2021/9/16

遊漁船クロマグロ枠創設の検討が始まりました  釣りのマナーとルール
クロマグロの遊漁枠創設に向けた検討が始まりました。
わが国の遊漁制度近代化に向けた前向きな第一歩と捉えたいと思います。
以下、昨日の時事通信ニュースからの引用です。

◇◇◇◇◇

2021-09-15 19:40経済
遊漁船マグロ枠創設案=漁獲量を厳密管理―水産庁

太平洋クロマグロの資源管理をめぐり、遊漁船向けに漁獲枠を創設する案が水産庁で浮上していることが15日、分かった。
クロマグロのレジャーによる釣りは、大型魚(30キロ以上)の漁獲量急増を受け、現在は禁止となっている。
同庁は遊漁船業者や釣り人からの再開への要望を踏まえ、漁業者と同じように枠を設けた上で、厳密に管理することを模索している。
青森県などの日本海側では、遊漁が観光資源となっている地域もあり、経済への影響を考慮すると禁止し続けるのが難しい情勢となっている。
水産庁内では「枠導入を議論せざるを得ない」(幹部)との見方が強まりつつある。

〜中略〜

同庁は遊漁について、さらに詳しく実態把握を進めつつ、許可制とする米国の事例などを参考に適正な管理体制を検討する。
ただ、「遊漁者に1尾も捕らせたくない」(政府関係者)と考える漁業者と、枠を多く確保したい遊漁者の利害が対立し、調整は難航しそうだ。 

[時事通信社]


◇◇◇◇◇

問題の本質は最後の一文に凝縮されています。
漁業者と遊漁者(および関連業界)の対立する利害をどのように調整するのか。
これまで水産業の振興をミッションとしてきた水産庁だけで、国民目線からの真にフェアな調整を担えるのか。
スポーツ庁(文科省)や観光庁(国交省)なども巻き込んで、開かれた議論を行うべきではないか。

衆院選を控えたこの時期、水産族といわれる議員さんたちに質問をぶつけてみたい気もします。


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2021/8/27

クロマグロ遊漁規制について〜問題の所在と提言  釣りのマナーとルール
 
突然のクロマグロ遊漁規制(全面禁止)のニュースに驚いたのは私だけではないと思います。


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いったい何が起こっているのか。
この一週間自分なりに調べて、論点を整理してみました。
以下、長文になりますが、よろしければお付き合い下さい。


1.背景および経緯

まず背景として、クロマグロは平成30年に改正された漁業法に基づく資源管理制度の対象になっており、漁業者は、年度毎にあらかじめ割り当てられた漁獲枠を超えてクロマグロを獲ることはできません。

この漁獲枠は国際合意により日本に認められた漁獲総量を配分したものですが、この漁獲総量には遊漁による漁獲量も含まれます。
しかしながら、遊漁者は漁業法に基づく資源管理制度の直接の適用対象ではないため、遊漁による漁獲量見合いのバッファーとして、国際合意に基づく漁獲総量の一部を配分せず留保する運営が行われてきました。

本年6月、遊漁による漁獲量を把握するため、クロマグロを採捕した遊漁者に水産庁あて報告を求める運営がスタートしました。
すると、遊漁者による漁獲量がこれまでの想定を大きく上回り、このままではバッファーが足りなくなる可能性が高いことが判明。急遽対応が必要になりました。

以上が今回の措置に至った大まかな経緯です。


2.問題の所在

おおよその事情は分かりましたが、ここで幾つかの疑問が生じます。

(1)漁業者ではない遊漁者の行為を漁業関連法で規制できるのか

この点については、法令に根拠があれば可能です。

例をあげれば、漁業権を侵害する行為は、漁業法に基づき何人を問わず行ってはなりません。
また、漁業調整規則に基づく禁漁期間や体長制限なども、漁業者・遊漁者問わず適用されます。

クロマグロをはじめとする資源管理制度の対象魚種については、漁獲総量が漁獲可能量(漁獲枠)を超えるおそれがある場合、農林水産大臣ないし都道府県知事は、漁業法33条に基づき採捕の停止を命じることができます。
その対象者は漁業者に限定されないので、全体としての総量管理の目的は達成されます。
最終的にはこれがバックストップになります。

