三葉虫(2)
三葉虫という名は、その身体が中央の軸部と両側の肋部の3ヶ所に分かれ、まるで葉っぱが縦に3枚重なったかのように見える事から付いたとされています。ある店で、一円玉より小さい三葉虫が目に留まりました。その名前の由来が良く分かる整った形態で、私の持っていた三葉虫のイメージとぴったりの形だったので心が惹かれてしまいました。
その三葉虫には説明が記されたカードが付いていて、それによって次のことが分かりました。三葉虫は、節足動物甲殻類です。すなわち、エビやカニの仲間です。名前は「エルラシア キンギ」、約5億3000万年前に生息していました。最大5cmで 脱皮を繰り返して生長します。海底をはって歩いたり、泳いだりして海藻などを食べていました。産地はアメリカのユタ州、Millard Co と記されていました。
エルラシア・キンギは、時代も古く、しかも綺麗で、最も安価で入手しやすい三葉虫だそうでです。
また、別の店で、蝉のさなぎのように背中を丸めた三葉虫の化石を二個買いました。どちらも頭の部分が欠けていたり明確でなかったりして良い化石とはいえませんが、三葉虫というのはだんご虫のように身体を丸めるのだということが良く分かる化石です。カードには、節足動物門・三葉虫綱・ファコプス目・ファコプス科という表示があり、デボン紀(約3億6000万年)という時代を記していました。
ところで、三葉虫の脚はどうなっているのか、私の買った三葉虫からは見ることが出来ません。硬い殻をもつ身体の部分が化石として残り、脚は化石として残りにくい構造をもち、その痕跡を見せなかったので、脚については謎だったそうです。でも今では、レントゲン撮影でその形態が把握され、また、完全に脚構造を持った化石が発見され、脚の形態が明らかにされています。驚いたことに、三葉虫は、いわゆる昆虫が持つ脚のように節のある「歩行のための脚」と小さい羽のような「呼吸と泳ぎを行うための脚」を持っていたのです。
眼については、最初に視力を持った動物のひとつといわれ、カルサイト(方解石)でできたレンズ状の複眼を発達させ、球面収差を補正する工夫さえ備わっていたようです。三葉虫の多様性、形の面白さには驚かされてきましたが、生息環境によって眼もカタツムリのように飛び出たもの、眼を持たないものなど変化に富んでいます。
三億年にわたって存続してきた古生代のアイドル三葉虫の眼に、いったいどんな世界が映し出されていたのでしょう。
三葉虫 エルラシア・キンギ
↑ 三葉虫 ファコブス
●複肢(鰓脚)
呼吸と泳ぎを行うための脚です。

●脚(歩行脚)
歩くための脚です。

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