今日は父親の69歳の誕生日の前日である。生野社長やエッチャンがやって来てサプライズパーティーを催してくれた。
父親は脳溢血を始めいくつかの病に倒れている。最近はずっと嗅覚を失っていたらしい。しかし、今朝一時的にだが匂いの感覚が戻ったらしく、夕飯の時も私とカミさんが作ったスパイスたっぷりのチキン・ソテーを「おお!匂う!スパイスが匂うぞ!最高だ!」と感激しながら食べていた。
「やはり五感の全てで世界を体感できるのは素晴らしい感動であり、限りない歓びであるのだ!健康な人間はそれに気付かんのだ!」と親父ははしゃぎながら力説した。
それはそれは本当に嬉しそうだったのだ。
もちろん、私はこの五感のうちのひとつでも失ったことはないので、もしかしたら今親父が感じている「生きる歓び」の十分の一も体験していないのではないか?そう思えてしまうほどだった。
しかし、当然ながらその時まだ私は知らなかった…数日後、私が親父のように五感のひとつを失うことになろうとは…。

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