紀ノ川の石ころ(3) 「チャート」
紀ノ川が増水して川べりが削り取られたために、砂や泥のなかに石ころがぎっしり詰まった地層が観察できる場所があります。「これが、熱や圧力で固められたら(れき岩)になるのだろうな」と想像しながら、何枚かの写真に撮っています。その中の一枚に、あずき色の赤い石と透き通るような青い石が、並んで輝いていたのでクローズアップして写した写真があります。「チャートってどんな石だろう?」となかなか理解でいないでいたとき、初めて意識したのが、この赤い石だったのです。青いチャート、黒いチャート、いろいろな色のチャートが見られますが、私には、まったく石英にいろいろな色がついている石という感触をもっています。それもそのはず成分は同じなのです。その成分は「けい酸(シリカ)」です。
チャートは、ほとんど「けい酸」でできた緻密な硬い堆積岩なのです。けい酸質の生物の殻が堆積してできる場合と、火山活動などで大量のけい酸がもちこまれて沈殿してできる場合とがあります。チャートをつくるおもな生物は、放散虫などです。放散虫は大きさが0.2から0.5ミリ程度の動物性プランクトンで、古生代から現世までの長い生存の歴史をもっています。しかも地質時代とともに多様に変化してきているために、年代決定に役立つということが確立されてきています。
どのように取り出すかというと、放散虫を含む岩石にフッ酸(フッ化水素)をかけて、けい酸を溶かすのだそうです。放散虫はまわりの岩石より溶けにくい性質があるので、適当な時間溶かすと、まわりの岩石だけを溶かして放散虫の殻だけを抽出することができるというわけです。
チャートは、陸から運ばれた鉱物粒子がほとんど含まれていないことなどから、陸から遠く離れた海洋底で堆積したのではないかということと、それだけに堆積する速度がとても遅いということが考えられています。

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