2019/7/30

湖面に靄が出ていた。
靄の生まれる所に行ってみよう、と靄を追いかける。
この辺り、と思しき場所で再び湖面を見やると、
靄はまださらに奥の湖面にある。
追いかける。遠ざかる。
追いかける。遠ざかる。
面白い。
なんかの寓話みたいだった。
昼食を取ろうと、喫茶店に入った。
喫茶店はビルの4階。
通されたのは窓際の席で、中庭の緑が良く見える。
混む時間帯だし、
ちょっと洒落たメニューだし、待たされるのは仕方ない。
水を飲みながら中庭をぼんやり眺めていた。
中庭は小さいながら緑が生い茂り、時おり鳥影が見える。
おや、あの木陰にひらひらするものはなんだろう。
たぶん蝶、かなり大型、しかも青い。
アオスジアゲハだ!!
そば粉のガレットを食べながら、
僕はアオスジアゲハの観察を続けた。
彼女(アオスジアゲハは見た目から雌雄が分からない)は、
中庭を反時計周りに移動し、北東の角から出て行った。
10分後、再び彼女は戻ってきて、
同じコースをゆっくりと移動する。
長居するのを見るに、きっと食草があるんだろう。
しばらく見ていると、
もう1匹、アオスジアゲハがいることが分かった。
飛ぶコースが少し違うのだ。
こちらの子は南東の角から中庭を出て行った。
大型の蝶には道がある。
子供のころ、蝶を追い掛け回した僕は知っている。
道で待っていると、かなりの確率で再会できるのだ。
アオスジアゲハは小学生の僕には憧れの蝶だった。
まず、青いってことがイカす。
ほかのアゲハより高く飛ぶ上に、スピードも速い。
当時の僕には捕まえることはできなかった。
そわそわと昼食を終えて、中庭に降りた。
蝶の気配はなし。
せっかくなので、蝶の道に沿って、中庭を回った。
食草らしき木を眺めていると、
なんと、アオスジアゲハがひらひら飛んできた。
こちらの姿に驚いて逃げ去るかと思いきや、
僕の目の高さでふわふわしている。
手を伸ばせば、届く距離。
昆虫にも分かるのかなぁ、捕まえる気がないってことが。
しばらくすると、アオスジアゲハは梢高く舞い上がった。
さよなら、元気で。
夏が始まりました。

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2019/7/13
夜に出かけるのが、割と好きだ。
花見に、花火。
いったん着替えて、
なんならひとっ風呂浴びて、外に出ると、
蒸し暑かった日でも、そこそこ夜風が気持ちいい。
雪国に住んでいた時は、夜の雪も見に出かけた。
地方に住むと、夜出歩く人はぐっと減る。
静かな市街地を歩いていると、なんだか別世界に来たみたいだ。
激混みの終電なんて、嘘みたいだねぇ。
久しぶりに、月下美人を見ることができた。

室内には、ふうわりと良い香り。
夜9時になると、花はほぼ満開になった。
屋外で、月の光に照らされる姿も見てみたいものだけど、
ここの月下美人は箱入り娘。
日本で流通する月下美人は、
挿し木によるクローンが多いそうだ。
月下美人はクローン間では、受粉しても結実しないそう。
まるで人間を楽しませるだけに咲くようだ。
僕が野生の月下美人を見ることはないだろうけど、
今晩あたり、静かに咲いてるんだろうか。
コウモリは飛んできたかな。
彼らの生息地が守られますように。
機嫌よく、帰宅しました。

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