
ブログを始めてから身の回りの小さな出来事や考えたことをネタとして覚えておくようになった。頭のちょっとした運動だ。
私の今の仕事先ではJ−WAVEがかかっているのだが、ラジオDJも身の回りのちょっとしたネタを探している職種なのかもしれない。
本日はアストラット・ジルベルトの「アクア・ジベベール(おいしい水)」がかかっていた。この曲はアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲で沢山のアーティストがカバーしているが、私はアストラットのヴァージョンが一番好きだ。
アストラットは22の秋、ちょうど狛江に劇団事務所を借りた当初によく聴いた。まだ家具も何もなくがらんとした部屋の中で濡れそぼつ秋雨を眺めながら…。
アストラットは究極のヘタウマだ。もともとはジョアン・ジルベルトの奥さんで英語教師をやっていたらしいがアメリカのジャズマン、スタン・ゲッツがJ・ジルベルトと組んで製作したアルバム「ゲッツ&ジルベルト」でただ英語が喋れるという理由だけでボーカルに抜擢された。その曲がボサノバの名曲「イパネマの娘」だ。
アストラットはこの曲の大ヒットで皮肉にも旦那さん以上に人気が出てしまい、その結果夫婦仲がうまくいかなくなって離婚してしまう。
寂しげでアンニュイですっとぼけたアストラットの歌声は、始めたばかりの一人暮らしの侘しさに妙にマッチしていたし、吸い始めたばかりの煙草のほろ苦い味も不思議と甘く感じられた。
本日の一曲 アストラット・ジルベルト「アクア・ジベベール(おいしい水)」

0