2008/4/27
久しぶりに、金井美恵子の文章を読む。むさぼり読む。
本屋の新刊書籍コーナーで珍しく彼女の文庫本が並べられていて
帯の「今、最も新しい小説論!」というキャッチ・コピーに
ええっ、病気療養中との噂だったのに、先生密かに批評本を書いていたのか
と思ってよくよく見たら、1987年に岩波書店から出た本の文庫化だった。
20年ぶりに金井美恵子のかっての文芸批評が日の目をみたということは、
めでたいことなのだけれど、朝日のこの「最も新しい」というコピーは
確信犯的なものなのだろうか。
このところの金井美恵子の評論といえば、
やはり朝日から出されている『目白雑録(ひびのあれこれ)』で、
これは朝日新聞社発行の『一冊の本』の連載エッセーをまとめたものだから
「目白雑録」休載で本を出せないのでこのままでは契約が不履行になりそうだ、
だから、この昔の評論集に肩代わりさせることでご勘弁ということだったのだろうか。
これは、昔よくあったことなのだが、解散してしまったロックグループが
レコード会社との契約を履行するためにライブアルバムのリリースで当座をしのぐ、
といったようなことなのだ。たぶん。
最近の金井美恵子情報といえば、評論家の小谷野敦のブログで、
それは、金井先生が元気の無いことをお書きになっていて、
ここはちょっと頑張ってほしいという、激励の内容だったのだが、
それも、『一冊の本』に書かれていた彼女の文章を小谷野氏が読んでのものだった。
ナボコフの『文学講義』やバルトの『テクストの快楽』からはじまって
両性具有的な読む「私」だとか、「読んだから書くのだ」だとか
とくに、フローベールや谷崎の『細雪』からはじまって折口信夫や泉鏡花にいたる
聴覚的・触覚的なテクスト感覚にまつわる和と洋における差異を浮き彫りにする
「音と声のシンフォニー」なんか、非常にスリリングで面白い。
素晴らしき書き手はやはり素晴らしき読み手でもあるということなのです。
20年ぶりなのに内容的には全然古くなどなっていないと思う。
一方で、あとがきにも書かれていることなのだが、
この当時、中上健次はまだ生きていたのだった。
このあとがきも口実筆記のような感じなので、
自分で書くことが出来ないくらいの様態なのかと心配だ。
金井美恵子の一ファンとしては、ほんとうに、ご自愛くださいというほかない。
ああ、それにしても『噂の娘』の続編が読みたい。
右:単行本 1987.10.30発行 岩波書店「作家の方法」シリーズの一冊
左:文庫本 2008.4.30発行 朝日文庫
文庫本では、最近紀伊国屋書店が文庫本復刊フェアで金井美恵子の『恋愛太平記』集英社文庫を復刊しています。フェアは終わっているけれど、ネットではまだ取り寄せが出来るようです。買いそびれていた文庫なので早速注文しました。通勤の電車の中で読むのが楽しみです。
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