lrlgglrelg

2012/7/23 | 投稿者: glrlれ


 私は理屈から出たとも統計から来たとも知れない、この陳腐
ちんぷ
なような母の言葉を黙然
もくねん
と聞いていた。



 私
わたくし
のために赤い飯
めし
を炊

いて客をするという相談が父と母の間に起った。私は帰った当日から、あるいはこんな事になるだろうと思って、心のうちで暗
あん
にそれを恐れていた。私はすぐ断わった。
「あんまり仰山
ぎょうさん
な事は止

してください」
 私は田舎
いなか
の客が嫌いだった。飲んだり食ったりするのを、最後の目的としてやって来る彼らは、何か事があれば好

いといった風
ふう
の人ばかり揃
そろ
っていた。私は子供の時から彼らの席に侍

するのを心苦しく感じていた。まして自分のために彼らが来るとなると、私の苦痛はいっそう甚
はなはだ
しいように想像された。しかし私は父や母の手前、あんな野鄙
やひ
な人を集めて騒ぐのは止せともいいかねた。それで私はただあまり仰山だからとばかり主張した。
「仰山仰山とおいいだが、些
ちっ
とも仰山じゃないよ。生涯に二度とある事じゃないんだからね、お客ぐらいするのは当り前だよ。そう遠慮をお為

でない」
 母は私が大学を卒業したのを、ちょうど嫁でも貰
もら
ったと同じ程度に、重く見ているらしかった。
「呼ばなくっても好

いが、呼ばないとまた何とかいうから」
 これは父の言葉であった。父は彼らの陰口を気にしていた。実際彼らはこんな場合に、自分たちの予期通りにならないと、すぐ何とかいいたがる人々であった。
「東京と違って田舎は蒼蠅
うるさ
いからね」
 父はこうもいった。
「お父さんの顔もあるんだから」と母がまた付け加えた。
 私は我

を張る訳にも行かなかった。どうでも二人の都合の好

いようにしたらと思い出した。
「つまり私のためなら、止

して下さいというだけなんです。陰で何かいわれるのが厭
いや
だからというご主意
しゅい
なら、そりゃまた別です。あなたがたに不利益な事を私が強いて主張したって仕方がありません」
「そう理屈をいわれると困る」
 父は苦い顔をした。
「何もお前のためにするんじゃないとお父さんがおっしゃるんじゃないけれども、お前だって世間への義理ぐらいは知っているだろう」
 母はこうなると女だけにしどろもどろな事をいった。その代り口数からいうと、父と私を二人寄せてもなかなか敵
かな
うどころではなかった。
「学問をさせると人間がとかく理屈っぽくなっていけない」
 父はただこれだけしかいわなかった。しかし私はこの簡単な一句のうちに、父が平生
へいぜい
から私に対してもっている不平の全体を見た。私はその時自分の言葉使いの角張
かどば
ったところに気が付かずに、父の不平の方ばかりを無理のように思った。
 父はその夜

また気を更

えて、客を呼ぶなら何日
いつ
にするかと私の都
0



コメントを書く

名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL





AutoPage最新お知らせ