2019/3/25
路面電車に乗って、帰ってきた。
また、路面電車のある街に住んでいる。
電停から家に帰る道には、桜並木があって、
今朝にはなかった
ピンクの提灯が紐で並木に括り付けられていた。
夕暮れの光の中、
風に吹かれてゆらゆら揺れている。
ああ、桜祭りの提灯か。
この街に引っ越して、もうすぐ2年。
今回の転勤は
短いものになるんじゃないかという予感があって、
季節の変わり目は、そわそわする。
大物を買い控える程度に、だけど。
正直に言うと
僕は、あの桜並木の提灯が好きじゃない。
あんな蛍光ピンクのプラスチックぶらさげてさぁ。
桜の花より主張してるじゃないか。
でも、まぁいいか。
花を喜ぶ気持ちはおんなじだし。
知らない人だらけの街だけど、一緒に春を喜ぶよ。

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2019/3/11

報道番組を見ると、暗い気分になる。
正直に言うと、見たくない。
でも、こわごわ見る。
だって、忘れてはいけないから。
去年の春、三陸を訪ねた。
ボランティアだったなら良かったけれど、
自分は体力がなく、迷惑をかける側になりそうで。
それでも、
震災の跡は自分の目で見ておくべきだと思ってた。
常磐、磐越、東北と道を継いで行く。
自動車道沿いには、
放射線量の表示があり、胸がざわざわした。
気仙沼から田老までは、海沿いの道を走った。
山を越えると、海。
また山を越えると、ぽっかりと海。
入り江では、それぞれ
ここまで波が来たことを知らせる標識が立てられていた。
ところ狭しと住居が並んでいたはずの町は、土も新しい更地。
山側に築の浅い住宅が並ぶ。
海岸と町を隔てる、巨大な防波堤が造成中だった。
その夜は、
高台に移築したというホテルに一泊した。
ホテルの窓からは、入り江が見渡せて、
更地と、重機が、街灯に白々と照らされていた。
その景色はいまも目に残っている。
三陸では殆ど写真を撮らなかった。
震災の爪痕に震え上がったこともあるし、
観光にきた後ろめたさも強かった。
被災した人たちは、
僕が写真を撮っているのを、どんな思いで見るのだろうと。
帰り道、
防波堤のない、小さな入り江に立ち止まる。
海はどこまでも青くて、怖いくらい綺麗だった。
被災者の皆様のご心労お察しいたします。
どうかお体をお大事になさってください。
亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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