夕べは十時に寝たために朝5時に目を覚ます。時差ボケはもうない。清々しい目覚め。
青さんのお宅はテムズ川沿いにあり、私たちが間借りしている二階の部屋の窓からも川が見える。
ロンドン一日目の今日はとりあえずテムズ川沿いを行けるところまで歩いてみようということになった。
朝、9時にチェズウィックを出発。テムズ川は有名だがはっきり言って河原は汚い。足がぬかるむので河原沿いの道から一本隔てた通りを延々と歩く。
ロンドンの建物はほとんどが19世紀のビクトリア時代に建てられたものだ。「古い町並みを自分たちのアイデンティティとして後世にずっと残す」というこの国のコンセプトがはっきりしていて気持ちがいい。実際古い景観を温存して観光収入を増やすというのはイギリス政府の方針らしく家を壊す許可がなかなか降りないらしい。それどころか木を一本切るのにも行政の許可がいるらしく、切っちゃいけないと判断された木がそのまま家の中に生えているなんてこともザラにあるという。なんというかそこまで行くと極端だと思うぞ、イギリス人!
それにしても一応郊外とはいえ「本当にここはロンドンか?」と疑いたくなるほど街に人気がない。交通量も物凄く少ない。たまにペンキ塗りのおっちゃんが梯子に上っているのが見えるだけ(何だかCMみたいな画だった)。
しばらく行くとハマースミス橋に差し掛かりテムズ川を渡る。橋の途中に文字板があり橋の由来でも書かれているのかと思ったら「1916年、南アフリカの男性が女性を助けるためここから川に飛び込んで命を落とした」と書かれてあった。
ハマースミス駅のあたりから多少街も栄えてきたがそれでも人も車もまばらなもの。やはり建物は昔建てられたものばかりでその中に企業や商店のテナントが入っているという感じ。イギリス人はとにかく栄光のビクトリア時代に対する以上な郷愁と固執がある。過去の栄光と、石の文化(残す文化)の成せる業だろう。大して天災の多い日本は木の文化。形あるものはいつか壊れる、壊れたらまた立て直す、古いものにはあまり固執しない。だからイギリスと違って東京は常に目覚ましく変化してゆくのだろう。
カミさんがピーターパンの大ファンなのでケンジントンガーデンに立ち寄る。ピーターパンの舞台となった地。今でもそこにはピーターパンの銅像が建っており多くのファンが訪れている。
クウィーンズウェイAVのパブで昼食。フィッシュ&チップス、シュリンプ&チップス、イングリッシュソースソーセージを頼むと山盛り(特にポテト)メニューがやってきた。隣のおばちゃんが「OH!」と驚いて大爆笑していた。
結局ポテトは残したが完食。味は悪くないがやはり飽きる。ややこしいチップの払い方だがここでも先ほどのおばちゃんが「そんなに要らないわよ、これで充分!」と教えてくれた。「沢山食べたから沢山運動しないと私みたいなお腹になっちゃうわよ!」とカミさんにもご忠告も。
ピカデリーサーカスという有名な通りを歩く。交通量も増えビジネスマンなどの姿も見かけるようになったが、それでも東京よりはウンと少ない(逆に東京の人と車の量がいかに異常かということも気づかされ始めていた)。
そして日が沈みかけた頃、ようやくたどり着いた国会議事堂。ビックベン。ロンドンといったら誰もが思い浮かべるだろう代表的建造物。
いや〜、まさに夕景in U.K. 改めてロンドンに来たんだなぁと実感させられた。
ビックベンの近くにロンドンアイという観覧車があり、列に並ぶ。しかし、この列がいかにもいい加減。二列で並んでいるのだが片方が混んでてもう片方の空いてる方に後から来た客がどんどん先を越してくなんてざらだった。それを見て不機嫌な顔をしている紳士もいたので全員が順番にアバウトというわけでもないらしい。受付嬢も誘導員もとにかく投げやりでいい加減な態度に見える。チップの問題にしてもそうだが、とにかくこちらの労働者は愛想が損だという概念が強いのではないか?逆に仕事を離れたプライベートではあのパブのおばさんのように親切な人が多いような気がする。ここも日本との大きな違いだな。日本人は仕事に関しては愛想良くて当たり前、スマイル0円、愛想が悪いと社会不適応者とまで見なされてしまう風潮がある。その反面プライベートでは逆に結構冷たかったりするもんな。
しかし、観覧車に乗るのに赤外線でボディチェックされるとはな。これも今の日本では考えられない(じきに日本もそうなるだろうが)。
これがロンドンアイの上からの映像。ご覧のようにロンドンには高層ビルがほとんどない。だから町の灯りが地平線の果てまで続いて見えるのだ。確かにこの夜景は一見の価値があるかも。東京ではビルが邪魔して絶対に見られない。この夜景はロンドンっ子気質の結晶のようなものなのだ。
それにしても今日はかなり歩いたぞ。チェズウィックからビックベンまで。新宿から上野ぐらいの距離はある。さすがに足が悲鳴を上げている。
ウォータールー駅から地下鉄に乗って帰る。ここでまたロンドンの悪い所!地下鉄にはダイヤなんてない。到着時間はすべて適当!どこ行きの列車が何時に何番ホームに着くのか分からない。列車が着く一分前くらいにホームのボードのどこどこ行きの所に矢印がつく。たったそれだけ!まったくいい加減!
イギリスには電車オタクが多いと聞いていたが、どこが?(後に青さんに聞いた話ではこれでもイギリスはかなりマシは方らしい。他の欧州諸国は一分前の予告すらないそうだ)。
結局、チェズウィックまでたどり着く電車がやって来ず、途中下車して歩いて帰った。
帰路、大きなお墓の中を突っ切る道があってゾンビ映画を思い出して怖くなったではないか!
みなさん、欧州の地下鉄にはご用心です!

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