ペンギン様ー!
自分は以前から六塚光先生のファンでして、
六塚先生が一迅社で書くと聞いた時からずっと注目していましたが
実際に読んでみて、これは感想を書かねばなるまいと強く思いました。
最初の情報公開で出たタイトルが
『ネックレス・ホワイト〜あるいは秘密結社赤面党の最期〜 (仮)』。
いったい何があったらこれがペンギン・サマーになるのかという当然の疑問は浮かびますが、読み終わると仮タイトルの意味に納得出来るというのが凄い。
同時にイラスト担当が
茨乃先生だという事も明らかになりました。
最初耳馴染みが無い名前だったので調べたら、
pixivで普通に見かけたことある(ランキング経由だったかな?)方でした。
よい雰囲気の表紙ですよねー。
内容をあまり反映していないという意味で若干釣りではあるけど。
この表紙が公開された時点で期待度が更に増しました。
あー、以前から六塚先生の書く単発小説も読みたかったんだよなー。
と、こんな風に期待しながら読んでみたら、
本当に面白かった!
今までの六塚作品(能力バトル的な要素がわりと強い)とはちょっと違うんですが
各所で六塚節が伺えたりして既存作品のファンにもオススメできます
>「バカだけど、意外とロジカル。
>こんな××SFが読みたかった。
>いやマジで。」
> 大森望
まさにオビに書かれている通りの作品です。
タイトルの元ネタ『エンジン・サマー』の翻訳者さんに帯コメントをもらって来るってだけでもちょっと面白いのに…何と言ういい仕事。
構成にも工夫があり最後まで読むと話が理解できる、実にクセモノな作品です
詳しい内容についてはネタバレが危険な作品なので無駄ですが
「続きを読む+ネタバレボタン」の厳戒態勢でいかせていただきます。
携帯から見ている方は気をつけて!
↓以下ネタバレあり↓
良い構成!
普通に隆司が主人公かと思わせて(いかにも主人公っぽいキャラに見えますよね)その実、そうでもない?
あかりが主人公かと言うと、そこまで活躍しているわけでもない?
なかなか捉え所の無い話で、わりと淡々と話が進む部分はありますが、
物語の全体像が見える、その瞬間がたまらない。
さわやかな青春を描いている(かどうかは意見が分かれるだろうか)
と見せかけて、地味に戦闘は残虐ファイト気味だし、
過去で密かに惨劇起きてるし、そして水島ぁぁぁぁ!
色々なところで六塚作品の持ち味は発揮されていたと思います。
会話も面白いですよね。
それから自分ライトノベル読んでてこういう感想ってあんまり出てこないけど、このヒロイン好きだなー。
「赤面党は本当にいたんだ!」
イラスト補正もかなりかかってる可能性は否定出来ないけど
この無邪気な感じいいです。
こんな事を言ったら従来のヒロインに殴られそうですが、もしかして
六塚作品で残虐要素の無いメインヒロインって初めてなんじゃないか?
さて、これより下は更に核心に踏み込んだ話。
仮タイトルのネックレスってクビナシの事ね!
あくまでヘッドレスじゃなくてネックレスなんだね!とかそういう話。
SFにはあまり詳しくないしタイム・パラドックスとか
色々なパターンを知らないでこれを書いていると先に書かせて頂きます。
この話では想像は出来るけどあえて書いていない部分がありますよね。
主に過去のこと。
おそらくタイムスリップした時点で伝承の正体に気付いて
辻褄合わせようと必死で頑張ったんだろうなあと思うと笑えます。
みんな改変後の物語しか知らないんですよね。
書いてくれたらきっと面白かっただろうとは思うのですが
クビナシが遠方に帰るかどうか迷うという点なども、
あえて書かれていないからこそ想像の余地が……。
あかりはさすがに髪の毛だけじゃなくて眉毛ほか全身の毛が
真っ白になったら簡単に誤魔化せるレベルを超えているのじゃないかなあ
とも思ったけど、そこは気合いでカバーですね
(関係ないけど妹のこよみちゃんも挿絵無いレベルの脇役だけど好きだ。
彼女もきっと同時に何か事件に巻き込まれていたに違いない、
六塚先生にはその構想もあるんじゃないだろうか、と
物凄く勝手な想像をしています。)
特に破綻も見つけられず、予想外の展開で。
ライトノベルの特性を自覚的にハッキリ活かした
非常に自分好みの作品でしたとさ。
成田良悟作品の、特に『ヴぁんぷ!』に見られるようなイラストとの連携は
わりと感動します。どこの事を言っているか分からない人は再読すべき!

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