最近、毎日のように麻雀をしに来てくれる三人の男の子がいます。
三人…そう彼らは貸し卓利用者として、この雀荘を訪れてくれるのです。
初めて来た時、彼らは三人で、
マンズを含めた四人打ち用の麻雀をしていました。
その日の麻雀を終えた彼らに対し、
「三人さんでマンズも入れて麻雀しはるの珍しいですねー。」と声を掛けました。
すると
「ほらー!やっぱマンズ多いねんって!」
「しまった…!そうなんですかー?!」
「でも、林さんはこれでするって言ってなかったー?」
と三人が一斉にざわつき始めました。
ついでに、
「ドラってめくれたやつの次のやつですよねー?」
「ツモってどこまでツモるもんなんですか?」
などの質問攻めに遭うことに。
彼らは、それくらい、麻雀のことを知らないで遊びに来てくれたのです。
スゴいと思いました。ホントに嬉しい出来事でした。
それから彼らは毎日のように遊びに来てくれて、毎日のように麻雀の質問をして帰っていきます。
彼らが置いていったスコアシートには彼らの名前が
カツオ
たけし
ハマジ
と書かれていました。
なんで、全員有名アニメの悪ガキ代表の名前やねん。
しかも、そんな名前が全員ぴったりすぎでした。
もう彼らが愛おしくてたまりませんでした。
同時に、彼らはなんだか懐かしい気持ちにもしてくれました。
麻雀覚えたての頃はみんなこんな感じだったんだな。
あの頃は目を輝かせて何でもない質問をしていたんだな。
あの頃は無邪気に牌を触っているだけで、ヨダレが垂れそうになるくらい楽しい気持ちになっていたんだな。
あの頃は…
そうあの頃は。
秘密基地
夜ふかし
クリスマスの朝
台風到来の夜
停電
土曜日の放課後
図工
理科の実験
ねり消し
木のぼり
セミの抜け殻
チョーク
黒板消しをパンパン
帰りの会
好きな子のいる修学旅行
班決め
クラス替え
席替え…
もう数え切れないくらいのコトでワクワクドキドキしたあの頃。
新しく買ったノートを開くだけでワクワクしていた…そんなあの頃のことを彼らは思い出させてくれました。
そんな懐かしさは、自分が今仕事中だというコトを忘れさせ、
ノスタルジックな感情に浸っては思わず涙まで流してしまいそうになるほどに危険な…
何より自分の大切なものを思い出させてくれる甘美な誘惑でした。
そんなある日、彼らが突然こう言ってきたのです。
「お兄さんー!麻雀教えてくださいよー!」
「フリーだったらお兄さんと打てるんですかー?」
「一緒に打ってくださいよー。」
おぉ…!
なんと可愛い奴ら。
感動しました。嬉しかったです。すぐに卓立てました。
いつもどんなときもドラ単騎でリーチをしてくるカツオ。
いつもドラを暗刻で持ってるけど、役がイマイチ分かっていないたけし。
いつもリーチがフリテンのハマジ。
もう三人まとめてボッコボコにしてあげました。
愛のムチです。
三人ともまだまだよっわいよっわい麻雀でした。
「貴様達は一体何を今まで学んできたんだ!」と叱り飛ばし、
「しかし、自分も昔はそうだったんだよ」と
「きちんと考えるコトをサボらず麻雀したら成長するよ」と
「むしろ…そんな大切なことを思い出させてくれるあんた達は最高に良い人達だよ」と。
そして、「昔ってスゴい些細なコトでもワクワクしたよなぁ?」と三人に聞いてみたところ、
「わかりますわかります。」
「なんか空気自体が違ってた気がします!」
「オレ、席替え超ワクワクしましたわー。」と言われました。
自分は、まるで彼らの先生にでもなったような素振りで
「よしっ!みんなであの頃の気持ちに戻って席替えでもすっか!」と仕切り、
全員で一斉に「東・南・西・北」の牌を引きました…!
「じゃ、オレが東で、南がカツオ?あ、オレ席ここね。たけしは…?西?じゃそこ。ほんでハマジはそこで…と…。」
いや、これ何がおもろいねん。
びっくりするほど席替えにワクワクしなくなった自分達でしたが、
不思議とそれにがっかりすることはなく、
むしろそういった思い出を大切に、
いつでもどんなことにでも初心に帰ってワクワクできるよう心掛けられる
そんなチャンスをくれた彼らに感謝をし、
先日の金環日食をワクワクしながら見てみようと思ったら
見事に目がやられました。
日食メガネってなんやねん。

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