2015/6/28

すこし前のこと、山中の温泉に一泊した。
ナビの示す目的地周辺で
ホテルらしき建物を探したが、いっこうに見当たらない。
高い建物がないのだ。
夕暮れ、旧街道に沿って細く伸びる宿場町。
視線を両側に走らせつつ、坂道を登ると、
古びた家並みのひとつに
予約したはずのホテルの看板があった。
ここ?
本当にここ?
山の斜面に沿って伸びたホテルは
古い建物をリノベーションしたものらしく、
内部はいたって現代的だった。
チュチュチュチュ!
チュチュチュチュチュ!!
翌朝5時、鳥の声に叩き起こされる。
そっと障子を開けると、
目の前を横切る電線の上に、ツバメの子たち。
小首を傾げてこちらを見ている。
チビたちは巣立ったばかりのよう。
ついっと飛んでみては、電線に戻り、
親を探してか、大声で鳴く。
朝の冷たい空気に、山が輝き、緑が光る。
幼きものは全て可愛い。
けど、僕の目には
鳥のヒナは格別にかわいく映る。
たぶん、
僕がはじめて世話をした生物が、
巣から落ちて保護された、ムクドリのヒナだったからだろう。
無事に大きくなってよかった。
ほっこりした山の宿でありました。

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