年末に何かやっておくことはなかったかなと考え健康診断に行くことにした。国民皆保険のないアメリカでは、日本のように市や町から丁寧に「さあ、これを持って健康診断に行ってくださいね。」というような用紙や連絡は全く来ない。
確かに日本の病院は待ち時間が長いことに始まりいろいろな問題があるが、役所に行けば保険証がもらえ、誰でもそれを持って病院にかかれるるという日本の医療制度がなんとありがたかったかがアメリカにきてからよくわかった。
健康保険や貧困の問題は抱き合わせで人々の生活をどんどん苦境に追い込む。実際病気でも保険がないから薬が買えない、治療が受けられないという話を身近でもときどき聞くが、それがどんなに心細いものか、さらにはアメリカ人であれば国民でありながら自分の国の病院にかかれない気持ちはどんなだろう。誰もが病院に行けるわけではなく、ましてや病気でもないのに健康診断に行くのはどうかなといつも気が引けるのだが、それでも自分が病気になっては元も子もないと言い聞かせファミリー・ドクターのオフィスに予約を入れる。
こちらでは健康保険会社に入る、自分のお医者さんを決めるという手続きを最初にする。その決めたお医者さんをファミリー・ドクターと呼び、家族全員まず何かあったらそのお医者さんに診立ててもらい、さらなる検査や治療が必要であればそれぞれ指定された施設に出掛ける。
受付を済ませ待っているとパソコンを持った看護師さんに名前を呼ばれ中に入る。「ああ、今日はこの人が最初の計測とかするんだなあ。」と顔を見て簡単に挨拶をかわし身長、体重測定。「はい、靴を脱いでこの上に乗って。」と言われ、まだ背筋を伸ばすか伸ばさないかの段階で「はい、5−5ね。次。」次って、私5−4(5フィート4インチ)なんだけど!でもまあこの年で別に正確な身長なんて記録されなくてもいいかと思いつつ、1インチといえば2.6cmで結構な差がある。往々にしてなにかとずぼらなといっては失礼だが、なにかと粗雑なこの国では、きっとこんなこと取るに足らないんだとまたすぐあきらめる私だが、ボストンあたり都会の有名な病院は違うのだろうかと気になったりする。
そして次の体重もコートひとつ脱がないので、今回の検診では身長、体重が大幅に増えた記録となったはず。予防接種などにしても「腕出して、はい。」プスッ!「おしまい。」と言ってさっさとドアを出て行く。常にあまり多くを期待しないがポカンとすることしばしば。もちろん医療施設に限ったことではない。だた病院だからちょっとは違うかな・・・なんて期待するのがそもそもいけないのかもしれないし、なんといってもよその国(って住んでるんですけど)、前回の食のスタンダードしかり、医療サービスしかり、アメリカはアメリカ流なのだ。
アメリカ流といえばヘアサロン。人口1万3千人のイプスイッチだからかもしれない。あまりにもいつも思ったように切ってもらえないので、一体どこに行ったらいいのかと毎回行くところを替えてみるのだが、どこもまず洗髪のやり方からすごい。まるで野菜かなんかを桶で洗うようにざぶざぶとそれはもう大胆。もちろんほぼ毎回耳の中に水が入る。一番最近行ったところでは、シャンプーの泡が残ってまだ耳元でシュワシュワいっている段階で、「はい、こっちね。」といってカットの椅子に移動を促されるので、耳の水や泡をタオルで拭き取りとりながらその人の後について歩いた。
私は髪が多くてしかも太い。それに対しこちらの人は髪が少ないし、たとえ多くてもとても柔らかく極細で、特に段を入れずに切ってもかわいくクルッとカールしたり、それなりに馴染んでいて自然なのだが、ガシガシと多い髪の毛をバッサリ真横に切られるともうそれはそれはひどいものになる。なのでいつも必死に段を入れてほしいと訴えるが、「さあ、できた。私ちゃんとレイヤーも入れたわ!見てみる?」と張り切って最後に鏡を出されても、見ると「やっぱりこの程度か・・・。」という申し訳程度にレイヤーが入っているか、まるで階段状に明らかな段がついているかのどちらかの結果にしかならない。
それでも地元で気に入ったところが見つかればいいなというささやかな期待を胸に、電話帳の端から順番にいまだチャレンジを続けている。大雑把でややずぼら(またスミマセン!)なアメリカ・サービスと毎度仕上がりにがっかりしつつも、憎めない陽気で明るい人たちが好きで性懲りもなく探す私。
日本とアメリカ、日本の丁寧さは誇るべきものだと思うが、私はあのスーパーマーケットの丁寧はどうもいただけない。ひとつひとつの商品をかごに移しながらその値段を読み上げるのはうちの近くのスーパーだけなのだろうか。そして前にも後にも深々とお礼をされてどうもとっつきが悪い。こちらは商品をピッーとやりながら、「ああ、これおいしいよねえ。」とか地元の話をしたり子供に声をかけてくれたりで、「その話はいいから早く手を動かしよぉ。」と初めは思ったが、今はよほど急ぎでない限りこれがないと寂しい。みんな初対面でも面白おかしく喋っており、私ももっと自然にそんな会話ができるようになりたいと常々思う。
どちらの国にもいいころ悪いとこがあり、それぞれの比較をしてみると面白かったり腹が立ったりするが、いずれにしてもそこで生活していかなければいけないならそれなりに対応しなければならず、毎日、毎年いろんな経験をして今年も気付けばもうあとわずか。今日はクリスマスだ。
町はとても静かで教会の鐘の音が今日は一段とよく響いていた。朝から白く重たかった空から雪が降り始めている。うちの娘はもらったプレゼントを抱えていとこの家におばあちゃんと早朝から遊びに行ってしまったので家の中も静か。午後からはジェーソンも家族の集まりに出掛けるので、私は一人B&Bで留守番役。お客さまもそれぞれのパーティーにお出かけになるし、さあ、今日は一人で何をしよう。

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