今回のケースでも、漁業法33条に基づく採捕一時停止を検討することは可能だったと思われますが、実際には漁業法121条に基づく委員会指示という方法で、「遊漁者による採捕のみ」に制限をかけようとしました。
問題はここからです。


(2)漁獲総量が逼迫した責任は遊漁者にあるのか

この点は、明確にNOです。

今回の問題の本質的な原因は、資源管理制度の枠組みの中に遊漁による漁獲量をコントロール可能な形で組み込んでいなかったという制度の欠陥と、年度の漁獲量配分に際して遊漁による漁獲量を過少に見積もった運営上のミスが重なったことにあります。
必要な制度を構築しなかった不作為の責を負うべきは遊漁者ではなく、漁獲量の見積もりについても然りです。

にもかかわらず、今回の措置に関する水産庁のアナウンスの仕方は、あたかも遊漁者の行為が原因でわが国の資源管理に困難が生じているかのような誤った印象を、国民および遊漁者自身にも与えかねないものです。
水産庁が行うべきは、罰則をちらつかせて遊漁者を「恫喝」することではなく、このような状況に至った経緯と責任の所在を真摯に説明して、いま一度謙虚な姿勢で資源管理に対する遊漁者の理解と協力を求めることだと思います。

水産庁のツイッターが、いみじくも呟いています。
「都道府県や遊漁団体に対して協力要請をしてきたが歯止めが効かず・・・」
当たり前です。そんな他人任せのスタンスで、現場を動かせる筈がありません。
根本的なところから間違っています。


(3)遊漁者による採捕のみを制限する法的根拠は何か

今回の広域漁業調整委員会の指示(遊漁による採捕禁止)は、漁業者に割り当てた漁獲枠は維持しつつ、遊漁者の行為のみを制限しようとするものです。

クロマグロ漁は漁業権漁業ではなく、漁業者が遊漁者を排除して優先的に操業する権原は無いはずですが、いったいどのようなロジックを立てればこれを正当化できるのでしょうか。
(漁業権漁業であれば、物権的請求権行使としての妨害排除請求が可能ですが・・・)
わが国は法治国家ですから、法的根拠なく国民の権利が制限されることはないと信じたいのですが、残念ながら浅学ゆえ、私には皆目見当がつきません。

ちなみに、「漁業法121条があるからだ」という説明は循環論法になるので理由になりません。


(4)主として漁業関係者により構成される漁業調整委員会が、漁業者と遊漁者の利害対立が現に発生している事案について、遊漁者の権利を制限する指示を出すことが許されるのか

本件に関する一番の疑問はここです。

遊漁は国民が有する基本的な権利であり、これを制限するためには、公益上の相当の理由と法令上の根拠、適切なプロセスが必要です。
法令上の根拠は漁業法121条ということになっているようなので一応あるものとして、ポイントは、公益上の必要性と、それにより権利が制限される国民の負担を適切に評価して、公正な立場から充分に慎重な検討がなされたかということです。

言うまでもありませんが、特定の業界固有の利益は公益ではありません。
また本件においては、各委員の選出母体の業界の利益と、規制対象となる遊漁者およびその影響を受ける関連業界(遊漁船業界など)の利益が明らかに対立します。通常、このような利益相反関係に立つ委員は決議に参加しないことで公正性が担保されますが、本件ではどうだったのでしょうか。

折角オブザーバー(遊漁関係者)の意見を聞いても、利益相反関係にある当事者が決議に参加しては意味がありません。
それだと定数に足りず委員会が成立しないというのであれば、そもそも本件はこの委員会で取り扱うべき性質の事案ではなかったということです。

これらの点については、追って公表される委員会議事録を、過去分も含めて精査すれば明らかになるものと思われます。

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その結果、万が一プロセス上の瑕疵があれば、委員会指示の有効性自体にも疑義が生じる可能性があります。
各委員、オブザーバーの発言のニュアンスも含めて、正確な議事録が公表されることを期待します。


