私の家の階段を上がった所に優作さんのポスターが飾ってある。私の家に遊びに来た人達は、一度は目にしたことがあると思う。...なぜか?それは私が優作さんを好きだからである。
当然、面識など一度もない。しかし、私がまだ高校生だった頃「狼の紋章」という映画を見た時から、何か不思議なものをこの人物から感じた。自分自身もまだ生意気な頃だった。
その後、「太陽にほえろ」のオーディションに合格、Gパン刑事でTVに登場した。殉職のシーンで「死にたくないよ〜」とアドリブでセリフを変え、人間本来の本音を吐いた。目的がある人は、誰もが死にたくないものである。
「俺たちの勲章」では、伊良湖の恋路が浜とサイクリングロード、フェリー乗り場でロケがあるとの情報を知り、見に行った。がしかし、撮影のスタッフの人達は来ていたが、本人はその日のロケに来れなくなったらしく、結局優作さんの姿を見ることはできなかった。
その作品を後にTVで見て「あ!あの場所を走ってる!!」と見覚えのある景色に親しみを感じたりした。
映画「人間の証明」のセリフで、「母さん、あの僕の麦わら帽子、どこへ行ったんでしょうね」は、過ぎ去った昔を想う、切なさが今も深く私の心に残っている。
「探偵物語」では、ハード・コメディ役の工藤チャンを見事に演じ、当時の若者を釘付けにした。
「野獣・死すべし」では、役になりきるため、体重を10kg落とし、奥歯を4本抜いた。
遺作となる「ブラック・レイン」では、大腸ガンと告知を受けながら作品を作り上げた。死を覚悟した気迫を、この作品の所々に見ることができる。後にこの作品を見たロバート・デニーロから出演のオファーがあり、もし生存していたら二人の作品を見ることが出来たかもしれないのは、とても残念であるが、また見れなかったところが松田優作なのかも知れない。
役者魂という言葉があり、サムライ(武士)とは、優作さんの事を言うのかも。
生前、奥様の美由紀さんに託した言葉があり、それが優作さんの墓石に彫られている。それは「空」の一文字。
私は優作さんが亡くなった年(40歳)を過ぎてしまったが、優作さんは、太陽が西に沈む時、いつまでも赤く光をはなっているような色に違いないと思う。
私にとって、松田優作は永遠のヒーローであり、憧れである。
FIN


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