2007/8/31

「インクカートリッジを交換してください」
突然、警告ウィンドウが開いて、印刷が中断された。
ここしばらくインク残量わずかのサインが出ていたから、
これは想定内。
予備のインクは買ってある。
このプリンターは半年ほど前に購入したもので、
セットアップは相棒がしてくれていた。
だから、インク交換は初体験だ。
、、、こういう‘初めて’は嬉しくも恥かしくもないけど。
パソコン下のラックから、
プリンターのマニュアルを探し、インク交換の頁を開いた。
指示どおりスキャナのカバーを上げる。
うわお、ハイテク。
カバーしたの暗闇には、
インクカートリッジが赤い光を放って浮かび上がった。
5つのカートリッジのうち、3つが点滅している。
わたしを交換して、という合図らしい。
先代のプリンターはこうはいかなかった。
インク交換のタイミングは自分で決めなければならない。
印刷物の色が薄くなってきた、と気が付いたら、
後は限界をいかに見極めるかがポイントだった。
もう少しがんばれるか、と油断すると、
印刷物が赤の単色になったりして、己の未熟を知る。
あれに比べたら、進化もいいところだ。
チカチカするカートリッジを引き抜き、新品と交換。
プリンターのOKボタンを押すと、
警告ウィンドウは自動的に閉じられた。
ジジジジジジ、と己の状況を確認するプリンター。
しばしの沈黙の後、やつは全面復帰した。
さくさくと仕事をこなして行く。
使用する誰にでも易しい機械って、すごい。
プリンターからは飛躍してしまうけど、
こういう経験と勘を必要としない機械が、
伝統に培われた職人の技術を衰退させている。
進化と退廃は紙一重だ。
インク交換に現代の闇を見る夜でありました。

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2007/8/30

最近、親父のくしゃみをマスターしつつある。
僕の親父のくしゃみときたら相当なもので、
子供の頃は、それがとても恥かしかった。
電車の中や、コンサートホールなど、
人の混み合う場所で、親父がくしゃみしようものなら、
一瞬の静寂のあと、笑い声が起こるほど。
ふえええー、くしょっ
まるで、コントだ。
文字で表わすと滑稽な音だけど、親父は大真面目だった。
自然に出るものがから直しようがないんだよ、と言う。
多感な年頃だと、たとえ同じ電車に乗る予定でも、
親父と一緒に家を出たりしたない。
最寄の駅のホームで、ぼんやり電車を待っていると、
どこからかくしゃみが聞こえてくる。
ふえええー
あ、親父も来てるな。
そんな感じだった。
今日は雨上がりの涼しい日だった。
夜の空気は少し冷えるくらい。
鼻がむずむずした。
ふええええー、くしゅっ
あ、親父のくしゃみそっくりだ。
以前はそんなことなかったのに、年のせいだろうか。
今、駅の人混みでこのくしゃみをしたなら、
親父はきっと気付くだろう。
この人波のどこかに我が子が。
ゆくゆくはホームの端と端で、くしゃみで交信とか。
、、、しないな、絶対。
親父、元気ですか。

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