自分の芝居の手応えというものをどこで感じるかは人それぞれだと思う。
もし笑いを目的とした演目だと非常に分かりやすいが、そうでない場合はお客の集中力を感じたり、拍手に心がこもっているかどうかなど、長くやっていると色々判断材料はある。
今回色々な事情があり、果たしてこの芝居がお客さんに受け入れられるレベルに達しているのか否か、正直客観的な判断材料があまりなかった。普通、演出家なり主催者サイドが多少なりとも出演者に自信を持って舞台に立てるようちょっとは盛り立ててくれてもいいと思うのだが、今回に限ってそういう雰囲気は皆無だった。非常に不安定な心持で、しかしここまで来たら自分のできる限りの力を尽くして頑張るしかない、恐らく私だけでなく多くの出演者がそういう心境で初日に望んだと思う。
まず、二時間半という長丁場の芝居で途切れることなくお客の集中力をビンビン感じ、お!と思った。そして、満場の心のこもった拍手。
最低限、お客に受け入れるだけのものはできたのかなと、カーテンコールでホッと胸を撫で下ろす。
しかし、それ以上に私が「勝ち」を確信したのは楽屋へと帰る途中である。
主催者側の実行委員長が、私の前方の階段を下りていた。
その実行委員長は踊り場まで降りた時、何と鼻歌を歌いながら嬉しそうに小躍りをしたのだ。
もういい年をした親父の小躍りである。普通に考えてよほどいいことがあったのだ。それすなわちこの舞台の出来栄えが予想以上のものとなったからと考えて間違えあるまい。
終演直後の主催者サイドは来賓などの接待にあたり、非常に忙しく慌しい時である。その方も駆け足でロビーに降りてゆく途中であるにも関わらず、階段の踊り場でひとりこっそりと小躍りしたのである。身体がビートを刻んだのである。心が弾んでいたのである。そこに嘘や建前はないはずである。
「…勝った!」
…私はその時、確信した。

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