2014/4/13

ハクビシンの話し(4)  ハクビシン

 ミカンの収穫が始まるととんでもないほど忙しくなります.毎日,15人前後のアルバイトの人に手伝ってもらって,1日に1t以上のミカンを収穫して山から降ろします.それが1ヶ月あまり続きます.その収穫が始まって間もなく仕掛けてあった箱ワナにハクビシンが入っていました.そのハクビシンを見るなり,取材の約束を思い出したのです.携帯電話には連絡先が入っています.どうしよう,忙しいのだが約束だし,電話しようか,黙っていようかともんもんとしながらとりあえずハクビシンの入った箱ワナを駐車している車の近くまで運び降ろしました.

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 突然,携帯電話が鳴りだしました.発信者をみると何という事でしょう.カメラマンさんなのでした.
 捕まえたハクビシンを目の前にしながらウソが言えるほど私は心臓が丈夫にできていないため,白状じゃなかった,えーと自供でもなかった,そう正直に捕まえてしまいましたと告白したのでした.
 「明後日までおいておけるでしょうか」と聞かれました.何と今,西表島に居るのだというのです.日本の南の果て,台湾のお隣ではないですか.琉球イノシシの取材で来ているのだが明日は帰るのであさってなら高知に行く事ができると言います.そうとうエネルギッシュというか行動力のある方のようです.
 取材の内容というのはこういうことでした.
 捕まえた現場の撮影,被害状況,処理の現場,料理をするところ,食べるところまでと,全てを取材したいというのです.ハクビシンといえば,捕まったその場の檻の中でも与える餌は一応食べるのですが,明後日までの間になにがあるかわかりません.ハクビシンの被害はミカン園のあっちこちで沢山出ています.これからも何匹も捕まえられそうです.そこで,すぐに高知に来られるときに取材に来てくれるようにと今回はお断りをしました.
 それから一週間あまりしてから,またハクビシンが捕れました.

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 食い散らかしたミカンの皮の中で「やりすぎたか」と少し反省しているかの
ような感じもするハクビシン.


 今度はこちらから約束どうり連絡しました.「行きます,すぐに車で埼玉の家をでて明日は高知に着きます」といいます.本当に腰が軽い行動力のある方です.まあ,猟ごとの取材となれば,すぐに動くか,長期泊まり込み取材でもしないかぎり無理でしょう.獲物が多くいても獲れる獲れないはまったくわかりません.私は同じ獲物をしつこく狙い続けますので,やがていつか獲れるという確率は高い方だと思っていますが,獲れる日がいつになることやら全く見当がつきません.
 翌日,カメラマンが到着しました.取材道具だけ持ってもらって,私の軽トラの助手席に乗りかえて山へ向かいました.
 ハクビシンとご対面を果たし,何カットも写真を写しました.
 ミカン畑の被害状況や他のトラップも見たいとのご希望でしたので案内をしました.動き回って疲れたころ,ミカン畑に座り込んで今度は聞き取り取材が始まりました.取材といっても一方的に聞き取りをされるのではなく,日本の南端から北の果てまでの狩猟の取材の話しも聞かせていただき楽しい時間でした.
 そのはなしの中ででてきたのです.タヌキを食べるはなしです.
 ああ,やっとタヌキまで到着しました.ここまで読んでいただいてお疲れさまでした.
 カメラマンさんは,九州で取材していて,タヌキは臭くないタヌキも居るそうだと聞いたといいます.

 なに!

