エジプト石ころの旅(10) シナイ山登山
シナイ山登山
これがシナイ山ですね。山からの下り道、後ろを振り返り感動しました。岩の壁にある中央の斜めの谷が石段の道だと思われます。そして、ラクダに乗って山を下りる人たち
今回のエジプト旅行のひとつの楽しみは、シナイ山登山です。しおりに中級・約10km・約6時間と案内があり、観光客に登らすのだから(希望者に)大丈夫だろうと考えました。
シナイ山は、モーゼが神から十戒を授かったとされる場所、2285メートルあるそうです。
セントカテリーナのホテル(モルゲンランド)で1時に起き、チャイを飲んでからバスで修道院まで送ってもらいました。
2時30分ごろだろうか、ラクダ組みと分かれていよいよ登山が始まりました。ヘッドライトをつけて、案外平坦な道をただ足下だけを見つめながら歩きました。
周りを見ても、真っ暗で何も見えません。どんな風景のところなのか、全然見当がつきません。しかし、世界各地からのたくさんの登山者にびっくり、どこにこの多くの人がいたのか訳が分からないという感じでした。
何ヶ所か休憩所のようなところがありましたがあまり休まず、電池の灯りで進む人々の後について登り続けました。
やっと本当の上りだろうか、8合目から石の階段になるといわれていた通り急な坂道が始まりました。この坂は睡眠不足の心臓に応えました。休みやすみ鼓動の速さが落ち着くのを待ってまた登るという、見通しの持てない道だけど前に進めばいつかは頂上、そう思いながら這うようにして前進しました。
やっと頂上にたどり着き、そこは小さな台地になっており二つの建物が建っていました。
頂上にある建物の1つ、そこで朝日を見つめる人びと
ここでゆとりができ空を見つめました。満天の星だろうけれど、西に傾いたオリオンだけは私にははっきりと見えました。
あまりの寒さに手がかじかんできたので、背負っていたバッグからあわててセーターやコートを取り出して着て、さらにカイロを背中と尻に貼り付けて日の出を迎える準備をしました。日本から持ってきたチョコレートもほうばりました。
うっすらと西の空が明るくなりだしましたが、おそい!!普通だったらすぐに登るのに、待ち遠しいほど日が昇るのが遅く感じました。
日の出
やっと6時30分頃に日の出、同時にまわりの山々が赤く浮き上がってきました。このひと時のために暗闇を登ってきたのです。この風景を神々しいという方も居られました。世界の絶景の1つだろうと思いました。
朝日に赤く染まる山々、山自身も鉄分が多くて赤いのです
若いキリストのような人が飛び回り、色々なポーズで写真に撮っていました。
赤く染まる山々をみると、火山のような山は見えませんが砂岩や石灰岩の層を突き破って火山岩が突き抜けて盛り上がってきたという印象を受けました。それだけに地層が垂直に立つほどに激しい地殻変動があったのでしょう。
いっせいに下りはじめた人びと
頂上でのすばらしい眺めを満喫して、人びとはいっせいに山を下りはじめました。階段というのは自然の石を積み重ねて造られていることが分かりました。700段ぐらいあるそうです。
こんな険しいところを登ってきたのか、石段ってこうなっていたのか、あらためてびっくり!!
この山の向こう側にセントカテリーナ修道院があり、ホテルもあるのだと思われます
シナイ山の岩壁下を下りる人びと
ロバで、休憩所に荷物を運ぶおばさんに出会いました。
何度も立ち止まって、後ろを振り向きながら、こんな岩山のすごいところだったのかとじっくり味わいながら下りていきました。子どもが金槌で石を割って何かを見つけていました。見ると「しのぶ石」を見つけているのでした。
ホテルで買った「しのぶ石}
ホテルで「しのぶ石」を買っておきましたが、一体これは何かというと二酸化マンガンが地層(堆積岩)にしみ込んで出来たしみであり、偽化石の代表格だそうです。
私は暗いところが嫌いなので、うっすらと夜が明けてきたときの登山がいいなーと思いました。朝日があたりを赤く染めながら、その移り変わる風景を見ながら登るなんていいよなー、などと考えながら山を下りました。
見えてきたセントカテリーナ修道院
やっとセントカテリーナ修道院が見えてきました。フィニッシュ!!と喜んだが、観光バスはかなり遠くの駐車場らしい。出発の時は修道院のところまで送ってくれたのに。バスまでの歩行に疲れました。
7×7×9cmのボール状です
二つに割ると、なかに水晶の小さな粒がキラキラ光っています
まだ何人かが到着していないので買い物をする時間がありました。さっそく露店で石ころを探しました。
ノジュールのような白い石の塊をぽっかり二つに割った美しい石がありました。特に珍しいものではないのですが、記念に買っておきました。
これは、火山岩が噴き出たり貫入してきた時に、ガスが抜けた後のすき間に、石英などが溶けた熱水が入り込み、そこでゆっくり冷え固まって出来たのではないだろうか、と想像しています。真ん中の空洞に石英の結晶、即ち水晶の小さな粒がぎっしり詰まっています。そのまわりにメノウになりかけがあり、外側の粉っぽい白い鉱物は長石ではないかと見ています。
シナイ半島といえば、現地の人は「トルコ石の国」と呼んでいたといわれるほど有名な産地のひとつなのです。第1王朝(紀元前3000年前頃)または恐らくそれ以前からエジプトではトルコ石がシナイ半島でエジプト人により採掘され、用いられていたといわれています。このシナイ山の近くに鉱山があれば、たとえ質の悪い物でもよいから原石に出会えるかもしれないという、かすかな望みを持っていました。
残念ながら、露店にはありませんでした。
ホテルに帰って朝食。そしてセントカテリーナ修道院を見学しました。ギリシャ正教会の管轄にあるそうです。
修道院の中にある緑豊かな「燃える柴」
「燃える柴」って意味が分からなかったのですが、調べてみると「モーゼが、燃えているのに燃え尽きない柴を発見、不思議に思ってその柴に近づこうとしてはからずも神の声を聞いたという」その柴。でも柴って「山野に生える小さな雑木」とあるのに立派な木ですね。見事に緑の葉を繁らせるこの木、この村に増やしたらいいのにね。
宗教のことはあまり分からないので、使われている石材に関心がありました。
見学が終って、シナイ半島南部にあるシナイ山・セントカテリーナを後に、バスは一路ギザに向かって突っ走りました。

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