(5)キープにとどまらずキャッチアンドリリースまで禁止する必要があるのか

この点も、素朴に疑問に思うところです。
国際合意の枠組みにおいて、リリース分はカウント外ではなかったでしょうか。

国民の権利を制限する規制は、真に必要な最小限度にとどめるのが原則です。
資源管理制度の運営において実害のない行為まで制限する過剰な規制は避けなければなりません。


3.漁業法121条に基づく「指示」について

水産庁のアナウンスでは、遊漁者が命令に従わない場合には罰則の適用があることが強調されていますが、実際に条文を見てみると、その前段階において、遊漁者の反論の機会が法律上保証されていることがわかります。

○121条
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○121条4項で準用する120条各項
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すなわち、農林水産大臣は、委員会指示に従うべき旨の命令を出す前に、15日以上の期間を設けて異議申述の催告を行い、対象者から異議の申出がない場合または異議の内容に理由が無い場合に限り、指示に従うべき旨の命令を発出します。
罰則を伴う義務が確定するのは命令が発出されたときです。

異議申述の機会があるといっても、単なる感情論の不平不満では「理由が無い」とされてしまうので、法的な根拠を示す必要があります。
これは事案によりケースバイケースですが、もしも私だったら、主意的主張として上記2.(4)の論点を中心に利益相反を含むプロセスの瑕疵を指摘し、指示全体の無効を主張した上で、予備的主張として上記2.(5)の論点を中心に過剰な規制であることを指摘し、指示の一部(キャッチアンドリリース禁止)の取消しを主張すると思います。
(農林水産大臣は、委員会指示の内容が妥当でないと認めたときは、121条4項で準用する120条4項に基づき、指示の全部または一部を取り消すことができます。)

本件に限らず、不合理だと思うことに対しては声を上げることが大切です。
先般、コロナ対策を飲食店に徹底させるために政府が取引金融機関を利用しようとして世論の猛反発に遭い、撤回した事件がありました。
役所も人間ですから時には間違えることもあり、それはやむを得ないことです。
その場合に、お上の言うことだからと諾々と従うのではなく、また一度決めたことだからと固執するのではなく、双方向のアクションにより機動的に修正することができるのが成熟した社会だと思います。


ちなみに水産庁のHPには、「指導に従わない遊漁者」イコール「悪質な違反者」であるかのような誤解を生じさせるおそれのある資料が掲示されています。

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仮に委員会指示に基づく指導を受けたとしても、遊漁者には法律に基づく異議申述の権利が保証されています。
指導に従わないからといって悪質な違反者とは限らず、むしろ正当な主張をしているのかもしれません。
むしろ、この資料の記載振りの方が「悪質な印象操作」であるとの批判を受けかねないものであり、訂正した方がよいと思います。

アナウンスするのであれば、
@「命令」に従わない場合は罰則の適用があること
A「命令」発出前には異議申述期間が設けられるので、異議がある場合は理由を明らかにして期間内に申し出ること
の2点を正しく伝えるべきで、悪質云々といった価値判断は一切無用です。


4.提言

私自身、クロマグロ釣りに関心はありますが、まだ一度もトライしたことはなく、直接の当事者ではありません。
部外者が何を言うかと思われるかもしれませんが、部外者だからこそ冷静に、客観的に見ることができるという側面もあると思います。
以下、ひとりの釣り人としての提言です。


(1)遊漁を含む資源管理の枠組みを早急に整備

絶滅の危機が指摘されるクロマグロの資源管理が重要であることは論をまちません。
新漁業法に基づく資源管理制度は国際的な枠組みを踏まえた優れた仕組みであり、これを一層効果的に運用していくべきだと思います。
そのためには、漁業だけでなく遊漁も管理対象とする必要があります。

遊漁が規制されることに抵抗を覚える釣り人も一定程度いるでしょうが、幸い、クロマグロ釣りを楽しむ釣り人は、キャッチアンドリリースやバッグリミットなどのスポーツフィッシングのカルチャーに馴染んだ若い層が中心です。
クロマグロに限っては、スムーズに受け入れられるのではないかと思います。

