漁業研修生として、2年間、弟子入りさせて頂いた親方の船・西本丸が解体される日が来た。
研修時代の苦楽を共にした船だけに、姿形がなくなるのはツライです。昨年の現役引退から、船の売却をかけていましたが、買い手が見つかりませんでした。
大型クレーン車で船を海から吊り上げて、その後、使える部品を取り除き、いよいよ解体作業が始まります。
船の痛々しい姿をみるのが嫌だったので、帰ろうと振り返ると、親方がすでに歩き出していた。
船の神棚を大事に抱えた親方の背中が小さく見えた。
二人で賀露神社に神棚を返しに行った。
普段、やかましいぐらいにモガル(怒鳴るの意味)親方が
さすがに今日ばかりは言葉が少ない。
船の想いを断ち切る様に、普段、話した事がない世間話なんか話しだすし、その不器用さが泣けてくる。
二人手を合わして、最期の儀式。
虚しく響く柏手(かしわで)二つ。
今日も賀露は風が強い。

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