最近気になる映画があってもすぐ忘れてしまう傾向がある。劇場まで足を運んでみようと思う映画があっても、ついつい忘れていているうちに公開時期が終わってしまう。
これもそんな一本。
百聞は一見にしかず…この映画はその一言に尽きる。
新聞やニュースでルワンダの虐殺やツチ族フツ族のことは多少知っていても、この映画ほど身近には想像できない。特に残虐な虐殺のシーンがあるわけではないのだが、一番ゾっとしたのは死体が累々と横たわっている道に車がハマってしまうシーン。この車の揺れが恐ろしくリアルなのだ。私もまったく同じ夢をよく観るのだが、こういう国ではそんな悪夢が正に現実になっているのだ。
その後、主人公がひとりでネクタイを締めようとするシーンがあるのだが、普段何気なくやっていることなのに何度も何度も失敗する。この国の悲惨な状況を凄く身近に感じられるシーンだった。新聞やニュースだけではこういう感覚は絶対に伝わらない。映画ならではの手法だと思う。
単なるメッセージやヒューマニズムだけでなく、こうした演出力にも感心した。
弾圧の対象となる奥さんの顔もまた凄くリアルでインパクトがあった。主役は「クラッシュ」にも出ていたと思うが、卑屈に耐える黒人をやらせたら右にでる者はいないだろう。
主人公は外国の有力者にも取り入っている四つ星レストランの支配人だからきっと比較的裕福層なのだろう。しかし、虐殺を行っている多くの者は貧困層で教育もなく将来に何の希望もない人々だ。このアフリカの貧困も実に根深い問題を抱えていて、主人公が頼っている白人国家の植民地支配もその原因の一端は担っている。だから主人公にしてもまったくの潔白ではなく、そこが単なるヒューマニズムに終わらない深みがあるのだと思う。
確かに署名活動までして日本公開に漕ぎ付けただけあって、とにかく一見の価値はある映画であった。

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