今回、クロマグロの漁獲量管理において問題が発生したことは残念ですが、これを奇貨として、遊魚を含めたより実効性のある資源管理モデルを構築するための具体的な議論(遊漁者との対話を含む)を早急に開始してはいかがしょうか。
持続可能な資源利用に向けて一歩前進する絶好のチャンスを得たとポジティブに捉えたいと思います。


(2)ライセンス制の検討

遊漁を管理対象とするにあたっては、ライセンス制の導入も検討すべきかと思います。
ライセンス取得には、キャッチアンドリリースの手順やクロマグロの資源状況を理解するための講習受講を条件とし、バッグリミットを管理するためのIDを付与します。
クロマグロ釣りを目的とする遊漁船の営業は登録制とし(キャッチアンドリリースの技術を習得したスタッフが乗船することが条件)、遊漁者を乗船させる際にライセンスIDやバッグリミット空枠の有無を確認してもらうことにしたらどうでしょう。
今ならスマホアプリで簡単に実現できると思います。
組織化困難(ゆえに漁業調整も困難)といわれる遊漁者を組織化するキーになるかもしれません。


(3)公正で開かれた漁業調整

実はこれが一番重要だと思っています。
遊漁を新たに加えた漁業調整の公正性を担保するためには、現在の漁業調整委員会のメンバー構成ではどうしても無理が生じます。
国民の共有財産である海面と水産資源の利用の在り方について、国民目線からの開かれた議論を行い公正な意思決定を行うためには、意思決定機関の在り方についても再考が必要と考えます。


5.最後に

本稿は、8月20日に遊漁によるクロマグロ採捕禁止のニュースに接して以降、自分なりに問題意識を持ち考察した内容を整理したものです。
調査不足やまだまだ分析の甘い箇所も多々あろうかと思いますが、一個人の作業ゆえ御寛容頂ければ幸いです。

私は法律の専門家ではありませんので、本稿で述べた法律の解釈や適用関係、効果等の正確性を保証することはできません。実際の事案への当てはめについては、専門家へご相談ください。

本稿で述べた意見は私個人の意見であり、いかなる組織、団体等の意見をも代弁するものではありません。
また私は、本稿の題材とした事案に関して利害関係を有するいかなる組織、団体等にも属しておりません。

最後までお付き合い頂き、有難うございました。


以上


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2017/8/11

今さらながら釣りマナーのお話  釣りのマナーとルール


とある緑地公園の入り口の看板。
いっそのこと立入禁止にしてください。(^^;


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さて、今日から三連休。
お盆の時期とも重なり、各釣り場は混雑が予想されます。
例年この時期は当ブログの閲覧件数も増えるので、余計なお節介であることは承知の上で、釣りのマナー等に関して書いた過去記事をいくつかピックアップしてご案内させていただきます。
ベテラン釣り師の皆様、当ブログの昔からの読者の皆様にとっては釈迦に説法ですので、スルーして下さいませ(笑)。

皆様にとってトラブルのない楽しい夏休みになることを、陰ながらお祈りしております。


〇釣り場でのマナーについて

http://sea.ap.teacup.com/siomatigoya/2102.html

http://sea.ap.teacup.com/siomatigoya/2015.html


〇最低限必要な安全管理

http://sea.ap.teacup.com/siomatigoya/1405.html


〇情報管理の必要性について

http://sea.ap.teacup.com/siomatigoya/1834.html


〇どんな釣り人になりたいですか

http://sea.ap.teacup.com/siomatigoya/1757.html

http://sea.ap.teacup.com/siomatigoya/853.html


〇漁港での釣り規制について

http://sea.ap.teacup.com/siomatigoya/2204.html


〇遊漁のルールについて(漁業権ほか)

http://sea.ap.teacup.com/siomatigoya/557.html


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2014/4/10

勝浦漁港の釣り規制について(その3)  釣りのマナーとルール
 

勝浦漁港の釣り規制の内容が判明しました。

堤防側も含む港内全体で、4:00〜16:00の間、全面釣り禁止。


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画像提供:ブルーボルボさん


今週末、この時間帯に、勝浦漁港への釣行を計画されている方がもしいらっしゃれば、ご再考をお願いします。


勝浦漁港の釣り規制について

勝浦漁港の釣り規制について(その2)


