junko の裏日記
real easy space with her favorites
2021/10/23
政党の話とか
国民健康保険の話とか
おおよそ
日本語でだって
そうそう上手に説明
できないみたいな
事柄をずっと
聞かれ続けていたのである
どうにか覚えているのが
Celine の
お家の中を
ひとしきり案内
してもらったあとリビングで
ご家族とおしゃべり
していた風景
先日ご実家へ
ちょっと帰った際に
昔のアルバムを
引っ張り出してみたのだが
Celine と会ったこの日に
撮った写真は
Celine のお家の
どこかと
あとは
大西洋沿いのシーフードレストラン辺りのと
たったの数枚しかなくて
まるっきり
その日1日の記憶を
辿れるほどの
ヒントになんか
ならなかった
降り立った駅は
とっても小っちゃくて
記憶は曖昧ながら
他の誰とも
居合わせた覚えもなく
文通を始めて
15年で初対面を果たした
ペンパル同士は
おそらくその場で
ハグを
したはずで
そのあと
Margaret が運転する車で
まっすぐ Celine の
お家へ向かった
ように思う
この町に
足を踏み入れた日本人は
おそらく作者が最初
だったのではないかと
思えるような
New York からかなり離れた
郊外の小さな住宅街の
お家のリビングで
作者は
Celine と Margaret のほかに
お父さんお母さん叔父さん
5人の大人に取り囲まれながら
政党の話とか
国民健康保険の話とか
日本の国のそういう
こまごまなことについて
よっぽど珍しくてご興味が
あったのか
そりはそりは熱心に
質問されて
案外に居心地が
悪かった
Celine のご家族は全員
よく見るスタンダードな
イタリア系の容姿を
持っていて
特にお姉さんの Margaret は
昔の映画に出てくるような
イタリアの大女優みたいな出で立ちの
背の高いスラっとした美人で
かなりぽっちゃり体型の Celine と
全然似てなかったけど
一緒に撮った写真が
あるおかげで
このときたった1度しか
会ってないのに
未だにこの姉妹の
顔かたちははっきり思い出す
ことができるのです
連れてってもらった
海が見えるシーフードレストランと
海のあいだにある
だだっ広い寒々とした
野原は
作者が女子高生時代
熱愛した小説の中の風景に
とっても似ていて
主人公の男の子がお父さんを
殺してしまう海が見える草原は
こんな場所だったなと
思いながら
3人で
写真を撮り合う
帰りの電車のことを考えたら
そんなに長い時間
居られなかったはずなので
夕方前にはもう
駅まで送って
もらいます
Celine は
毎年のクリスマスに
送ってくれる
恒例のその町のカレンダーと
Celine のポエム集を
そろそろ電車が
やってくる頃合いで
プレゼントに
手渡してくれて
それで初めてご自分が
遠く日本から会いに
来たというのに
おみやげのひとつも持ってきて
なかったことに
ようやく気づいて
すごく
後悔した
「 気をつけてね 」 か 「 またね 」 か
バイバイのハグされたとき
そんなような
感じのことを
言われたんだと思う
つい数日前までいたLAは
夏の陽気だったのに
9月か10月の
New York 郊外のこの町は
冬の入口みたいに
風が冷たくて
ものすごく寒かった
そのあとの
帰りの電車の中のことも
グランドセントラルステーションに
着いてからホテルまで
どういうふうに
帰ったのかも
まったく
覚えていません
行きのタクシーと
電車の中のことはあんなに
覚えてるのに
Celine とは
その後もずっと
お手紙が Email に変わっても
やりとりを
続けていたけど
ちょうど作者が今のバンドに
加入するかしないか
ぐらいの頃に
それが途絶えてしまいます
さしたる理由もなく
作者がずっと返信せずに
いてしまい
そのままきっかけを失ってしまったのが
20年ぐらい前
実家には
Celine から作者を心配する電報まで
届いていたというのに
作者は完全に時機を逸し
ついにそんな
長い長い時間が
過ぎてしまったのです
後悔と自責の念はずっとあって
何年か前に
Email を
送ったことがあったけど
お返事はこなくって
そりゃあこんな
長い年月が経ってんだから
いろんなことが
起こってて当然だよなと
最悪のことも
考えたりしながら
諦めをつけて
しまっていたのですが
今回
本欄に Celine のことを
書き始めたとき
試しに
Google で
検索を
してみたのです
Celine がヒットした
文通をはじめた頃から
ずっと詩を書いていて
のちのち
小説なんかも
書くようになった Celine は
本当に
ちゃんとした
作家になっていた
作家になって
Google でヒット
するぐらいになっていた
ホームページを見つけたので
おそるおそる
コンタクトをとって
みると
すぐに返信がきて
作者が本当に自分の知っているあの頃の日本人の女の子なのか
「 ただ確証を得たいだけだからごめんなさいね 」
すごくプライベートな質問を
いくつかしてきたので
作者も
すぐに返信する
20年もの
ブランクを作って
しまったけど
あの頃
詩や小説を書いてたアメリカの女の子は
作家になって
ロックに目覚めてバンド活動に明け暮れた日本の女の子は
未だにバンドをやっていて
姿かたちは多少
変わっただろうけど
やってることは半世紀前と
ほぼ変わんない2人は
また
近況を伝えあう
メールを送りあう
仲に戻った
「 バンドで来ることがあるなら今度ラスベガスのホテルでランチとかできるね 」
ラスベガスでショーを見るのが
大好きな Celine が
作者に言う
だから
きっとまた
いつかは
会えると思っている
続く ( たぶん )

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