2006/9/13

漁業権問題集中講座A「開業規制」  釣りのマナーとルール
 

「密漁」。
よく耳にする言葉である。
しかし、この言葉はあくまで俗語であって、法令上の用語ではない。
また、実際、その定義が明確にされないまま、さまざまな意味において使用されているようにも思われる。

漁業法その他の漁業関連法令上、漁業には、都道府県知事の「免許」を受けて営むべき「免許漁業(漁業権漁業)」、農林水産大臣または都道府県知事の「許可」を受けて営むべき「許可漁業」、そして免許または許可を要しない「自由漁業」がある(注1)。
これらの「免許」または「許可」を受けずして、あるいは「免許」または「許可」の内容に違反して操業した者には、法令に定める罰則が適用される。(漁業法第138条:3年以下の懲役または200万円以下の罰金。)
一般に「密漁」というときは、このような無免許・無許可の漁業の操業を指すことが多い。

ここで、「漁業」とは、漁業法第2条によれば、「水産動植物の採捕又は養殖の『事業』をいう」と定義されている。
「事業」とは、営利の目的をもって一定の行為を継続的に行うことであるから、レクリエーションとして行う「遊漁」(釣りを含む)はこれに該当しない。
従って、「遊漁者」の行為が上記のような意味での「密漁」にあたることは原則としてないはずである。

しかし、例えば次のようなケースはどうだろう。
「○○管区海上保安本部は、プレジャーボートで磯に乗り付けサザエを採取していた自営業者山田一郎(仮名)45歳ほか3名を発見し検挙した。犯人はサザエ約100個を所持していた。」
この場合、一見すると、「遊漁者」が検挙されたかのようにも見える。
この「山田一郎45歳ほか3名」は一体なぜ検挙されたのか。

考えられる理由はいくつかあり、それは追って説明することとするが(注2)、そのひとつとして、彼らの行為がやはり「漁業そのものであった」という場合があげられる。
すなわち、このような行為を継続的に行い、最終的に何らかの利益を得ていた(たとえば獲物を業者に売却して現金化していた)というケースである。
そこに営利性、事業性が認められれば、彼らの行為は無免許・無許可の漁業の操業、すなわち「密漁」にあたることとなる。

このような事業性が認定されるのは、必ずしも獲物を流通ルートで売却して現金化する場合に限らない。
例えば飲食店や宿泊施設の経営者ないし従業員が、自分の店で客に提供する目的で水産動植物を継続的に採捕していた場合であって、かかる行為と飲食店等の経営が不可分一体のものとみなされるような場合には、営利性が認められ、「事業」に該当する蓋然性が高いと思われる。
また、直接的な金品の授受が無くても、例えば知り合いの飲み屋に持ち込んでその見返りに自分の飲み代をタダにしてもらう行為を繰り返したていたような場合などは、営利性が認定される可能性を否定できない。
直接・間接を問わず何らかの利益を得ることを目的として水産動植物を採捕する限り、漁業法の適用を受ける可能性はあると考えるべきである。

それでは、営利を目的としない純粋なレクリエーションとしての「遊漁」であれば法に抵触することはないのかというと、決してそうではない。
「その日の晩酌のつまみに食べる分を獲ったくらいでは、密漁にならない」という俗説(?)を聞いたことのある方も多いと思われるが、それは上記のような意味での密漁にはあたらないという点で正しいものの、そのまま鵜呑みにしてはいけない。

ここから少々話がややこしくなる。


〜つづく〜
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・・・・・・・・・・・・・・
(注1)
ここでいう「免許」とは漁業権の付与を意味し、「許可」とは原則行ってはならない漁業についてその禁止を解除することを意味する。

(注2)
実際に密漁行為で摘発されている事例を見ると、無免許・無許可の漁業の操業のみにとどまらず、後に述べる漁業調整規則上の漁具漁法の制限に係る違反(たとえば潜水器を使用して貝を獲る等の行為)を伴うなど、ひとつの行為が複数の罪名に触れる(「観念的競合」という)ケースが多いようである(第8講参照)。このような場合には、刑法54条により最も量刑の重い罪が適用されることになる。


     


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