四万十帯(2)
白崎の石灰岩・戸津井の鍾乳洞は、秩父帯であることを前にふれましたが、その秩父帯の南に仏像構造線という断層を境界(由良湾に沿って北東方向にのびる)にして四万十帯が広がっています。仏像って変わった名前が付いた断層ですが、高知県にある仏像という地名からきているそうです。
四万十帯という地層は、四万十川に由来しています。西南日本の太平洋側に沿って赤石山脈から紀伊半島、四国、九州を通って沖縄までのびている、総延長1500km、最大幅約100kmにおよぶ大地層群です。その主体は砂泥互層からなります。深い海底に静かに泥が堆積しているところに、浅海から砂泥が絶え間なく乱泥流として運び込まれ、砂岩と泥岩の交互層ができたのです。これがタービダイト(乱泥流堆積物)なのです。
さらに
・1億3000万年前の赤道海域で海底噴火によってできた玄武岩の枕状溶岩
・遠洋で石灰質ナンノプランクトンの遺骸からつくられた石灰岩
・放散虫遺骸が降り積もってできたチャート
・粘土や火山灰を含む赤色や緑色の頁岩
これらが複雑に混合して存在しているところに特徴があるといわれています。
破断された泥岩に、上に記した海洋地殻物質の破片が混在している岩層は、メランジュと呼ばれています。フランス語でいろいろなものが混じりあったという意味だそうです。
和歌山における四万十帯の地層は、北から順に日高川層群(中生代後期・白亜紀に付加体として誕生)、音無川層群、牟婁層群に分けられています。日高川層群は、由良、日の岬、煙樹が浜あたりから北は奈良県五条市に、そして、紀伊半島中央部に大きく拡がっています。
煙樹が浜から日の岬に行く途中に三尾漁港(アメリカ村)があります。その少し手前の海岸に枕状溶岩が見られます。私にとって、なぜここに枕状溶岩があるのか長い間の謎でした。
いま、四万十帯に含まれている地質であることを知って、赤道近くで海底噴火した溶岩がプレートに乗って付加されたものであることに納得するとともに感慨無量というところです。

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