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2014/3/30

勝浦漁港の釣り規制について(その2)  釣りのマナーとルール
 

先日来、釣友の間で話題になっている勝浦漁港の釣り規制の件。
その後新たな情報は聞こえてこないが、私自身も大好きな釣り場の一つであるだけに、状況が気になるところである。

また、今回の件は、一部の釣り人の迷惑行為が原因といわれているが、特定の個人の問題と矮小化して片付けてしまったのでは、きっとまた別の釣り場で同じことが起きる。
関係業界を含め、釣りに携わる者皆が、決して他人事と考えることなく、正面から向き合うべき問題だと思う。


ちなみに、漁港施設での釣りをいったい誰が規制するのか。
これは、漁港漁場整備法25条に基づき漁港管理者となる地方公共団体である。
勝浦漁港の場合は、第三種漁港(注)に指定されているので、管理者は千葉県である。
管理者は、法に基づき、漁港の維持、保全及び運営その他の維持管理を行う責任を負うとともに、そのために必要な権限を有する。

漁港管理者が漁港施設での釣りを規制する理由としては、私見であるが、次の3つが考えられる。
(1)安全管理措置としての危険区域での釣り規制
(2)衛生管理措置としての荷捌き場周辺での釣り規制
(3)漁業行使権の保護のための漁港施設内での釣り規制

一般に、堤防先端部への立ち入りが規制されている場合、(1)の安全管理措置を目的とする場合が多いのではないかと思われる。
遊漁者がテトラから転落したり、高波にさらわれたりした場合、釣りを楽しむこと自体は自己責任とはいえ、遺された遺族から、予見可能な事故を未然に防ぐための措置を怠ったとして管理者の責任を問う訴訟が提起される可能性は否定できない。
また、万が一、不幸にも事故が起きてしまった場合、遭難者捜索や事後対応等に係る人的負担や費用も決して小さなものではない。
そのため、漁港管理者の立場としては、漁港施設の安全管理の一環として、危険区域への遊漁者の立ち入りを制限する措置を講じざるをえない。
港内の岸壁であれば、堤防テトラほどの危険はないと思われるものの、人が転落する危険は当然あるし、船舶が入出港する日中であれば、釣り人の投げる仕掛けが船舶に当たったり、スクリューに巻き付くリスクなど、漁業者側の安全にも配慮する必要があろう。

(2)の衛生管理措置であるが、勝浦漁港市場前岸壁の場合、実はこの問題が一番大きいのではないかと思っている。
水産物は生鮮食料品であり、その衛生管理は、消費者にとって最大の関心事の一つである。
従って、漁港管理上も、漁港施設を常に清潔で衛生的に保つことは、最も重要な課題の一つであるということができる。
腐ったコマセが足元に散らばり、ハエが飛び交いゴキブリが這い回るような岸壁で、消費者の口に入る水産物を水揚げすることは許されない。
漁港漁場整備法39条も、「何人も漁港施設を汚損する行為をしてはならない」と定めている。
漁港の維持保全の責任を負う管理者として、釣り人が残していく弁当の食べ残しや岸壁に散乱して悪臭を放つコマセは、極めて深刻で看過できない問題であると思われる。

(3)の漁業行使権については、拙稿「漁業権問題集中講座」でも述べた通りであり詳細の説明は省略するが、漁港管理者としては、漁業者の正当な漁業の操業が妨げられないよう適切に漁港施設を維持管理すべき責任を負っているものと考えられる。


