2006/9/7

漁業権問題集中講座G「参考:漁業権侵害に係る裁判例(1)」  釣りのマナーとルール
  

(1)所謂「密漁行為」に関する裁判例(刑事)

○平成14年12月26日函館地裁判決(漁業法違反等被告事件)

<事案の概要>
漁業協同組合の組合員ではなく、漁業行使権を有しない被告人7人が共謀の上、潜水機を使用してうに7222個、あわび51個、たこ3尾等を採捕し、漁業協同組合の漁業権を侵害するとともに、無許可で潜水器漁業を営み、さらに「うに」については、漁業調整規則により採捕が禁止されている期間及びその区域内においてこれを採捕した事案。

<判決要旨>
判決は、「本件密漁は、被告人Aをリーダーとした職業的密漁グループにより敢行されたものであり、密漁に必要な道具を揃え、潜り役、見張り役など各人の役割分担の上でなされた組織的犯行であって、その犯行態様は極めて悪質である。被告人らが採捕した海産物は、うに合計7222個(約945.25s)など極めて多量であり、本件密漁が漁業関係者に与えた打撃は甚大なものがある。」としたうえで、グループのリーダー格であるAについては、「生活費や遊興費を得るために、組織的なうにやあわびの密漁を反復して行っており」、「密漁グループのリーダーとして、密漁の日時場所・対象を決めて、仲間を集合させて密漁を繰り返してきた。密漁の際には自ら潜り役を担当してきた。密漁後は、採捕した海産物を売却して得た利益を仲間に分配している。本件においても同様である。」「してみれば、同被告の責任は、本件密漁グループの中で最も重大であるといわなければならない。」として、以下の罰条を適用し、被告人Aについて懲役刑を言い渡した。

・漁業権の侵害の罪 漁業法143条1項
・潜水器漁業を営んだ罪 北海道海面漁業調整規則55条1項1号、5条26号
・採捕が禁止されている機関及びその区域内でうにを採捕した罪 北海道海面漁業調整規則55条1項1号、39条1項
(科刑上一罪の処理(刑法54条1項)により、潜水器漁業を営んだ罪の刑で処断。)


○平成11年3月30日青森地裁判決(漁業法違反等被告事件)

<事案の概要>
漁業協同組合の組合員ではなく、漁業行使権を有しない被告人が、漁協組合員がしじみの畜養および採捕等の事業を営むしじみ畜養場において、夜間、6名の作業員を動員して、「じょれん」を用いて湖底を掻き起し、しじみ約38sを採捕した事案。
しじみ畜養場とは、漁協が設定した場所内で個々の組合員の場所が決められ、その場所で組合員が管理を任されてシジミを畜養し、採捕の時期等に制限を受けずにシジミを採ることのできる場所であるところ、上記密漁の事実を認識した組合員某は、被告人に密漁されたその場所で漁を実施しても成果が望めないと判断し、予定していたしじみ漁を断念した。

<判決要旨>
判決は、上記事実認定の上で、「組合員が営むしじみ漁は、組合員の職業であるから、業務妨害罪の保護の対象となる「業務」に該当することは明らかであり、被告人がしじみを密漁したのは、密漁によって利益を得るのが主たる目的であったとしても、被告人は、密漁により組合員の業務を妨害するおそれのある状態が生じることの認識は有していたのであるから、被告人の本件犯行によって、組合員に対し、予定していたシジミ漁を断念させた行為は業務妨害罪の構成要件に該当するというべきである」として、以下の罰条を適用し、被告人に懲役刑を言い渡した。

・漁業権の侵害の罪 漁業法143条1項
・偽計業務妨害罪 刑法233条
(科刑上一罪の処理(刑法54条1項)により、業務妨害罪の刑で処断。)


・・・・・・・・・・・・・・・
<解説>

上記の裁判例はいずれも、一つの行為が複数の犯罪に該当(観念的競合という)する事案であり、「科刑上一罪」の処理により、最も重い罪名が適用された。
上記函館地裁の事案において、漁業権侵害の罪については、判決文のみからはその事実が必ずしも立証されていないようにも見受けられるが、より刑の重い潜水器漁業を営んだ罪に該当することが明らかであったために、あえて詳述されなかったのではないかと思われる。

上記青森地裁の例は、被告人が組合員の漁業の操業を妨害した行為が、刑法上の偽計業務妨害罪に当たるとされた事案であるが、業務妨害罪の構成要件は「他人の業務を妨害した」ことであるから、損害の発生まで立証する必要はないと考えられる。
本事案では、組合員に「予定していたしじみ漁を断念」させたことが妨害に当たるとしている。


   


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