常設展示の一番手は、2階に上がってすぐのシンキング(=thinking)ギャラリーです。
水族館では、じっくり魚を観察することはあっても、なかなか説明文をじっくり読むまでには至りません。
そこで、読むのでなく、水槽を見ながら疑問を提示し考えてもらおう、というのが、シンキングギャラリーのコンセプトです。
”形”を考える水槽。展示している魚はとりどりの形(のはず、見づらくてすみません!)。
例えば、上の水槽には、いろんな形のオブジェが入ってますが、これは、魚の形について考えてもらおうという水槽です。
魚と言えば、一般的なのはマグロやサバの「紡錘型」ですが、そのほかにも、いろんな形があります。
バラクーダのようなスレンダーな「矢型」。
カレイやヒラメのような「平らな形」。
両サイドからパシンと押しつぶされたような、イトヒキアジやエンゼルフィッシュの薄い「紙のような形」。
アナゴやオオカミウオのような、「ひも状」のもの。
ハコフグやハリセンボンのような「箱型」。
どの形も一長一短、どれがいちばん生きるに効率がいいかは、その魚がどこでどういう生活をしているかによります。
常時沖合を泳ぎ続ける長距離ランナーは、まずは泳ぐのに一番効率のいい紡錘型を選ぶでしょう。
底でじっとエサがやってくるのを待つには、泳ぎは多少遅くとも、平たい形、逆に瞬発力で獲物を捕らえるには矢型が一番でしょう。
箱型の魚は泳ぎは速くありませんが、ホバーリングもバックも上下移動もできるし、その上、敵にそう易々と飲み込まれたりしません。
蛇のようなくねくね型は、狭いところもすいすい泳げますし、紙型の魚も、珊瑚礁や海草の中をくぐり抜けて泳ぐには便利、しかも薄くても面積は大きいので食べられにくい、と言った具合です。
鮮やかな熱帯魚も深度が増すと色が消えていく事が実験できる水槽。
同じように、色や模様も、その魚の生活と密接に関係しています。
でも逆の場合もあります。
沼地に棲むガー
異なる時代、異なる生息地なのに、同じような形態に進化した魚がいます。
古代魚と沼地に棲む魚は、隣同士の水槽です。
ご覧になると、双方とも、しっかりとした足のような胸びれや、堅い鱗をもっていて、さらに空気呼吸ができたり、体の乾燥を防ぐために泥沼に潜れるという共通点が見られます。
これは、古代の魚も沼地の魚も、同じように、水や酸素を得にくい沼地で生きているためです。
砂漠の水槽
また、砂漠に棲む魚と、深海に棲む魚も隣同士の水槽にいます。
双方の水槽の動物たちは、あまり動きません。
これは、砂漠や深海と言った採餌や温度、結婚相手探しの厳しい環境で、無駄なエネルギーを費やさないためのものです。
こんな風に、同じ海域でも、生息場所や生態によって形や色が変わるのに、時代や場所を越えた別種が、同じような環境のために同じような進化をみせることもある(ガクジュツテキには「収斂的進化(シューレンテキシンカ)」と呼ぶそうです・・ボランティアガイドの教科書より)、生き物って面白いです。
また、このギャラリーでは、生きた魚の他に、魚のパーツ合わせゲームや、ボタンを押して魚の出す音を聞くコーナー(海の中は静かではありません!)、硫化水素の出る環境で生きる動物のビデオなどでも、「what is a fish?」という疑問と理解を深めて頂けるようになっています。