前回の
中気密でいいじゃないかの記事に次のようなコメントをいただきました。
投稿者:うーん・・・。2010/11/22 12:36
自然環境を断絶する高気密住宅は日本人には合わないのではないでしょうか?
あと湿気云々の話ですが、北欧の住宅では防湿シートなど使用していないそうです。なぜだかわかりますか?
依然として、高気密住宅に対して誤解されている方がいらっしゃるんだなぁと感じざるを得ませんが、高気密と中気密それぞれのメリットとデメリットを正しく理解した上で、それでも機械換気に頼る高気密は好きじゃないと言われる方もいらっしゃるでしょう。
そういうご意見に反論する気持ちは全くありません。
私だって、機械に頼らず、日本の在来工法の利点を活かしながら、自然の中で暮らせれば、その方がいいと思います。
ただし、それは、古き良き時代に可能だった話で、列島全体がヒートアイランド化し、隣家の軒先がそこまで迫ってきている現在の日本では、大変、むずかしいこととなっています。
そんな生活を送るためには、山奥の一軒家でも建てないと無理でしょう。
そこで、健康で快適な生活を送るための建築工法として、コスト面を考えると高気密住宅が最適ということになるだろうと考えています。
確かに、高気密住宅にもデメリットはあります。
実際に住んでみて、感じるのは、
1 音が外に漏れない分、住宅内で響きやすい。
2 においの強い料理をするとにおいが籠りやすい。
1については、我が家にはリビングに吹き抜けがありますが、これを通して、2階の子供部屋ではリビングのテレビの音がかなり大きく聞こえます。
どの部屋もオープンにして、全館を1台のエアコンで空調するというのは夢ですが、音の問題、プライバシーの問題、2のにおいの問題を考えると、各居室のドアは閉めても生活できるように各室エアコンに対応できる造りにしておくことが大切です。
2については、レンジフードを強にして運転しなければなりません。
デメリットは以上の2点だけです。
熱が籠りやすく、冬はいいが、夏が暑すぎると言われる方もいらっしゃいます。
当地、鹿児島市は夏場に桜島の降灰に見舞われるという特殊事情もありますが、夏場は密閉して24時間3台のエアコンを運転しています。
それでも、月の電気代は一番高い月でも12,000円程度です。
これは遮熱施工の効果も大きいですが、昼間、外気を入れないので熱が籠ることがないというのが大きな理由だと思います。
以上、考えられるデメリットを挙げてみましたが、その他で高気密のデメリットとして言われることは、誤解やでまかせと言った類のものが多いような気がします。
その例を挙げて、ひとつずつ私の考えを書いてみます。
1 高気密は自然を遮断した施工で健康に良くない。
高気密住宅は自然を遮断してはいません。逆に新鮮な外気を取り入れ、健康に必要な計画換気を可能にしています。
中気密では、計画どおりの換気ができず空気が汚れてしまいます。
特に2階建ての場合、C値2.0程度でも、冬場、2階の居室に全く新鮮な空気が入ってこないという現象が生じます。
一方、高気密住宅は常に新鮮な空気をフィルターを通して取り入れます。
「高気密住宅は空気がおいいしい」と言われるのは、そのためです。
これは、実際に住んでみた人でないと分からない感覚なのかもしれません。
高気密が遮断するのは、家の中と外ではなく、壁体の中と外です。
壁の中に空気を入れる必要はありません。
外壁側に通気層を設けることは必要ですが、内壁側から敢えて空気を入れる必要はありません。
2重通気工法は大変、理にかなった工法なのでこれを否定はしませんが、壁体内に空気を入れる理由として、木に呼吸させるためと言われると、それは疑問です。
残念ながら、柱や梁に使われる木材は既に生きてはいません。
根を切られ、キンキンに乾燥された木材は既に呼吸することはありません。
ただし、湿気を吸ったり吐いたりする調湿効果はあります。
また、オゾンを発生し森林浴効果も持ちます。
このような現象から「木は生きている」という表現が使われますが、これは比喩であって、木材が実際には生きていないことは皆、知っています。
