父の影響で大河ドラマや歴史物を子供の頃からよく見ていた。学校の成績はまったく振るわなかったが大人になってから歴史好きに拍車がかかり、今では暇があると頭のなかは歴史のことをうつらうつら考えている。
私が子供の頃の時代劇は今よりもっと生々しかったように記憶している。そのせいなのか時代劇には付きものの切腹のシーンがどうしても頭に残り、友達に話すとよく笑われるのだが、夜になると自分が切腹する羽目になる夢をよくみた。父は西部劇もよく見ていたので銃でもよかったのだがなぜか必ず切腹。夢にはあまり前後がなく、あたふたしている自分と刀だけがあるのだ。
そんな子供時代もありつつ、最近「日本城郭検定」なるものがあることを知った。年に一回4都市で開催していて今年は6月19日とある。世の中いろんな資格があるが城郭までもとホームページを見てみると、一番下の4級でもお城用語はその読み方からもう難しい。
にもかかわらず、合格者の声というところには小学6年生で準1級を合格した男の子のコメントがあったりする。お城のことを知っているだけでは解けない語彙力、漢字力、文章解読力などが求められるし、当然ながら歴史の流れを知っていないといけない。ん〜すごい子がいるもんだと感心しつつ、また4級に戻ってみるがこれすら合格できなさそうなので別ページを開いてみると、「きのこ検定」「天文宇宙検定」「神社検定」「通販エキスパート検定」「パンセルジュ検定」「忍者検定」ってものまでそれはもう多種多彩。城郭検定で驚いている場合ではなかった。
私が時代劇を父と見ていた頃、身近な検定といえばそろばんだったが、今はこんなに楽しそうなものがいっぱいあるなら興味がある子にはいい勉強の動機になるだろう。「大河ドラマ検定」というのもあるらしいが受験するほど覚えてないし、いろいろ見た末やっぱり城郭に戻る。
私がお城に興味があるのは見慣れているからかもしれない。地元三重県の松阪市には蒲生氏郷が建てた松坂城の石垣が残っていて、確か日本100名城にも入っている。実家からも近い四五百の森、「よいほ」の森と読むのだが、松阪だけでなく伊勢平野を見渡す絶好の場所に当時お城があり、楽市楽座でにぎわった町、人々の往来を思うといつも想像が尽きない。その向かいには松阪神社に並んで国学者本居宣長を祭った神社もあり、昔通った中学校はその坂の下。部活でヘーヘー言いながら走った神社の石段を登って今年はどんど焼きに行った。
また、松阪城址の敷地内には本居宣長記念館があり、宣長が家族と暮らした「鈴の屋」と呼ばれる家も城下より移築され一般公開している。嬉しいことに1階だけは家にあがっての見学もOK。ひっそり静かなので畳に座り一人歴史にふけるにはもってこいの空間。
今回は記念館に行ったこともあり、アメリカに戻る前購入した「日本人こころの言葉 本居宣長」(吉田悦之著)という本がとてもよかった。著者の吉田さんは昔市長さんをされていたと思うのだが現在宣長記念館の館長さん。文章が温かくて宣長のことを尊敬し大切にされているお気持ちがよく伝わってくる内容だと思った。そして選ばれている言葉、それにまつわるお話もそれぞれ心に残るものばかり。
「敷島の大和心を人問はば、朝日に匂う山桜花」が宣長の歌だったと知ったのが大人になってからというか、大人になって随分たってアメリカに来てからという恥ずかしい話なのだが、その歌をいつも思いだす桜の花が今年は咲かなかった。4月のある夜に霜が降りたせいで桜、モクレン、桃、梨だとか4月が開花時期の木々はみんな花がつかず、咲いてもほんのわずかでいきなり葉っぱが出てくるイプスイッチの春だった。
そんな今年の春も早5月の下旬、城郭検定の試験は1か月後。今頃どれくらいの人が勉強しているのだろう。いつか私も挑戦してみたいとは思うがどれだけ勉強すればいいのか今は想像もつかない。

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