七里御浜の石ころたち(4)
アプライト
黒っぽい石ころたちの中でひときわ白く光って見えるアプライト
七里御浜では、那智黒石と対照的にアプライトと呼ばれる白い石ころが目を引きます。ほとんど白い鉱物、即ち石英や長石などでできているようです。たまにごくわずかですが黒い雲母が含まれています(雲母類は熱水作用により粘土鉱物化するようです)。
放射状に黒くにじみ出ているように見える雲母
石英だけの透き通る白い石ころを紀ノ川などでも見られますが、その石英の白い石と違って、アプライトには石英が半透明の粒(結晶)になって点々と見られます。この硬い石英の粒が表面から剥がれて穴が空いたようになったアプライトもあります。
結局、アプライトは長石が中心の石ころなんだなと考えています。表面は粉っぽい白さなのです。
左下、右上、右下の白い石はアプライトです。
那智黒石の故郷は、熊野川の支流になる北山川の中ごろ(熊野市神上町)にあります。近いうちにこの日誌に記しておきたいと思っていますが、ではこの白い石アプライトの故郷が一体どこにあるのだろうかと興味があります。
実は、ひとつの故郷ではないかと見つけた所があります。それは熊野川を渡って三重県に入ると鵜殿があり続いて井田という町(村)があります。その中間あたりのところで、国道42号の側面なのですが岩石を削る工事をしていました。その岩石が白かったのです。そのときは七里御浜の白い石ころと関係付けて考えられなかったのですが、後になって「あそこの工事現場で見た白い岩石は、このアプライトの源岩なのだ」と思うようになり、その後、改めてその現場を車で通るときに注意してみるのですが、その白い岩石が見えないのです。おかしいなと思いながら目の錯覚だったのだろうかと自分を疑いましたが、コンクリートを吹き付けたところがあるので、むき出しの白い岩石を隠すためにコンクリートで覆ってしまったのに違いないと確信しています。次回、車から降りて歩いて調べたいと思っています。白い岩のままでよいのにと残念に思えて仕方がありません。
ただ、熊野川の川原でもこのアプライトが見られますので、この石の故郷はその流域にもあるはずです。マグマが噴きだした熊野酸性岩(花崗斑岩など)のなかの脈岩等として挟まって存在しているに違いありません。それが、崩れて熊野川に流れ出し丸く削られながら七里御浜にも来ているのだと考えられます。
アプライトは花崗岩や閃緑岩に伴って岩脈として産出するようで,長石質資源として陶磁器原料として利用されています。規模が大きく大量に採掘・利用されているのは、中京・近畿地区のものだそうで、よく知られている伊賀や信楽の焼き物の陶土もこのアプライトとかかわっているようです。
右側の灰色がかった石もアプライトだと思います。

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