 タヌキを食べる,これは「かちかち山」という昔話(室町時代〜)」にもでてきます.また,1718年創業の東京は両国にある老舗の獣肉専門店「ももんじや」というお店でもタヌキ汁が食べられるそうです.「ももんじや」で食べた感想を東海林さだおさんが書いていいるのを読んだことがあります.彼は「ももんじや」の「野獣肉コース」のなかから「猪鍋,鹿刺し,タヌキ汁,猪佃煮:六千円」を食べるのです.少し引用してみます.
 『さて問題の狸汁.
 狸汁,という字づらは,見ただけでもなにやら不気味な様相を呈しているが,これが意外にも上品な様相を呈していたのである.
 赤だし,豆腐,ゴボウ,ワケギといった料亭風雰囲気のお椀の中に,狸の小さな脂肪の塊が四粒ほど浮いている.肉の部分はない.
 この小さな脂肪を噛みしめると,意外にも手強い獣の臭気が立ちのぼってくる.すなわち,肉のほうはもっと手強いはずだ.とても汁の中には入れられない,ということだったのかもしれない.』
引用終わり.
 
 実は,私もタヌキを食べたことがあります.高知県ではタヌキは肉を食べるのではなく,脂が珍重されます.多くの人が(高知県では)まるで,万病に効くかのように話します.タヌキの脂は,塩漬けにして保存し,小さく切ってそのまま飲み込むとか,鍋に脂肪の塊を入れ熱して溶け出した油だけを瓶などに入れて,冷蔵庫で保存し,傷ややけどなどに塗る,または,少量飲むなどの方法で利用するようです.話しによると,あくまでも話しによるのですが,破傷風で医者に見放された患者がタヌキの脂を傷に塗り,また,飲用して完治した.とか,やけどに塗ってすぐに治った.とか.こうした話しはまだまだたくさんあります.
 身近にもこのタヌキの脂ファンが沢山いますので,それらの方に提供するため脂をとったことがあり,そのついでに食べたのです.
 脂をどうやって採ったかといいますと,冬タヌキを捕まえるとほとんどのタヌキが脂肪をたっぷり蓄えて丸々と太っています.先ず皮を剥ぎます.皮下脂肪がたっぷり付いています.ああ,そうでした,皮を剥ぐ前に止め刺しをします.生きたまま皮を剥ぐわけではありません.剥いだ皮についている脂肪をナイフでこそぎとります.そして,体中についている皮下脂肪を削ぎ取ります.ここまでです.内臓の周りにも脂肪はたっぷり付いているのですが,これの利用は無理です.腹を割った時点で顔をそむけます.良薬口に臭しとはいいません.
 こうして採集した脂肪を鍋に入れて,ガスコンロにかけ弱火で熱していきますと沢山の脂が油になりますので,これをガーゼでこして適当な瓶などに入れ,冷蔵庫で保存するわけです.

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冷蔵庫で保存中のタヌキの脂

 高知市の有名な薬局でもタヌキの脂を販売しています.お弁当によく使われる小さな醤油やソースの容器に入って何百円もするそうです.ただし,万病に効く万能薬と銘打って販売はしていません.こうすると薬事法違反で「御用だ」となりますので,食品として売っているそうです.
 さて,私はタヌキの脂は本当に,実際に,間違いなく効くのか?と問われますとだんまりです.う〜ん.とうなるだけです(本心は『鰯の頭』ぐらいの効能はあるだろう).

 こうして,あぶらをとったあとの残骸じゃなかった,お肉を食べてみたのです.元々私は,殺した動物はできるだけ利用すべきだという考えです.しかし,腹を開けた時点で食欲はすっかり失せていました.それでも好奇心というか,昔話にもタヌキ汁が出てくるほどだ.なので,美味しい?どうだかわからないがとにかく食べられるはずである.という理路整然とした判断のもとにタヌキの肉に挑んだわけです.ですが,内臓からできるだけ遠くに付いている部位だっけを食べてみることにしました.つまり,前足,後ろ足についているお肉を食べてみたのでした.料理法は大和煮風という感じでした.
 で,どうだった?美味しかったのか?美味しくなかったのか?と詰められると少し困るのですが,答えは「う〜ん」というところでしょうか.