中気密の場合、壁体内に入った湿気を木材が吸ってくれれば、結露が防げるという効果は期待できますが、高気密の場合、初めから湿気を壁体内に入れないという発想なので、柱や梁の調湿効果には期待していません。
また、中気密論者で木の調湿効果に大きく期待する方もいらっしゃいますが、調湿効果というのは、冬から夏、夏から冬と言った長いスパンでは有効ですが、一旦、水分が飽和状態になってしまえば、それ以上の吸湿はあまり期待できませんし、一旦、乾燥してしまえばそれ以上の排湿効果も期待できません。
冬場は毎日、湿気を出し続け、梅雨時や夏場は毎日、吸湿し続けるというのは妄想です。
1日のうちでの温度差による調湿効果は、そんなに大きいものではありません。
2 高気密住宅は湿気がこもる。
我が家も仕上材に調湿効果のあるものはふんだんに使用していますが、それらの調湿効果に大きく期待してはいけません。
湿気を取り除くのに一番効果があるのは、換気なんです。
適正な計画換気こそが必要であり、それを可能にするのは高気密なんです。
投稿者の方が言われる「北欧では防湿シートなど使用していない」という情報源はどこなのか興味のあるところです。
壁の厚みを2×4の2倍にもして、防湿シートは使わないという例もあるかもしれませんが、むしろ、防湿シートを施工する方が主流なのではないでしょうか?
防湿シートの内側にパーティクルボードを施工するなどして、日本より遥かに防湿に配慮している例が多いものと思います。
ただし、高温多湿の日本では、夏型の逆転結露現象が心配です。
高気密と言えども壁体内に入り込む湿気をゼロにすることはできません。
これをどうやって外へ出すかですが、外壁側ほど透湿抵抗の低い建材を配して通気層から排出するというのが一般的でしょう。
2重通気工法なら内壁側の通気層から排出します。
(冬場にこれが機能するかが心配ですが、)
我が家では、気密シートではなくザバーンという調湿シートを使用しています。
普段は気密シートとして働き、湿気を通しませんが、壁体内の湿度が高くなると湿気を外へ出すという調湿効果を持ちますので、夏型結露対策に有効です。
また、気密シートの経年劣化が心配という方もいらっしゃいますが、これはまだ、どの程度の影響が出るのかよく分からないという現状ではないでしょうか?
私はさほど心配は要らないと考えているんですが、
3 高気密は息苦しい。
ここまで読んでいただければ、これが見当はずれの指摘だということはお分かりいただけますよね。
ただし、投稿者の言われる「日本人に合わない」という表現
「日本の気候に」ではなく、「日本人に合わない」というのはなかなか、いい指摘なのかもしれません。
せっかく、高気密高断熱の性能のいい家を建てても、24時間換気のスイッチを切ってしまっては、空気は淀み、結露、カビ、ダニひいてはシックハウスの原因となります。
スイッチを切るのが、電気代がもったいないという発想であれば、これはいかにも日本人的
投稿者のご指摘はそういう意味ではないかもしれませんが、高高住宅に住まわれる方にはくれぐれもご注意いただきたい点です。
4 高気密にすると給気口から排気口へ向けての空気の流れが直線的になり、部屋の隅では空気のよどむ個所がある。
これは、なかなか的を射た指摘です。
確かに高気密になればなるほど、空気の流れが直線的になるのは、実証されています。
しかし、南 雄三さんに言わせれば、そんなの小さな議論だということになります。
ショートサーキットや給気不足で、部屋の中央に新鮮な空気が届かない可能性のある中気密論者が自分のことは棚に上げて言っているのだとしたら、それは本末転倒というものでしょう。
さて、ながなが書いてきましたが、私も中気密の方がいいんだという方のご意見はぜひ伺ってみたいという気持ちがあります。
多忙のために、コメントになかなか返事できないこともありますが、ご意見をお聞かせいただければ光栄です。
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