兵庫県の本格的なよさこいの一年は、五月の連休中の「踊っこまつり」から始まります。改めて「新一年の始まり」を予感させる、四カ月遅れのお正月、といった感じですね。
今回は総論から始めたいと思います。
踊っこまつりは二つの部門があり、加古川や東播磨にまつわる楽曲を使う前提の「踊っこ部門」と、ソーランやエイサーもOKな「自由部門」とが設定されています。「踊っこ部門」が大賞・準大賞、「自由部門」が金賞・銀賞という賞が設定されているのを見ても、このお祭りが基本的には高知のよさこい祭りを意識していることがわかると思います。それぞれ、兵庫県知事賞・加古川市長賞などが続くわけですが、厳密に上から何番目ということはアナウンスされない形です(HPには、審査基準の点数順に大賞〜県知事賞・金賞〜教育長賞というのが説明されていますが、後付けだと思います)。
この踊っこまつりの賞の注目すべき点は、踊っこ部門の大賞を、2005年からの四年間、加古川市の「麗舞」というチームがとってきている、ということです。大賞の名に見合うだけの人気と実力とを兼ね備えていることは言を待ちませんが、連覇が続けば続くほど、しらけムードを持ったチームが増えてきていたのも事実でした。賞の発表の前に、「(大賞は)最初から決まってる」と帰り支度を始めるチームも散見されましたしね。それが、今年は大変動がありました。大賞・準大賞の前に兵庫県知事賞の発表がありましたが、この時に「麗舞」の名が呼ばれたんです。
結果として、昨年の兵庫県知事賞受賞チームと大賞受賞チームとが入れ替わった形になりました。つまり、同市の「踊っこひおか」さんが大賞、二年連続準大賞だった同市「舞ええ華」が三年連続に記録を伸ばし、「麗舞」が兵庫県知事賞に。この三チームにもう一チームが加わってこの数年の上位争いがあったわけですが、昨年にそのチームが出場を断念し、事実上の「三つ巴」になっていたんです。順番が変わっただけと言えばそうですし、それだけじゃないということもできる微妙で大きな変動だったと思います。
今年の「踊っこひおか」さんの演舞で際立っていたところは、スピード、と思います。チームのメンバーの一体感は上位三チームがいずれも高いレベルで実現できていて、振付のキレとかフォーメーション変化の速さで一歩先を行った‥‥という印象です。準大賞の「舞ええ華」は、人数がやや少ない点もあって、演舞の密度で劣ったのは否めません。コンセプトは上手に組み立てられ、楽曲の作曲者と振り付け師が同じチームの出身(現役「麗舞」メンバーと、OG)ということもあって、よくまとまった好感の持てる演舞でした。兵庫県知事賞の「麗舞」は、キレに関しては申し分ないものの、旗以外の男性の踊り子が女性陣の中に埋没してしまい、昨年グイグイとチームを引っ張っていたパワフルな踊り子の魅力が半減してしまっていたことが残念でしたね。「航海」をモチーフにしたらしいですが、ややボンヤリした表現になっていたように感じられ、煽り手が昨年までの青年とは交替していたこともあって、例年のような絶対的な迫力を感じるまでには至りませんでした。もちろん、それは終わってみてからの感想であって、十分に綺麗でしっかりとした演舞だったことに違いはありませんけども。振付のキレなら「麗舞」とも好勝負だと思います。コンセプトワークのうまさは「舞ええ華」と甲乙つけがたいでしょう。メンバーの一体感は、昨年のグルーヴ感がやや薄れた「麗舞」以上で、何年も同じ仲間と一緒に続けているという「舞ええ華」とも互角以上だったのではないでしょうか。人数はおそらく「麗舞」と同じくらいの約四十名で、三十人強の「舞ええ華」を少し上回った感じ。ステージ上の密度も、客席から見る限りは「踊っこひおか」「麗舞」が拮抗しているような印象でした。あくまで印象論でしかないのですが、この三チームが素晴らしい高いレベルで争えているのがよくわかるお祭りだったのは間違いないです。
例年、審査に不満の声の上がるお祭りではありました。泣き出す踊り子に会ったのも再三です。今年はそれが影を潜め、おおむね好感をもって迎えられていたように思います。何より、十回中八回の大賞受賞という「麗舞」のあり方に疑問を感じる人が少なくはなく、このお祭りに少なからぬ影をさしていたのではないでしょうか。実力を伴っていても、一面では熱狂的に支持されながら、他方では批判も多かったという、非常にそんなチームだとは思いますね。その「麗舞」の九回目の大賞獲得に待ったをかけた三チーム目が、同じく十一回連続の参加で県知事賞三回・準大賞一回の受賞歴を持つライバル「踊っこひおか」であったというのは、出来すぎですが劇的なラストシーンでした。
不十分な文章ですが、次回、見ることのできた幾つかのチームの演舞について書いてみたいと思います。
文責:ZERO

8