以上のような理由から釣り規制が実施されると考えられるわけであるが、それではわれわれ釣り人として、どのような自衛手段を講じることができるのか。

ひとつには、言うまでもないことだが、漁港管理者に規制を余儀なくさせるような行為を行わないことである。
弁当の食べ残しやペットボトルなどのゴミを漁港施設内に捨てて帰ったり、コマセを足元に散らかしたままにしない。
自分のゴミは自分できちんと持ち帰り、コマセはきれいに洗い流して帰る。
ただし、釣り座を構える場所によっては、うまく洗い流せないこともある。
勝浦漁港の市場前がまさにそのような場所なのだが、車止めのある場所に釣り座を構えてしまうと、バケツで一、二度水を汲んで流しただけでは、車止めに遮られてすぐには足元がきれいにならない。
従って、釣り座を構えるのであれば、車止めと車止めの間の隙間からすぐに水が流せる場所にするか、そうでなければ車止めの内側にコマセをこぼさないよう十分に注意を払う必要がある。

また、漁業者の操業を直接的に妨げるような行為をしないことも当然である。
漁港施設は、釣り公園ではない。自然海岸とも違う。
注意を受けて漁業者に食ってかかるなど論外である。

そして、がつがつしないこと。
混雑している釣り場に無理やり参戦して、いたずらに混雑に拍車をかけたりしないことだ。
この点については既に述べたので、ここでは繰り返さない。


しかし、われわれ釣り人が注意するだけでは限界がある。
すべての釣り人が理性的、自制的で、マナーを守ることができるとは限らない。
また、漁業者とトラブルを起こすような釣り人は稀だとしても、コマセ等の残置を完全に防ぐことは難しいと思われる。
不特定多数の釣り人が一か所に集中すれば、どうしても問題は発生してしまうだろう。
そして、集まる釣り人の人数が多ければ多いほど、発生する問題の頻度や影響も大きくなり、やがて漁業者や漁港管理者の受忍の限度を超える。
従って、各種釣り情報を発信する釣り雑誌などのメディアや、釣具店の掲示板ないし店頭での情報提供、さらには個人のSNSなども、情報発信に際しては、釣り場環境へ与えるインパクトについて十分配慮する必要があるのではないかと思うのである。

ルアー雑誌などは、釣り場情報をあからさまに公開しなくても、十分に読み応えのある内容になっている。
立派な姿勢であり、いつも感心している。
餌釣り雑誌も、昨今の釣り場状況に鑑み、このような配慮を行うことはできるはずだ。
初心者の読者向けに、釣り場環境保全のための啓蒙活動を徹底するのも一案である。
少なくとも、漁港や自然海岸を、あたかも整備されたファミリー向け釣り公園のように安易に紹介することについては、考え直す余地があるのではないだろうか。
個人のSNSも然り、である。

釣具店の情報発信については「商売だから仕方がない」と諦める声も聞くが、目先の商売の為だけにみだりに情報を発信し、その結果として招かれざる「無法者」を呼び寄せ、釣り場を潰してしまったのでは、釣具店としての「見識」を問われる。
そんなことになれば、結局は自分自身の首を絞めることになる。
賢明な経営者なら、スタッフにそのような営業はさせないはずだ。


勝浦漁港については、最終的にどうなるか現時点では不明である。
残念ながら手遅れかもしれない。
しかし、まだ釣りが許容されている漁港はたくさんある。
それらの漁港で、これ以上釣りが規制されないよう何をすることができるのか、関係各方面協力して考えていきたいものである。

繰り返しになるが、くれぐれも、一部の釣り人のマナーの問題と矮小化して片づけてはならない。
そうしないと、またどこかで同じことが起きる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(注)
漁港漁場整備法に定める漁港の種類は以下の通りである。
 第一種漁港 その利用範囲が地元の漁業を主とするもの
 第二種漁港 その利用範囲が第一種漁港よりも広く、第三種漁港に属しないもの
 第三種漁港 その利用範囲が全国的なもの
 第四種漁港 離島その他辺地にあつて漁場の開発又は漁船の避難上特に必要なもの
第一種漁港は市町村が、第二種以上の漁港は原則として県が管理する。

<参考資料>
漁港漁場整備法
千葉県漁港管理条例
勝浦市漁港管理条例
千葉県の漁港一覧
港湾施設における釣り問題研究会報告書(新潟県)
漁港で取り組む水産物の衛生管理(水産庁)



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