楽天が通信網を持つ携帯電話会社を作るという報道があり、報道されている内容について素人なりに検討してみましたが、準備すると報道されている6000億円程度では、サービスを全国的に展開するためには、かなり厳しいような感じがします。携帯電話用のネットワークを構成する場合、当然のことながら基地局が必要です。基地局と接続できる範囲は500m程度のようで、逆に言えば通信品質を確保するためには、1Km程度の間隔で基地局を設ける必要があります。接続可能距離は当然のことながら一定ではなく、郊外であれば距離は伸びるはずで、逆に市街地ではビルなどの影響で、距離が短くなります。また、基地局からは有線というか光ケーブルで接続されると思われますが、10〜20程度の基地局を集約するサテライト局ともいえる局というか設備が必要になります。当然のことながら基地局からのデータは常にあるわけではなく、一般的に必要なデータ容量は、基地局の最大データ量の1割以下程度のはずで、簡単に言えば基地局10に対してサテライト局から送受信するデータ量は、1つの基地局並みで済むことになります。
ネットワークとしてはサテライト局だけではなく、他社の回線と接続するゲートウェイと呼ばれる機能を持ったハブ局ともいえる局が必要となります。ハブ局をどの程度設けるかによって必要設備額は異なりますが、現在は光ケーブルでの接続であり、光ケーブルでのデータ転送可能距離は100Km以上はあるはずなので、サテライト局とハブ局間の距離はほとんど問題になりません。尚、サテライト局は単なる集線装置みたいなものなので無人でも問題ないはずですが、ハブ局では加入者登録やサービス内容の変更などの処理や、ゲートウェイ交換機の監視などが必要なことから、それなりの技術者と管理要員が必要ですが、これらの技術者や管理要員の募集も問題になりそうな気がします。5,6年前であればメーカ側にもある程度の技術者がいたものの、現在はハブ局増設等の新規案件がほとんどないため、メーカ側にも該当の技術者は少ないはずで、簡単に募集可能とは思えません。また、NTTにしてもここ10年ほどで余剰的な人員はほとんど削減していると思われることから、NTTからの引き抜きも難しいような気がします。
新しいネットワークを作るということは、技術者にとってかなり魅力的な話ですが、現在の携帯電話の状況はどちらかというと成熟産業で、大きく伸びる余地はなさそうな気がします。従って、楽天の携帯電話会社に転職したとしても先の見通しが明るいわけではなく、通信系の技術者にとって、大きな魅力があるとは感じられません。総額6000億円で基地局を2000億円ほどで整備するという話ですが、もしかしたら首都圏だけを先行するつもりなのかもしれません。首都圏の通信データ量は全国の4割程度という話もあり、まずは首都圏で基地局とネットワークを整備し、上手くいけば全国に展開するという考え方もあります、日本の携帯電話の契約数が1億5千万近い現状において、新しい携帯電話会社が顧客を獲得するのはかなり厳しいと見ます。ソフトバンクが携帯電話会社を買収した頃は、高齢者で携帯電話を持っている人は少なく、加入者が伸びる余地はかなりあったようですが、現在はほとんどの人が携帯電話を持っており、しかも家族割り的な割引きがあることから、新しく中学生になった子供でも、親と同じ会社と契約することが多いと思われます。これらのことを考えると、上手くネットワークを構成出来たとしても加入者を増やすことはかなり困難で、投資額を回収するのは無理のような気がします。まあ、こちらは全くの他人(?)なので、楽天のお手並み拝見、という感じで見させてもらうつもりです。

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