2009/2/26
雨上がりの道を、長傘をふりふり歩いていた。
傘ってとても便利だけど、雨が上がるとやたら邪魔に感じる。
とある商店街の裏道にさしかかる。
このあたりはここ数年、開発がさかんになり、
どうやら不動産会社が土地を買い集めているようだ。
古い商店は軒並みシャッターを下ろし、
ちらほら建物を取り壊している。
こちらの角地もいつもまにか整地されていた。
ここ何があったんだっけなぁ。
狭い通りの小さな白い空にごっちゃりと張られた電線、
ひび割れ錆びつき朽ちかけたビルの壁を見ると、
なんとも寂しい。
人影もなく、たまに車が過ぎるだけ。
町がよどみに沈んでいる。
アスファルトは乾き始めて、黒とグレーのまだら模様だ。
その、まだ濡れて黒く光る場所に何か生き物がいた。
あまりに保護色だったので、
僕は、そいつが身動きして初めてその存在に気づいた。
しゅ、という擬音が似合う勢いで、そいつは横っ跳びに車の下へ。
思わず、後姿を目で追うと、
黒褐色のネズミが1匹、車の下を駆け抜け、
グレーチング(金網)をすり抜けて側溝に飛び込むのが見えた。
長い尻尾が体を追ってスルリと消えた。
グレーチングのピッチが何センチか知らないけど、
あれを抜けられるということは小ネズミだったのかも。
種類はドブネズミかな、クマネズミかな。
あのネズミには悪いけど、僕は憂鬱な気分になった。
野生動物をじかに見たり、その写真や動画を見たりするのも大好きだ。
だけど、
下水を走る系のあなたには極力お会いしたくない。
おとといの晩、風呂場の天井裏で何か物音がしたけど、
うちのマンションにもいたら嫌だなぁ。
「ドブネズミもハムスターも俺にとっては同じだ」
以前、実家でクマネズミの害に悩まされたUくんはネズミが大嫌い。
同僚が職場に連れてきた可愛いハリネズミにも激怒していた。
当然ながら
Uくんはハムスターも嫌いなわけで、
前にハムスターを溺愛していた僕に嫌味を言うわけだ。
ハムスターが好きなら、ドブネズミも愛せってか。
でも、僕のハムスターってこれだよ、似ても似つかないよ。

在りし日の我が友
勝手は重々承知でありますが、
ネズミ様、我が家方面への出没はご遠慮ください。
、、、いやもう本当に。

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2009/2/25

(先週の写真です)
僕だってそれなりの時間を生きている。
ということは、
初めての事態に対しても、過去の似たような経験に基づいて、
ちょっとは心の準備が出来るはずなのだ。
少なくとも、それが
不得手どちらの分野のしろものかはだいたい想像できると思ってた。
、、、でも、あれは予測できなかったんだよなぁ。
先月、胃の検査を受けた。
病院に電話をし、胃カメラを申し込んだのだが、
胃カメラは予約が満杯なのでバリウムではどうか、と返ってきた。
バリウムを飲むのは初めてだが、まぁ大丈夫だろう。
もじもじしつつOKを出す。
予約日まで時間があったので、
バリウム検査について聞き取りを開始した。
安心は予備知識からくるってもんだ。
経験者たちは雄弁だったが、総括すると、
「気分的には楽しくないが、検査自体はたいしたことない」らしい。
白い液体(バリウム)を飲み、姿勢を変えては何枚もX線写真を撮る。
気をつけるべきは、検査後バリウムを完全に排出すること。
中でもTくんは力説した。
「白いウ○コが茶色にかわるまで、けして油断してはいけない」
彼は泣きそうな思いをしたそうな。
ふーん。
はたして検査の日、検査室に入ると、白い液体を渡された。
これか、皆が言ってたは。
発泡剤のことは僕に言うのを失念したらしいが、構わない。
現場で渡される新情報としてはかわいい方だ。
いよいよ撮影会が始まった。
技師は室内から出て、ガラス越しにマイクで僕に指示を出す。
最初はカメラに背を付け、普通に立った姿勢での撮影だったが、
仰向けに横になれ、斜め横をむけ、うつ伏せになれ、
うつ伏せから起き上がって横を向け、斜め横をむけ、
と要求はエスカレート。
しかも、「すばやく!」と注意されるおまけ付き。
この一連の動作をもう一度繰り返す。
技師が室内に戻ってきたので、終わりかと思ったら、
肩を固定され、逆さにされた。
「手すりを強く掴んでいて下さいね」
こんな激しい動き、ジジババ(失礼)にも出来るのか?
という疑問が脳内に湧き上がる。
けっこう筋力使うんだなぁ、バリウム。
後から考えると、ここまでは楽しかったとすら言えた。
異変が起こったのは、X線撮影が終了し、
渡された下剤をコップ1杯の水で飲んだ後。
胸部と腹部に違和感があり、上体を起こすことができない。
血の気が引いていくのが分かった。
立つのが辛く、体を折って廊下の椅子に座りこんだ。
こりゃまずい。
廊下の椅子でもだえていたら、看護士が寄ってきた。
あ、ムーミン(←好意的な感想)。
彼女はおもむろに僕の血圧を測り、大丈夫だというのだが、
僕はちっとも大丈夫ではなく、彼女の真意を測りかねる。
ここは僕の方から提案しようと決意し、
横になりたいと頼んだら、簡易ベットを用意してくれた。
ありがたく休憩。
前夜の睡眠不足のうえ、僕は乗物に酔いやすい体質ときてる。
ぐるぐる回ったり逆さにされたりしたから、
気分が悪くなったんだろう。
はたして15分後、僕は復活した。
おそるべし、バリウム検査。
ふだんから乗り物酔いのケをお持ちの方、
バリウム検査には、お覚悟のうえ、かつ勇敢に挑んで下さい。
僕も次からは、十分な睡眠をとった上で挑もうと思います。

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