昨日今日で東京に行ってました。
昨日の夕飯は、山頭火っていうラーメン屋。美味かったけど、メンマしょっぱかった。
で、恒例のハンズに。
購入した物:三脚、三角架、ビーカー、アルコールランプ、るつぼ、るつぼばさみ、洗瓶、試験管、試験管ばさみ。
一気に家が実験室化しました。
今日は、下北沢に行って、色々見た後、電車で帰ってきました。
楽しかったです。
小説:夢のこれからH
次の日の放課後も、横瀬さんは同じ場所で泣いていた。
「おい、お前何か嫌な事があったんだろ。言ってみろよ、楽になるからさ。」
智が優しく促すが、彼女は再び顔を手で覆って走り去ってしまった。
「やっぱり。あいつじゃなくても、中学生があんなになるなんてただ事じゃないぞ。」
「そうだね。俺たちが力になれると良いけどね…」
そう答えながら、康裕には全く力になってやれる自信がなかった。そこには、彼女が何も言わないという事実があった。
「とにかく、横瀬さんが何か言ってくれないとどうしようもないな。あの調子じゃ絶対無理だろ。」
「ああ…」
智は少しの間考えた後、
「だけど、あれはどう考えてもいじめじゃねえか?」
と付け加えた。分かっていてもどうにもできない、そんなどうしようもないもどかしさが、体内から玄関中の空気に広がっていったように感じた。
「どうすれば良いんだ…」
そういって振り返ると、そこには智ではなく、彼が立っている。そして康裕は気付かぬうちに、もう何度目かも分からないあの教室に、また来てしまっていたのだ。だが何故か、いつもと違う何かを感じた。自分の身に何も起こっていないのもその一つだろう。しかし、それよりももう一ついつもと全く違うのが、横瀬さんの存在だった。
こちらには気付いていない様子で、自分の席に座っている横瀬さんは孤独に見えた。
「康裕、俺が言った事、覚えてるよな。これは、横瀬さんの少し先の現実。あくまで今、予定されている現実だけどね。」
彼女の手には、細いナイフが握られている。その光る刃物は、徐々に場所を変え、喉元まで到達した。そして、次の瞬間、横瀬さんの手が勢い良く振り切られた。
「おい!」
驚いて駆け寄ろうとする康裕を、少年が止める。
「大丈夫。」
「何が大丈夫なんだ!」
康裕は激しい恐怖と怒りを覚えた。それは、横瀬さんを追い詰めた者へのものだったかもしれないし、手を差し伸べられなかった自分へのものだったかもしれない。
「誰がこんな―」
「大丈夫だ、康裕。こうなって良い訳が無い。辛い思いをした人がこんな最期になって良い訳が無い。でも、俺は康裕の夢の中の人間だから、どうすることもできない。」
少年は康裕の目を見ると、続けた。
「康裕が、どうにかするしかないんだ。本当は亮君の時にもこうなってれば良かったんだけど、あの時はまだ、時間が足りなかった。水と油は、混ざらないから。」
ふと思い出して、康裕は聞いた。
「そうだ、時間っていうのは? 時間があれば亮も死ななかったって事だよな。」
少年は、最初困ったような顔をしたが、やがて答え始めた。
「現実と夢は水と油みたいなもの。普通にしてれば、まず混じり合う事は無く、層を作ってるんだ。だけど、水と油は、乳化剤が加わると、ある程度混ざることができる。今回、俺がその乳化剤みたいな役割をして、少しずつ夢と現実の境界を無くしていこうとしてたんだけど、あの頃はまだ、今みたいに夢の中の康裕が安定してなかったから、ちゃんと喋ることもできなかったし、他の人の姿を見せることもできなかった。だから、あの時康裕は、自分が駅の屋上から飛び降りる夢を見たんだ。」
「なるほど…」
康裕は複雑な心境だった。もう少し早ければ、亮はまだ生きていたかもしれない。そう思うと、胸が痛かった。だが、知っていたところで、何もできなかったのではないかという疑問に対しても、完全否定はできなかった。
「でも、今回は違う。康裕次第では、好きな人が死ぬのを止められるかもしれないんだ。」
好きな人と聞いて、康裕はどきっしたが、この少年には何も隠せないと分かっていたから、何も言い返すことができなかった。
「とにかく、どうすべきかよく考えて。今、一人の人の命を背負ったんだから。」
康裕は小さく頷き、教室の戸を開けた。外は学校の玄関で、智が慌てている声が聞こえた。

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