これより青文字はウキペディアより引用

 日本における食用[編集]
日本におけるタヌキの料理法にたぬき汁がある。ただし、たぬき汁と称してコンニャク汁を指すこともある。
詳細は「たぬき汁」を参照
前述のように、古来日本ではタヌキとアナグマのことを混同して「むじな」と呼んでおり、文献上における「狸」「むじな」の料理が現代でいうところのタヌキ肉の料理かどうかは判断が難しい。
栃木県のある猟師が、キジ猟で偶然タヌキを獲ったので、老人にたぬき汁の作り方を聞いて作ってみたところ非常にまずく、翌日老人に文句を言ったところ、「これは『ムジナ(タヌキの事)』でねえか。たぬき汁は『タヌキ(アナグマの事)』の肉で作らんと、食えるわけねえべ」と言われた、という話もある。
アナグマはタヌキより美味とされ、ヨーロッパや中国でも、古くから食べられている。いわゆる「たぬき汁」は、特に美味なものとして伝えられる場合は、実はアナグマ汁である可能性が高い。『大草家料理書』という文献でも、「狸汁はむじな汁(アナグマ汁)の事」となっている[11]。
現代でいうところのタヌキの肉は非常に獣臭いため、そのままではとても食べられたものではない。臭みを消すためには、肉を稲ワラで包んで1週間ほど土中に埋め、さらに掘り出した肉を2時間ほど流水にさらす必要がある。古い文献でも、酒で煮たりショウガやニンニクを多用するなど臭みを抜く調理法が見られる。たぬき汁は臭みを消すため、味噌味にすることが多い[12]。
たぬきうどん、たぬきそばには、タヌキやアナグマの肉は使われていない。
 引用終わり

 とにかく,こういうように,とても臭いのです.匂いなどというような,なまやさしいモノでは決してありません.どうしてこれほど臭いのかといいますと,やはり,かれらの食性によるものだと考えます.
 食性について,ウキペディアでは下記のように書かれています.

 (青文字はウキペディアより引用)
 食性は雑食で、ネズミ、カエル、鳥類や卵、魚類、昆虫類等の小動物のほか、果実など植物質のものも食べる。木に登って柿やビワのような果実を食べたり、人家近くで生ゴミを漁ったりすることもある。
 (引用終わり)
 生ゴミ以外はまあ,野の獣としてはまっとうな普通の食べ物ですが,ここには抜けているモノがあります.それは,動物の死骸を徹底的に何日もかかって食べてしまうことです.それはそれはもう徹底していまして,ドロドロに溶けかかって見るのもたまらないような死骸でも最後まで食べてしまいます.私は捕まえて処理した,イノシシやシカ,ハクビシンなどの内臓や骨や皮は畑や田圃に深い穴を掘って埋めて処理をしていますが,埋めた後にトタンとかそういうもので覆い重しをしておかないかぎり,必ずタヌキが掘り起こして食べてしまいます.それも腐敗がかなりすすんで,臭気が穴の底から立ち上りだしたころから,狸が現れて掘り起こして食べるのです.今冬捕まえたハクビシンを料理したときに出たアラを,穴に埋め大きなプラスチックの桶(農薬を入れる600g入る桶)を被せて安心していました.一ヶ月ほどして気がつくと厚さ5ミリはありそうな桶に直径10aほどの穴を開けて全て食べてしまっていました.穴の周りにはハクビシンの毛がたくさん落ちていました.
 斯様な次第で,九州のタヌキは食性が違うものがいるとは思えません.ですので,やはりタヌキはどんなタヌキでも臭いのではないかと思うのです.カメラマンさんは,九州での,臭くないタヌキがいるという話しはベテランの猟師から聞いたので,タヌキとアナグマを間違えるはずはないと思われる.だから,どうやら臭くないタヌキはいるのではないかと思っているということでしたので,私はそれは驚きました.と,応えたことでした.
 しかし,やはり,ウキペディアでも書かれているように,アナグマをタヌキを呼ぶ地方は多いようですので,こうしたことから臭くないタヌキの話しがでてきたのであろうと,私は考える次第です.

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    ミカンを盗み食いしにきたのを捕まえた

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 情けなさそうな顔をして「喰っても旨くないですよ」
 
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