2017/12/11  9:45

「神童」  エッセイ

「神童」

とある駅でドアが開くと、お揃いのユニフォーム姿の女子中学生たちがドッと入って着た。皆、カバーに「バドミントン」と英語で書かれたラケットを持っている。

吊革につかまり。ハニカミながら小声で話し合う彼女らを眺めていると、一人と目が合った。その途端、私の体内に、温かい慈悲と優しさが染み渡っていった。

「観音様だ」と直感した。彼女にもご家族にも自覚症状はないであろう。しかし、ご先祖が信仰された観音様の魂は、子孫である彼女の身体にしっかりと宿っているに違いなかった。

全国各地に、「ある日遊行僧がやって来て、多くの子供の中から神童を見出し、時に、連れ帰って自らの弟子とした」という話が残る。私自身、これほど慈悲深く喜びに満ちた子供に、出会った事があっただろうか。

心の中で、「どうか、この子が正しく仏道修行に導かれ、自らの先祖代々と子々孫々を救い、やがては、この混迷の世と衆生を照らす灯火となっていかれますように」と祈りを込めた。

数駅の間、彼女は私の前で蝶の如くに舞うと、皆と一緒に出て行った。私の心の中に、喜びと希望を残して。
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