2007/12/14

灰色の一日が終わる。
雨傘の足はいつもより早足で過ぎる。
ガラスサッシの向こうで寝ていた老犬が、
僕の足音に顔を上げた。
よう、今日は変ったことあったかい?
まだお歳暮を送っていない、と言ったら、驚かれた。
話相手のSさんはとっくに済ましたそうな。
Sさんの本当に驚いた顔にこっちが驚き、
慌ててデパートに駆けて行った。
と思ったら、お歳暮会場は大盛況だった。
みんな、遅すぎるらしいぜ。
陳列棚をうろついて、先方の好物を選び、
品物の名が記されたカードを持って、購入受付へ。
受付の順番カードを取ると、30人待ち、と表示された。
さ、30人。
僕の直前に並んだ女性は、
そんなに待てないと言って、帰ってしまった。
後日出直すそうだ。
僕も一瞬ためらったが、
暇つぶしを持っていたので、待ってみることにした。
カバンから文庫本を取り出す。
30分以上かかったら、あきらめよう。
缶コーヒーを飲みながら、待合を眺めると、
受付は持ち帰り組と配送組とに分かれていた。
僕を含め、
配送を希望する人の方が圧倒的に多い。
僕の場合、遠隔地にいるので、
お歳暮を持ってお宅を訪問することはできないけれど、
あのCMで見るような、
お歳暮のご挨拶というもの、1度ぐらいはしてみたい。
楽しそうだよね、ハムの人。
訪問するのも、されるのも大変なんだろうけど。
昨今の虚礼廃止と、
コンピュータの導入で、受付はサクサク進んでいた。
25分を過ぎたところで、僕の番号が呼ばれる。
前回もこのデパートを利用したので、データが残っていた。
念のため先方の住所を確認してゴーサイン。
ものの3分で配送手続き、会計が済んだ。
足取りも軽く、家路に着く。
じつは、僕にとっては、
お歳暮を送るより、送り状を書くほうがたいへんだ。
ペンを片手にうんうん悩む晩であります。

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