BBSには以前に書いたのですが、セミ鯨研究室のSクラウス博士とRローランド博士が編著した本「The Urban Whale」がアメリカで発売され、今日、私の手元にもやってきました。
セミ鯨の研究者それぞれがそれぞれの研究について一般向け書いた本のようですが、詳細なデータと引用文献、セミ鯨に関する面白い写真がついていて、かなり専門書に近い印象です。
目次をご紹介すると、以下のようです。
1 都会の海のセミ鯨
2 絶滅に瀕した種:北大西洋のセミ鯨
3 セミ鯨が自ら語るもの:個体識別用写真カタログ
4 発見、科学、管理のための調査
5 巨大な肉食獣とミクロな食べ物と見つけにくいレストラン
6 高投資、低利回り:セミ鯨繁殖の不思議
7 遺伝子に現れるセミ鯨の過去と現在
8 鯨の内側:ホルモン、生体毒素、寄生生物
9 外観から見るセミ鯨の健康状態
10 音によるコミュニケーション:会話音と騒音の影響
11 鯨の世界を聞く:交通の激しい海でセミ鯨を管理・保護するための音
12 セミ鯨の死:死者から生者へのメッセージ
13 危機にさらされているセミ鯨と漁業従事者:共存は可能か?
14 むち打ちの刑:セミ鯨と船舶の衝突事故
15 セミ鯨と地球温暖化:温暖化の将来と向き合う
16 大きな絵:セミ鯨の時空間モデル化
17 都会の鯨シンドローム
ちなみにちょと読んだ第一章では、まず、こんなエピソードが載っていました(以下あらすじ)。
1935年、遊漁船がセミ鯨の子を追いかけて楽しもうと、ライフルで100発以上を発射し、そばにいた母親を追い払おうとした。が、体中に傷を負った母親は、6時間の格闘の末、子鯨が死んで船に横付けにされるまで、子どもをあきらめることはなかった。
このとき、新聞記者が同乗していたため写真が残り、後年、ニューイングランド水族館のセミ鯨研究室で、この鯨は’59年に調査で撮った鯨の写真と同じ鯨であることが判明した。
その後、80年に再び調査で確認、人間には近づかない方が無難だと学んだからか、その後数回しか確認されず、子どもを連れている姿も一度も確認されなかった。
最後に研究者がこの鯨に出会ったのは95年で、船のスクリューとぶつかってできた致命傷を負っていた。おそらく死に至るまでに、感染症と痛みで数ヶ月は苦しんだと思われる。
この母鯨のエピソードは、特に後半は、決して特別なものではなく、こんなふうに、人間の海上活動の影響を受けている北大西洋セミ鯨が、年2回発行のニューズレターでは、毎回のように紹介され、種の存続が危ぶまれています。
でもクラウス博士は、「いいニュースが2つある」と続けています。
1つは、年に2頭の母鯨の命が助かれば、いい方向に向かう、そしてその方策は分かっている。
もう1つは、研究者、政府関係者、業界代表者、環境保護団体が一致協力して、セミ鯨を絶滅から救おうと努力している。
「この本は、そのためにこれまでやってきた調査研究を総括し、セミ鯨の絶滅は不可避ではないという証拠とするものです。」
・・・・・さて、これから先は、まずは読んでから。
で、今のところ、私が一番びっくりしているのは、スコット・クラウス博士の写真です。
(まず認めますが、自分のことはしっかり棚の一番上に上げていますよ!)
私がボストンにいた頃と比べて、ふくよかで、ずいぶんと髪に白いものが・・・。
「The Urban Whale North Atlantic Right Whale At The Crossroads」
編集:Scott D. Kraus、Rosalind M. Rolland
発行:Harvard University Press