2008/2/28

午後の陽射しは暖かかった。
商店街の1角で、アルミサッシの入り口を覗き込む。
この家の土間には犬が飼われているのだ。
老犬は丸くなって寝ている。
よしよし、大丈夫。
いつも閉まっているサッシの戸が30センチ開いていて、
春だな、と思った。
動物を飼いたい病が復活してきた。
毎年、春になると動物が飼いたくなる。
なんで春なのかはさっぱり分からない。
今の賃貸マンションではペットは飼えない。
正月明けから今月初旬にかけて病がピークに達し、
半分は本気で引越しも考えた。
ペット可の分譲マンションを見に行ったぐらいだ。
マンションはすごくいい物件で、お得感もあった。
たぶん首都圏で同じものを買うとしたら、倍はするだろう。
がんばれば買えない値段ではない。
富山、いいところだし。
、、、でも、やっぱり思い切れなかった。
小さい動物なら今の家でも飼えるな、と思う。
ダイニングテーブルの下に納まるサイズのケージなら、
構わないと、相棒も言ってくれる。
が、僕にはもう1つ乗り越えねばならないものがある。
我が愛しのハムスターとの思い出だ。
夢の中で、僕は新しい動物を飼っている。
あっ、昨日からエサをやっていなかった。
飛び上がるほど驚いて、ケージに駆け寄る。
あぁよかった、生きてる。
すると、小さな動物が泣いて言うのだ。
「ハムスターはあんなに可愛がったのに!」
悪かったよ申し訳ない、と僕は謝る。
あのハムスターは
僕が責任を持って飼った、初めての動物だった。
可愛くないはずがない。
いまだに世界で1番かわいいネズミだったと思っている。
いちいち面倒くさいなぁ、と隣りでため息がする。
こんだけ騒いでおいて、
この春もきっと僕は動物を飼わないだろう。
たぶんね。

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2008/2/26

寄り回り波、というのがあるらしい。
24日、富山県西部の沿岸で高波が発生した。
波は浅瀬をせり上がって堤防を越え、
濁流となって住宅地に押し寄せた。
映像で見ると、津波のようにも見える。
連日、被災地の状況がテレビで流されている。
災害の原因は寄り回り波だろう、と学者が言っていた。
初めて聞く波の名前だ。
海で何かあったらしい、と嫌な感じはしていた。
日曜日の午前中、ヘリが海の方へ飛んでいったのだ。
胸がざわざわした。
沿岸に住んでいた頃に教えられた。
冬のヘリコプターはいい報せは運ばない。
あれは海難救助じゃないだろうか。
以前住んでいたアパートは、海の目の前だった。
窓から毎日、灰色の海を眺める。
砂浜とアパートを隔てるのはブロック壁1枚。
堤防はなかった。
住み始めた頃は、こんな海に近くて安全なんだろうか、
と思っていた。
周囲には古い家が軒を連ねる。
もともとは漁師町なのだろう、妙に朝が早い町だった。
古い町の中には、津波の避難場所があったが、
その場所は
僕らの住むアパートより、むしろ海側だった。
津波の警報が出た時、
海に向かって走るなんて、と思った記憶がある。
アパートは古くとも鉄筋コンクリートで最上階。
ここに留まるか、むしろ車を出して山を目指すか、
どちらかの方がいいような気がした。
海岸を離れてから、そんな心配は忘れていた。
今回の被害は津波ではないけれど。
悪天候の中、
復旧に努める人々の姿をテレビで見る。
とても他人事とは思えない。
亡くなられた方々のご冥福と、
今後の町の復興を心からお祈りします。

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