。
遠いんだな。
鹿児島ではこの冬初めての雪が降るくらい寒かったけど、沖縄に近づくにつれ少しずつ暑くなってきた。
タートルネックのセーターに厚手のツィードのパンタロンスーツを着ていたので、上着を脱ぎセーターをブラウスに替えた。
12月29日(月曜日)
沖縄の那覇港に着いた。
入国審査を受ける。
滞在は4日間ってなってるけどもっと長くいるよ。
途中で期間延長の手続きをしなくちゃ。
ボーイとトニーが迎えにきてくれてた。
コザのホテルにチェックイン。
アパートのように小さなホテル。
まわりの景色は日本と全然ちがう。
アメリカだ。
食事に行った。
フライドライスだって。 焼き飯かな。
ボーイたちのアパートにも行った。
夕方から米軍基地の中のクラブに行った。
普天間基地だって。
久しぶりにクルージャンのステージを見た。
クラブで働いてる日本人女性と友だちになった。
沖縄にいても日本人だよね。
どうなんだろう。 わかんないや。
クラブの仕事が終わってコザに帰る。
フィリピン料理のお店で食事をしてるとき何か音がして道路が騒がしくなった。
銃声だって。 ウソ〜。 本当に銃声なの。
そんなことあるの? ここアメリカだね。
本当にそんなことあるんだぁ。 怖いね。
12月30日(火曜日)
ボーイとトニーが迎えにきた。
どこかへタクシーで向かってるとき、見たこともないような景色。
本やテレビで見たかな。
戦後の日本のような荒れた空き地。
信じられない。
わたしもミカもだまって外の景色を見てた。
今日は東京からラニーの彼女が着くんだって。
飛行機で来るのよ。 お金持ちだな。 わたしたちは船だったもんね。
夜、ラニーの彼女のユキさんとボーイたちの出演しているクラブに行った。
入り口でわたしだけ止められた。
「ID見せて。 21歳未満は入れないよ」と大きな黒人の男の人に言われた。
「21歳です」とわたしは言って身分証明書(パスポート)を見せた。
「21歳?」と言って驚いてた。
いくらわたしが子供っぽいからって、びっくりしなくてもいいでしょ。
それよりもミカちゃんはまだはたちなんだよ。
それなのに止められない。
若く見られるわたしって得なの? それとも損なの?
アメリカは21歳からが大人なんだね。
ユキさん、26歳だって。
英語ペラペラなの。
ステキな大人。 カッコいいな。
クラブを出てみんなでボーイたちのアパートに行って泊まった。
ミカちゃんはどうだったか知らないけど、わたしはボーイと寝た。
後悔してない。
12月31日(水曜日)
ボーイ、わたしのおなかさわって「ベイビーさん、ベイビーさん」って言うの。
恥ずかしいよ。
それにベイビーさんいたら困るよ。
心配になってきちゃった。
1月5日までの滞在期間の延長をしてきた。
タクシーの中でボーイの吸ってたタバコを吸った。
なんだかちがう味。 何、このタバコ。 マリファナ?
なんとなくそんな感じがする。
「これ、マリファナかもしれない。 最近、ドラッグやってるミュージシャンって多いよね」とミカに言った。
ミカも吸ってみた。
「うん、マリファナかもしれない」と言ってタバコをボーイに返した。
わたしたちの会話を聞いて、ところどころに聞こえる英語の言葉で何を話してるのかボーイとトニーはわかったみたいだった。
夜、すごく大きな星のイルミネーションを見た。
今はクリスマスの飾りつけをしてるからかなと思ったらオリオンビールっていう会社だった。
今日は大晦日。
米軍基地のクラブでボーイは《Honey》を歌ってくれた。
そして《蛍の光》の演奏が始まったらドラムは叩かずにわたしとフロアーで踊った。
演奏が終わりみんなでカウントダウン。
12時。 みんながいっせいにクラッカーを鳴らし「Happy New Year !」と言ってまわりの人とキスしてまわった。
わたしとボーイもキスをした。
アメリカのお正月はにぎやかに始まるのね。
紅白歌合戦も除夜の鐘もないけどこんな年越しもいいな。